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水晶の勇気(仮)  作者: ゆずさくら


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広場の三人

 俺とアオイは城の前の広場を、建物の二階から観察していた。

 怪しげな三人組を見つける。

 俺がCode探査すると、そいつらが『石』を持っている女性を探していることがわかった。

 アオイにペンダントにしている意思を置いてくるか、隠すようにいうと、石が語りかけたきたのだった。

 石はさらに俺の手の甲へ、文字を送り込む。

『アオイのCodeを書き換えることは出来ない』

『人を殺したり、破壊するようなことは出来ない』

「待て待て、出来ないことより、出来ることを並べた方が早くないか?」

 俺が言うと、文字が消え、何か考えているようにグルグルとカーソルが回り始めた。

「この石はパソコンか何かか?」

 丸い模様がグルグル周り、処理中を示しているとしか思えない。

『アオイに敵対すると思われる人物の意思を書き換えることが出来る』

「そうか。それなら逃げ出せる」

 俺はふと思った。この『石』なら、Code探査できなかったあの背の高い男のCodeに触れることが出来るかもしれない。

『すまない。それは出来ない。私にもあの男のプロテクトは外せない。そもそもCode書き換え能力は、君たちの方が上だ』

「何、今の?」

「その石が、俺の意思を読んだみたいだ」

「ダサい親父(おやじ)ギャグはやめて」

 意識していった訳ではないのに、急に恥ずかしくなった。

 俺は『石』に訊きたいことがあった。

「じゃあ、周りをCode探査して、敵意があるものが近づいてきたら教えて、と言うことは頼めるの?」

『ああ、出来る。だが、お前に敵意がある人物が近寄って来ても私には何もできない。アオイに敵意があるもののみ、探査し、知らせる音が可能だ』

「あくまで主人は『アオイ』だと言うわけか」

 じゃあ、なぜ俺の手を使って会話してくるのか、という疑問は残る。

 また勝手に文字が浮かび上がる。

『アオイと手を繋いでいるから、君の手を利用させてもらっている。アオイの手に文字を書いたら、かわいそうだし』

 別に良いのだが、何か、腹が立つ。

「あの広場の三人、お前はどう見る?」

『三人と言うのがわからないが、デブと岩のような二人の男はアオイの敵だ』

 二人? 逆に俺は気になってもう一度広場の三人へ向けてCode探査を行う。

 確かに、一人だけCode探査にかからない(・・・・・)

 アオイのペンダントは光学的に奴らを確認していない。

 あくまでCode探査で見えたか、見えないかを言っているのだ。

 俺は改めて、窓から『物理的』に三人を確認する。

 三人とも、昨日アオイの部屋にいた背の高い男ではない。

 だが、背の高い男と同じようにCode探査を回避している。

 Code探査というチート能力を回避する敵は、俺たち転生者にとって脅威だ。

『私の推測だが、連中は世界を動かすプロセッサが持つセキュリティ機能を利用しているんだろう』

 それを見て、アオイが不思議そうな顔で俺を見つめる。

「私の石と何を話してるの?」

「……」

 よく考えれば、こんな人目の多いところで堂々と殺したり、捕まえたりはできないだろう。あの三人を意識せず城へ駆け込めば、存外うまく行くかもしれない。

 すると、俺の手の甲が再びムズムズした。

『奴らは公安だぞ、暴力を振るったり捕まえたりはお手のものだ』

「そうなの?」

 アオイは目を細めると、窓から三人を見つめた。

「警察は決まった服装があるけど、確か公安は」

「警察があるのに公安もあるの?」

「そうみたいね」

 昨日の背の高い男と関係があるのだろうか。もし昨日の男が『公安』ならそれなりの言い訳を言って捕まえに来たはずだ。

 無関係だとすると、公安と背の高い男が共通して求めるものをアオイが持っていることになる。

「昨日の男も、公安の三人と同じで、(それ)が欲しいんじゃないのか?」

 俺は彼女の胸を見てそう言った。

『いや、私を奪っても何にもならない』

「確かにな。持ち主を守るためにCode書き換えが出来る程度なら、それほど欲しいとは思わないが」

『そう言われると腹が立つな』

 アオイは胸を抑えて言う。

「これは渡さないわ」

 Code書き換えできないこの世界の民なら、Code探査や書き換えが出来るようになるのは、すごく強力なことに思えるのかもしれない。

『おい、さっきの公安が近づいて来ているぞ』

「まずい、ここから見ていたことに気づかれたか」

 俺は必死に連中を探す。

 一人はCode探査に引っかからない。

 二人はそれぞれ正面と、建物の裏側へ周り込んでいるようだ。

 太った男が、正面。岩のような体格の男は走って、裏へ回っている。

 とすると、もう一人の中肉中背の男がCode探査を避けられる奴だ。

 出口を押さえていることを強調しておいて、Codeに引っかからないそいつが、こっそりと近づいて来るに違いない。

 俺は窓から顔を出し、周りの建物と建物の間隔を確認した。

「屋根に登ろう」

「手を繋いだまま?」

「外すよ、言われなくても」

 俺はアオイの手首を掴んでいる手のCodeを書き戻した。

 階段を使って三階に上がると、俺は窓から体を出して、屋根に掴まり体を引き上げる。

「ほら、手を出して」

「無理無理! 窓から体を出すのだって無理」

 俺はアオイのCode探査する。

「なんでこんな時に入ってこようとするよ、やめて!」

 俺は考え方を変えた。

 すると、屋根の端に彼女の手が掛かった。

 そして、自らの力で屋根上に這い上がってくる。

『さあ、これからどうする?』

 アオイの声だが、これはアオイが喋っているのではない。

「簡単さ。屋根を飛び移って逃げる」

『……無茶をさせるなよ』

「今まで通り、お前が守ってやれ」

 急にアオイの表情が、困惑したものに変わった。

「ねぇ、私、どうなってるの?」

「行くぞ」

 再び、アオイから表情が消える。

 石の支配に切り替わったのだ。

 俺はフラットな屋根を走り、端に来ると飛んだ。

 飛べなければ、石が敷かれた道に落下する。

 骨折で済むか、死ぬのかは落下した時の運だろう。

 だが、俺は元の世界で経験(クリア)したことのない距離を、いきなり本番で飛び切った。

 俺は自らのCodeを変更して、建物を飛んで渡れる身体能力を得たのだ。

 後を追うように、アオイが加速し始めると建物の端を蹴った。

 まるで空から降って来たように、高い位置から俺の横に着地する。

「すごい」

『油断するな。奴らに気付かれてる』

 俺は元いた建物を振り返る。

 Code探査が効かない男が、その屋根に立ち、俺たちを睨んでいた。




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