三人の勇気
「二人ともしっかりしてよ」
俺とソウタは、アオイを見た。
アオイの服の中、胸の辺りで光っている石。
確か、あれは……
「ペンダントがこの城の火災を止めてくれないかな」
『無茶言うな』
俺とソウタは顔を見合わせた。
「じゃあ、空を飛ぶ方法を……」
二人はアオイの胸を見つめる。
アオイは光る石のせいで何か透けているかと勘違いしたかのように、胸を隠した。
「やめてよ」
俺は逆ギレ気味に言った。
「じゃあ何が出来るんだ!」
「アラタ、それ、私に言ってる!?」
俺は手を振ると同時に首を横に振った。
『大丈夫だ。今助けがくる』
「えっ?」
ここは旧市街からインターセンに向かう途中。
大きな道から外れて山を登った場所だ。
こんなところに助けが来るとは、とても信じられない。
「アラタ!」
それはソウタのダミ声ではなく、アオイとも違う女性の声だ。
「アラタ!」
外だ。
俺は窓に駆け寄った。
「女王!?」
雲の中で光る雷から聞こえる、遠い雷鳴のような音がする。
ソウタとアオイも遅れて窓際にやってくる。
「女王、というか、ドラゴンじゃない!!」
この音は、ドラゴンが上昇するときに発するものだ。
女王から簡単に聞いたことを思い出した。
ドラゴンはスイカ豆と、ある触媒となる石を体内に取り込み、高効率で軽い気体を大量に生成し、蓄えることができる。
その気体により大気中で浮遊することができるのだ。
地上に降りるときは、そのガスを吐き出す。
ガスは大気に触れると、簡単に酸化して炎をあげる。
「これが助け……」
俺は突然、昨日の夜、アオイを救った炎の壁のことを思い出した。
そうだ、空から聞こえたのはこの音だ。
地表に吐くためのガスを生成する音だったのだ。
『俺はドラゴンに言葉を送り、対話するための石だ』
「まさか……」
「ねぇ、なんて言ったの?」
石から聞いた話を、ソウタがアオイに説明している。
「ドラゴンが急に私のところにきたの。導かれるままに乗ると、あなたたちがこの燃える城の中にいるのが見えた」
「助けてください!」
と俺は言った。
女王はドラゴンを下に降下させる。
「城から炎が上がっていて、ドラゴンをこれ以上近づけることができないわ。勢いをつけて窓から飛び出してきて。ドラゴンの翼で受け止めるから」
ドラゴンの翼は、コウモリのような産毛の生えたものだ。
どれくらい勢いをつけて飛べば、ドラゴンに届くのだろうか。
「迷っている時間はないわ!」
俺はソウタとアオイの顔を順番に見た。
「やるしかない」
ソウタは覚悟したように、そう言った。
アオイは不安げな顔をして言う。
「もっと上にきてもらえないの?」
俺は説明する。
「上にこられると、俺たちの脚力ではドラゴンのところまで飛べないだろう」
下に落ちつつ、城から離れていくための時間が必要なのだ。
「誰から飛ぶの!?」
「……」
俺たちは顔を見合わせるだけで何も決められなかった。
「早く!」
女王からは城の火災の様子が見えるのだろう。
タイムリミットが迫っているのだ。
「俺がいく。俺が飛べれば、アオイも来てくれ」
「うん」
「私は最後に飛ぶ」
ダミ声がそう言った。
「女王、今飛びます!」
俺は恐怖心を抑え込みながら、窓に足をかけた。
それなりの勢いをつけて窓を蹴らないと、ドラゴンまで届かない。
届かなければ、俺の体はさらに川まで落ちて…… 死ぬ。
窓から手を離し、曲げた足を思い切り蹴り伸ばした。
落ちていく体。
ドラゴンの翼に近づいていく。
その時城から炎が上がり、反射的にドラゴンは翼を縮める。
終わった……
俺は目を閉じてしまった。
せっかく転生したのに!
せめて、アオイに自分が『同級生の』アラタだと伝えてから死にたかった。
なぜ、言わなかったんだろう……
アオイに言うチャンスはあった。
そんな事ばかり思い出す。
えっ!?
顔面に、柔らかい皮があたる。
「アラタ、早くそこから這い上がって!」
ドラゴンが再び翼を広げ、俺は翼の上に引っかかったのだ。
這うように翼の上を移動すると、ドラゴンの胴体へのぼった。
女王が言う。
「次!」
アオイは仰向けになって、ソウタに手を掴んでもらった。
足を曲げ、城の外の壁につけていた。
「ソウタ!」
アオイの声に、ソウタが頷くと手を離した。
その瞬間、アオイは勢いよく足を蹴り、体を伸ばす。
俺は見ていられなかった。
翼から音がして、アオイが無事だったことを知る。
「アオイ!」
翼をはって近づいてくるアオイ。
俺は手をのばして、彼女をドラゴンの背中に引き上げた。
「最後!」
女王の声が聞こえると、窓からソウタが落ちてきた。
ソウタは足を抱えて、空中で何度か前転した。
翼を這ってくるソウタに手を伸ばす。
「パンツが見えるともって期待したんでしょ?」
いや、お前のパンツは見たくないんだが。
と俺は思うだけにとどめた。
女王の声が響く。
「ここから離れるわよ! しっかり掴まって!」




