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相方は座敷ワラシ!  作者: 沙φ亜竜
第2章 ノリと笑いが必要です
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-1-

「あの……なんでしょうか……?」


 今あたしたちは、咲先生に呼ばれて、このレクリエーションルームに来ていた。


 ここ紋白中学校では、金曜日の六時間目に学活の時間が用意されている。

 学活というのは学級会活動の略で、いわゆるロングホームルームのことだけど、その時間は常識の範囲内であればなにをしてもいいことになっている。

 学校の授業時間ではあるから、あまりに突拍子もないことは却下されるだろうけど、生徒が自主的に案を出して内容を決められる時間なのだ。


 そんな学活の時間によく利用されるのが、このレクリエーションルームという名の雑用部屋だった。


 他にも、春の部屋とかみどりの部屋とか、よくわからない名前がついた教室もある。

 まだそれほど歴史の深くないこの学校、設立時に様々な特徴づけをしようとした結果なのだとか。

 いまいち、成功しているのか判断に苦しむところだけど。


 と、そんなことはどうだっていいか。


 ともかく今、レクリエーションルームに呼び出されたあたしと美野ちゃん、委員長の三人は椅子を横に並べて座り、教壇に立つ咲先生があたしたちを見下ろしているという状態だった。

 先生の隣にはどういうわけか、小明麻さんが笑顔を浮かべながら立っている。その場所にいるってことは、小明麻さんは呼び出された側ではないのだろう。


 小明麻さんを抜きにして考えれば、呼び出されたのは見たところ三人しかいないはずなのに、あたしの隣にはもうひとつ椅子が置かれていた。

 あたしたちの他にもまだ誰か来るのだろうか?


 担任の先生からの呼び出しではあるけど、もし怒られるとかなら職員室に呼ばれるだろうし、小明麻さんが先生の隣にいるのも理解できない。

 だいたい、呼び出されるような悪さをした覚えなんてないのだから、そういうことではないはずだ。


 じゃあ、いったいどんな理由で呼ばれたのか。

 あたしの疑問に、先生は素直に答えてくれた。


「あなたたち、部活に入ってないわよね? というわけで……うちの部に入りなさい」


 ……部活の勧誘!? というか命令調だし、若干強制力を行使してない!?


 驚いて目を丸くするあたしたち三人に向けて、小明麻さんが解説の言葉を添える。


「咲先生は、わたくしの部の顧問なんですのよ。ホームルームでも話していたとおり、学生時代の部活動は大切なものですから、こうして勧誘させていただいているという所存です」

「……でも、どうしてわたしたちなの? 部活に入ってない生徒って、クラスの三分の一くらいいるんじゃない?」

「うん、そうだよね。先生の作ってるクラスメイト極秘資料って書かれた手帳にも、部活未加入生徒数は十二人って書いてあった」


 ……ちょっと委員長、なにそれ? 極秘資料って、先生はなにを書いてるの? というか、それを見たってことを言っちゃっていいの?

 いろいろツッコミを入れたいところではあったけど、それよりも早く小明麻さんが答えを返した。


「慎重な素行調査の末、選ばせていただいたのです」


 え……? 素行調査って、なに!? あたしたち、尾行とかされてたってこと!?

 ちょっと背筋が凍るような思いを抱いているあたしに、小明麻さんはさらに混乱を招く言葉を続ける。


「あなたたち四人をね」


 ……四人?


 今ここで咲先生と小明麻さんの前に座らされているのは、あたし、美野ちゃん、委員長の三人だけのはずなのに……。

 と、小明麻さんが視線をずらす。

 彼女は、あたしの横に置かれた誰も座っていない椅子を、睨みつけるような目で凝視した。


「ひうっ!?」


 すーっと、あたしの隣の椅子に人影が浮かび上がる。それが誰なのか、あたしにはその悲鳴から察しがついた。

 そう、それは座敷童子の笑ちゃんだった。


「あうあうあう……?」

「あなたも含めて四名、このたびの我が部への入部を、大いに歓迎します」


 困惑しきった笑ちゃんを含め、呆然としているあたしたちに向けて、咲先生はビシッとそう言い放つ。

 そして先生と小明麻さんは声を揃えてこうつけ加えた。


『妖怪部へ、ようこそ!』



 ☆☆☆☆☆



 妖怪部――。


 その活動内容は謎に満ちているという、誰も近寄ろうとしない部活。

 そんな噂話はよく耳にしていた。


 おそらくは妖怪好きな人が集まって、妖怪について調べたりする部なのだろう、くらいにしか考えていなかった。

 そもそも、まったく興味がないわけだから、こんなふうに強制的に入部させられても困る。

 確かに今は、笑ちゃんという座敷童子にまとわりつかれている状態ではあるけど、あたしはごくごく真面目な目立たないひとりの中学生でしかないのだ。

 ……たぶん。


 さっきは思わず呆然として、とっさに言い返したりもできなかったけど、あたしたちの意見も聞かずに強制入部っていうのはあまりにもひどいだろう。

 咲先生にそう反論すると、もちろん強制はしないわ、との答えが返ってきた。

 だけど……。


「いずれにせよ、入部することになると思いますけれど。運命とはそういうものですわ」


 先生の隣に立つ小明麻さんから、にたぁ~という効果音がつきそうな笑みを向けられながらこんなことを言われると、断固拒否、なんて判断をするのが怖くなってしまう。


「みのた、どうしよ~? 痛っ!」

「またあんたは! でも、そうね……。ま、いいんじゃない? わたしは結構、そういうの好きだしね」


 ついつい、みのた呼ばわりして脳天チョップを食らったものの、意見はしっかりと返してもらえた。

 そうだった。美野ちゃんは昔から、妖怪、物の怪、お化けに超常現象、果てはUFOやら黒魔術まで、オカルトチックなものを好む傾向があったんだっけ。


「委員長はどうなの? 夕方のアニメとか、見られなくなっちゃうと思うけど……」


 あたしは、拒否仲間を見つけたくて必死だったのかもしれない。委員長にそう問いかけたのだけど。


「それは大丈夫。録画だってしてるし、もし見逃してもネット上にはいろいろと……」

「わかった、もういいわ」


 彼女の意思はよくわかったし、ちょっと危険な香りもしたので、あたしはさくっと会話を閉ざす。


「笑ちゃんは、さすがに嫌だよね……?」


 一縷の望みをかけて笑ちゃんに問いかけるも、


「ボクは……、ひうっ! ……あの、ごめんなさいです、入部しておいたほうがいいかも……。消されたくないし……」


 小明麻さんの鋭い視線で蛇に睨まれたカエル状態となっている彼女が、拒否できるはずもなかった。


「というわけで、満場一致で決定ですわね!」


 あたしの意見は無視ですか。

 なんて反論ができるはずもなく。

 そのまま入部する方向で話は進んでいた。


「それでは、新たな部員四人を加えまして、顧問のわたしを含めて総勢六名、これから楽しくやっていきましょう~!」


 咲先生が高らかに宣言する。


 ……って。

 顧問一名、新入部員四名で、総勢六名ってことは……。


「今まで部員ひとりだったんかい!」


 思わずツッコミの声を上げていた。

 そんなあたしの言葉を受けた小明麻さん本人は、


「いいツッコミですわね~、かのりん。さすが、わたくしが見込んだだけのことはありますわ」


 と言って、満足そうな笑顔を浮かべるだけだった。


「あ……あたしは嫌だからね! 入部なんてしません! さようならっ!」


 あたしは乱暴に席を立つと、レクリエーションルームを飛び出していた。


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