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水晶の勇気(仮)  作者: ゆずさくら


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ドラゴン石の意志

 俺たちは必死にドラゴンの背中に掴まっている。

 眼下の城は、燃えている。

 女王の顔は、ドラゴンに乗るときの仮面をつけていてわからないが、何度も旋回して城が燃え崩れていく様子を見ていることから、城に対しての思い入れがあるのだと思った。

 ドラゴンはそのままリムの街の端にある城に向かった。

 ブレスを吐きながら、降下すると静かに着地した。

 女王が指示するままに、ドラゴンをおりると、そのまま飛び去っていった。

 俺たち三人は城の一室に通された。

 部屋の中が、俺たちだけになった時、女王はまっすぐアオイの前に来て、彼女の胸を(ゆび)さした。

「アオイさん。その『石』を譲ってください」

 アオイは胸を隠すように両手で押さえた。

「渡しません」

「今回のように狙われ続けることになりますよ」

「構いません」

 アオイがそう思うなら、それでいい。

 俺はそう考えると、立っていられなくなり、部屋の壁に背中をつけ座り込んだ。


「アラタが寝てしまった」

 ソウタがそう言うと、女王はアオイに言った。

「彼にも迷惑をかけることになる」

「アラタは私をあなたに引き合わせるためにいたのよ。ここであなたと会った後、私とアラタは無関係に戻るわ」

 ソウタが口を挟んでくる。

「ペンダントを持っていても、もっていなくても、無関係に戻らないと思うけど」

「ソウタさんはどうしてそう思うんですか?」

 ソウタはCode探査して、アオイとアラタの関係を知っていた。だが、ここでバラすわけにはいかなかった。

「そういう奴だから、としか言いようがないけど」

 アオイは言う。

「女王に聞きたいことがあるの。あのドラゴンを呼び寄せたのは、私のこのペンダントなの?」

「そうね。あなたを救うため、昨日、旧市街の近くでブレスを吐いたり、私のところに来てあの城のところまで飛んだのは、ドラゴンの意志だった」

「と言うことはこの(ペンダント)は『ドラゴン石』とでも言うようなものね」

 女王は頷いた。

「だから、さまざまな人に狙われるのよ。ドラゴンを統べる者は世界を支配出来ると考える連中が大勢いるの」

 アオイは胸のペンダントを服の上から確認しながら、言う。

女王(あなた)が転生先をコントロール出来なかったせいで、私はこの世界に転生してから、ひどいトラブルだらけだった。それを全て救ってくれたのが、この『ドラゴン石』だったのよ。渡せと言われたからって簡単に渡せない。特にあなたには」

「……そんな簡単な問題じゃないのよ」

 女王はアオイのCodeを探査し始めた。

 すると、それを遮ってくるものがあった。

 それは彼女のペンダントだった。

『女王。私は、もうしばらくこの者たちといたい』

 女王は、声を出して答える。

「なぜ……」

 アオイは首を傾げる。

『理由は分からない。私の意志を尊重してほしい』

「この女性(ひと)を危険な目に合わせることになりますよ」

『さっきアオイが言った通り、ずっと私が守ってきた。このまま、彼女を守り続けたい』

 女王は黙り込んでしまった。

 アオイが言う。

「このペンダントと話しをしたのですね」

「ええ。異例ですが、もうしばらくドラゴン石をあなたに預けます」

「『預ける』と言う表現は、気に食わないですね」

 女王は言い直す気がないようだった。

「ソウタとアラタの疲れが取れたら、二人と一緒に帰ってください」

 部屋を出ていこうとする女王は、立ち止まって振り返った。

「アラタには、女王が『アオイを守るよう』に命じていた、と伝えてください」

「……別に私は、アラタがいなくても」

「私の『(めい)』を伝えるまでは一緒にいてください。お願いします」

 アオイはCodeに触れられた訳でもないのに、女王の頼みを断れない力が働いているように感じた。

「……」

 アオイが頷くのを見て、女王は部屋を去って行った。

 女王が出ていくと、代わりに城で働く人たちがベッドを三つ運び込んできた。

 アラタとソウタがそれぞれそこで寝ると、アオイもベッドに寝転がった。

「一体、何してんだろ、私……」

 天井を見ていると、これまでのことが思い返された。

 助けてくれたとき、いつもアラタがいた。

 アオイは少し体を起こして、寝ているアラタの顔を見た。

 出会った頃より逞しくなった気がする。

 染めていた髪も伸びて、だいぶ黒くなってきた。

「この世界で髪を染めれるところあったかしら?」

 そんな心配する必要ないわ。

 アオイは再びベッドに仰向けに寝て、天井を見つめた。

 このまま染められずに、アラタの髪が全部黒くなったことを想像してみた。

 やっぱり、私、この()の事、知っている。

 名前はアラタ。

 けど、名前で呼び合ったりする仲ではなかった。

 苗字さえ浮かんでくれば……

「そうだ! 柏木(かしわぎ)くん!」

 思い出した。

 本人は何度も否定してたけど、転生前から知り合いだったんだ。

 アオイはベッドの上で、ゆっくり体を起こした。




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