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水晶の勇気(仮)  作者: ゆずさくら


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出会い

 アオイは首にかけたペンダントが、彼女の体のCodeを書き換えていた。

 アラタの援護も会って、公安の追跡を振り切った彼女は、待ち合わせの中央広場についていた。

 Code変更で無理やり体の力を引き出された彼女にも、体力的な限界が来ていた。

『まずい…… このまま寝る訳には』

 ペンダントは寝ていても不自然に思われない場所を探して、そこまで移動しようとするが、みるみるうちにアオイの体力が削られていく。

 歩くことすらフラフラしてしまい、目の前で背を向け、立っている女性を避けることすらできない。

『すまない』

 そう言うと、アオイはその女性にしがみついたまま、意識を失った。

 ペンダントは動かない(アオイ)を守るため、周囲のCode探査を始めた。

「?」

 アオイがしがみついてしまった女性は、アオイが倒れないよう、支えながら振り返った。

「この娘、意識もないのにコード探査してくる」

 女性はそう言うと、胸元で光るペンダントに気づいた。

「あなたとは会話できそうね」

 その女性はアオイを抱えたまま、近くのカフェに移動する。

 気を失っているアオイを椅子に座らせて、店員に紅茶を頼んだ。

 黒い服、ヘッドドレス、チョーカー、ツインテール。

 そんな姿の女性が、目を閉じたアオイの横に座っている。

『お前は誰だ』

 アオイのペンダントは、横の席でアオイを支えている女性に問いかけた。

 当然、声を使ったコミュニケーションではない。

「あら、失礼ね」

 ツインテールの女性は声を出して(・・・・・)答えた。

『あなたはソウタというのですか?? あなたも転生者?』

「……あなた、アラタのこと知ってるわね」

 紅茶を運んできた店員が驚いて固まってしまった。

 寝ている客に向かって一人で話しているゴシックロリータの女。

「そこにおいてくださる?」

 店員は慌てて紅茶をテーブルに置くと、逃げるように帰っていった。

『読ませると同時にこっちのCodeも読んでくるとは』

「基本的な戦術でしょ」

 ソウタは一人で喋っているように見えることを、全く気にしていない。

「アラタがこの広場にくるのね? やっと部屋に帰れるわ」

『どういう意味だ?』

「言ったとおりの意味よ。一人で街に出たら、道に迷って部屋に帰れなくなったの」

 アオイのペンダントになっている石は考えた。

 公安に追われているとはいえ、もう広場にアラタがついていてもおかしくない。

 しかし、広場に現れた様子はない。

 もしかすると、アラタは公安に捕まったのではないか。

「それ本当の話?」

『可能性が高い』

「探しに行こう」

 石も同意する。動こうと考えるが、アオイの体が動かないのだ。

「そこは私に任せて。その代わり道を教えて」

 ソウタは自らの極度の方向音痴を、石に補ってもらおうと考えた。

 多少ぬるくなったとは言え、ほぼカップに残っている紅茶を一気に流し込む。

 紅茶の代金をテーブルに置くと、ソウタは立ち上がる。

 そして、座っているアオイの前で体を屈めると、彼女を背負った。

「さあ、どっち?」

 アオイのペンダントヘッドは、ソウタの視界に情報を映し出した。

 流石に見えている映像に、マークが浮かんでいれば、方向音痴のソウタでも間違いようがない。

 アオイを担いだツインテールは、北側の通りへ歩いていく。

 二人はしばらく歩いているが、どこにもアラタの姿は見えない。

「きみ、Code探査している?」

『……しているが、周囲にはいない』

 ソウタは彼女を背負っている力を少しCode変更で補助している。

 これ以上、力を使うと戦いの時の余力がなくなってしまうからだ。

 そして、早く見つけないと、これから力を使い続けるソウタも、やがて眠りに入ってしまう。

 ソウタは石に言う。

「今度はどっちに行く?」

『左にしよう』

「……待て、そこに大男が。怪しすぎる」

 ソウタは通りを歩いている背の高い男を見て言った。

「探査が及ばない。もしかして」

『エルフのような男?』

「そうだ。特徴的な耳が人間のような形をしているが、人間の体格とは思えない」

 石はアオイの記憶を探り出す。

『アオイの部屋にいた男の情報がこれだ』

 ソウタは石が送ってくる、アオイが見たビジョンを受け取った。

「今いたのは、まさにこいつだ」

『背負われたアオイが、俯いていて助かった』

 背の高い男がアオイを探しているなら、アラタを探すのは諦めるしかない。

「この()はまだ復活しないの?」

『……もう少しかかる』

 ソウタは建物の壁に背中を預けるようにしてアオイの体を置いた。

 そして、周囲にあったボロ布を纏わせた。

『何をする気だ。彼女を危険にするのは避けなければ』

「すぐ戻る」

 そう言うと、ソウタはエルフ風の大男を追って行ってしまった。

『待て!』

 石が呼びかけたが、もうソウタには届かなかった。


 ソウタは自分がどこにいるか、完全にわからなくなっていた。

 ただひたすら、背の高い男の背中を追っていた。

 だが、いつの間にかその背の高い男の姿も見えなくなった。

 強烈な方向音痴さに、呆れていた。

「どうしてまた迷子になるの!!」

 地団駄を踏むが、誰も彼を助けることはできなかった。


 背の高い男は、アラタを探していたが見つけることが出来なかった。

 陽が傾き始め、彼は中央広場に戻った。

 広場を一周し、眺めた後、再度戻ってくることを期待し、アオイの部屋に向かって歩いて向かった。


 岩のような体の公安は、ノアという名前だった。

 ノアは目が覚めると太っている公安を探した。

 しばらく歩いていると、二人は近くの路地で出会う。

「ライアン、グレイソンはどこだ?」

 太った公安は「わからない」と言って首を横に振った。

「とにかく戻ろう。転生者に対抗できるのはグレイソンの着けている腕輪が必要だ」

 そう言って、ライアンはノアに持ち場である城の前の広場に戻ることを提案した。

 二人は、しばらく歩いて、城前の広場に着くが、そこにグレイソンの姿はなかった。

 周囲にいた公安に訊ねるが、彼が戻ってきた様子はないと言う。

「もしかして、グレイソンはやられたのか?」

「憎たらしい転生者め!」

「とにかく、探しに行こう」

 広場を離れようとする二人に、後ろから近づいてくる影があった。

「ノア、ライアン、どこに行く?」

 声に驚いたように振り返る。

「グレイソン、どこに行ってたんだ」

「……掴んだよ」

「何を?」

 グレイソンは二人の肩に腕を乗せると、ニヤリと笑った。

「まあ、黙って聞け」




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