第9話 ターミナル解放
「おりゃ!」
襲い来るツタを飛燕で切り飛ばしながら、俺はどう攻めたものか考える。
「おじさま、埒が明きません。ここはやっぱり、例の超破壊力の技でドーンやってしまえばいいのではありませんか」
「さっきも言った通り、石碑ごとドーンとやってしまうことになるぞ」
「おじさま、ちまちま削っていきましょう」
ゼータは俺の力を知ってから、それで楽をしたがるところがあるな。
強い力で楽をすると、絶対そこで何かを取りこぼしているのだ。
遠回しに感じても、頭を使って対処していく方がいい。
その結果、強い力でドーンとやるのが最適解ならそうすればいい。
「ということで、飛燕だ。そいっ!」
大きく広がりながら、こちらに覆いかぶさってくるクリーピングヴァイン。
その一部を切り飛ばした。
うーむ、こいつの場合、ツタの群体だ。
それが口のついた花弁に当たる部分を守っており、飛燕では届かない。
だが、放鷹を使うと花弁は吹っ飛ばせても、その真下にある石碑もダメになってしまう可能性がある。
石碑の強度はよく分からないが、俺はあれを一撃で破壊できる気がなんとなくするのだ。
「ふーむむむむ、ここは私も頭を使います」
「頼むぞ。俺はあのツタが全部なくなるまで飛燕をし続ける意外思いつかないんだ。他の技は射程が視界全部で城壁を貫通するが俺の拳程度の大きさの攻撃範囲しかなかったり、縦一文字にここから1/4ティタンの距離を切断する技とかそういうのばかりなんだ」
「なんでそんな物騒でピーキーな技ばかりなんですか?」
「最初に技を考え始めていた時、派手な方がカッコいいだろうと思ってな……。若気の至りなんだ」
「若いのに超威力の技を? おじさま、それは本当に剣技ですか?」
「純粋な技術だぞ!」
そこでゼータ、何かを思いついたようだ。
「違う技を立て続けに出すことは?」
「余裕だが?」
「おじさまがちょっとドヤった! まず、その遠くまで届く貫通する技を使ってですね。あの花弁の辺りを狙い、連続で放ってツタを穴だらけにしたところに、飛燕を連発するんです」
「おっ、なかなかの力技だが……。確かに、穴を開けてボロボロにすれば、飛燕の効きも上がるというもの! やるか! 隼!!」
「あらストレートな名前……ってうわーっ!」
轟音が響いた。
既に、ツタが集まる一箇所に穴が空いている。
一瞬だが、穴からは遠くの風景が見えたな。
隼は一撃を放つと、そのちょっと後から音が出る。
不思議な技なのだ。
これをバンバンと放つと、とにかくうるさい。
「あひゃー! うるさいですおじさま~!!」
「えっ!? なんだって!?」
聞こえない、聞こえない!
この技をあまり使わない理由は、とにかくうるさいからなのだ!
だが、ツタを貫いた一撃が、いい感じで花弁に何発も突き刺さっているようだぞ。
『フシャアアアアアアアッ!?』
クリーピングヴァインの、花弁を守るツタがボロボロと崩れ落ちていく。
今だ。
「ここから……飛燕!」
飛ぶ斬撃の連続攻撃だ。
不可視の刃が次々に飛来し、ツタを切り落とした。
明らかに脆くなっている。
ゼータの作戦は大当たりだな。
やがて、花弁を守るツタは完全になくなり……。
俺はダメ押しをぶちかました。
「飛燕!」
『ウグワーッ!!』
花弁が斜めに叩き切られ、その奥にあった茎も切断された。
クリーピングヴァインは、血のような赤い液を撒き散らしながら、バタバタと暴れた。
「まだ死なないか、しぶといな」
「植物ですから、地上に出ているものは体の一部なんです。本体は根じゃないでしょうか。ですけど、これだけ相手のツタを排除したらこちらのものです! おじさま!」
ゼータが指さすのは、剥き出しになった石碑。
クリーピングヴァインの体を削り取ったことで、あらわになったのだ。
俺はそこを目掛けて走る。
ゼータは例の呪文を口にした。
「ミーユ・カム・ユーダビン! 石碑よ、目覚めよ!」
言葉が届くと同時に、石碑強く輝いた。
そして地面がグラグラと揺れ始める。
「おじさま、足場が再構成されます! 気をつけて! 飲み込まれますよ!」
「おう、アグラマントも振動してる。これはかなり危ないな」
クリーピングヴァインを無視していた魔剣が注意勧告するレベルとはな。
突然足元が引っ込んだと思ったら、眼の前の地面が土をぶち抜き、石でできたブロックを盛り上がらせる。
俺は高いところへと飛び上がった。
さらに盛り上がってくるところがある。
飛び移る!
次も高いところへ、高いところへ!
頭上から石が降ってくる。
これは破壊してもいいのだが、もしかするとこの地域が再生するために重要なものかも知れない。
別の地面へと飛び移って回避することにした。
「おじさま、お疲れ様でした! そろそろ大丈夫ですよ! ほら!」
ゼータが俺の頭までよじ登って、身を乗り出してきた。
びしっと指さすのは、かなり遠くなった地面だ。
……泥がない!?
それどころか、鬱蒼と茂っていた森の姿がなくなっている。
幾つもの石が組み合わさり、俺が立っている場所はこの領域の頂点とも言える場所になっていた。
振り返ると、さっきの石碑がある。
そしてこの場所……塔のようなものの回りは、平坦な地面だ。
均された土の地面に、通路にあたるであろう場所には石畳が敷かれている。
「なんだ、ここは……。完全に見た目が変わってしまったぞ……!!」
「ターミナルです。この島のあらゆる場所へと向かうための窓口、ターミナル。おじさま、これから島の開拓が始まるんですよ!」
ゼータのテンションが高い。
なるほど、これは確かに面白くなってきたかも知れない。
俺達人間の手で、この島を住みようように作り変えることができる。
そうすれば畑を増やしたり、あるいは畜産なんかも行えるではないか。
村の子どもたちをもっと太らせてやりたいものだ。
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