第82話 イノシシを調理して食べる
大きなイノシシを狩って、持って帰るのだ。
大変大きいのだが、そこは木の枝をまとめて、運ぶ用の敷物を作り上げるプラシア。
大変器用だ。
これを、ファースと俺で引っ張るわけだ。
「いやあ……。狩りに慣れた人間がいると、本当に便利だなあ」
「こんなに大きいのは、私たち二人だと無理ですけど……っていうか領主様、すごいパワーですね?」
「ああ、力があるからな」
「いやー、この大きさのお肉ですか! 気になりますね! どんな味になりますかねー」
ゼータがウキウキしながら横を歩いているのだった。
さて、神殿まで丸ごと運ぶのは大変ということで、港湾施設の前に置いてから神官たちを呼びに行ったのだった。
「施設の前で解体します!! 行くぞおらー!」
ヒャクシの宣言とともに、ワーッと取り掛かる大地母神の神官たち。
全員が、肉の解体をやる気満々なのだ!
座して待つだけの女はいない。
これが大地母神の神官!
俺はすっかり感心してしまった。
「おじさまはこういう、自分の手を汚すことを厭わないタイプの人は好きそうですね?」
「分かる? 彼女たちを仲間にして良かったなあ。あ、俺手伝うことある? 俺はお客さんだから見ててくれ? はいはい」
「狩りの時点でちょっとおじさまが手伝いましたけど、彼女たちプロ意識高いですよねー」
「うむ。さすがだな、大地母神の神官たち。肉が焼ける様を見に行くとしよう」
俺とゼータで調理風景を眺めることにした。
ほうほう、分かりやすく肉は焼く、あるいは煮る……だが大部分は適当な部屋に設置して、何か魔法を使っている……。
「大地母神よ! 御身の奇跡をここに! フリーズ!!」
「あっ、凍った!!」
豚肉が一瞬で凍ってしまった!
カチコチになった豚肉なのだが、なるほど、これで保存できるようにするわけだ。
魔法の氷のお陰で、生肉が腐らない……。
「……なんで大地母神で氷の魔法が?」
「我らが神は、生活に便利な魔法……じゃない奇跡を一通りカバーしているんですよ」
「思った以上にすごい神様だったな……」
だが、これで大量の肉が取れても保存しておける。
革命なのではないか……?
こんな便利な魔法を持っているのに、どうして彼女たちは迫害されるのか。
そう、他人の旦那や恋人を寝取るからだね。
「絶対にもったいないよなあ……」
「おじさま、おじさま! 焼肉の味見させてくれるそうです!」
「なにぃーっ」
ゼータと二人で、焼きイノシシを一口食べさせてもらった。
あ、これは美味い。
弾力の強い肉だが、噛めば噛むほど味が染み出してくる。
いい肉だ。
なお、こういう肉はランチャーは食べないので、港湾施設全体を使って遊んでいるようだ。
天然の運動施設みたいになってるもんな。
「これは料理に期待ができるな……。よし、子どもたちも呼んでこよう」
「そうしましょう!」
「ウキャキャ!」
ランチャーも行くか!
二人と一匹で転送装置に乗り、キウイの世話をしていた子どもたちを呼び集めた。
「凄く美味い肉料理が食べられる……」
「えーっ!」
「行く!!」
みんな目を輝かせてついてくるのだ。
何せ、俺が先導しているから親も止められない。
こうして、大地母神神殿の一大イノシシ肉祭りとなった食事会。
大量の豚の焼肉と豚の煮込みは、俺とゼータと子どもたちの胃袋へと消えていったのであった。
いやあ、満足満足。
それに、今の世代の子どもたちが肉をしっかり食べることができれば、体格もかなりのものになるだろう。
お腹いっぱいになった子どもたちが、ターミナルへと帰っていく。
あれは絶対、夕食が食べられないな。
そして子どもたちの満足げな顔。
肉の可能性を見てしまった。
絶対にこの土地で肉を食べる文化を定着させねばならない。
そのために何をしたらいいのか……?
そう、民衆の狩人化だね。
ファースとプラシアを連れて村へ行き、
「これから、狩りを始めようと思っている。ついては、狩りを行うチームを結成し、訓練をしていく! 新たな仕事につき、村に肉をもたらさんとする者は参加してくれ!」
俺は声を張り上げる。
「まず、肉とは何か! ちょっと配布するので、男衆はこっちに来なさい」
俺の言葉を受けて、男たちがやって来た。
彼らに、猪肉の焼いたものを薄切りにし、ちょっとずつ食べてもらうのである。
「不思議な食感……」
「美味いかもしれない」
「魚よりもギュッと詰まってる」
そうだ、それが肉だぞ。
俺は肉を食べることで、栄養を集中的に摂取できること、そして子どもたちの健康度合いが増しやすいことなどを説明した。
新住民はともかく、元の住民たちは肉を食べずに世代を重ねた人々だ。
まずは、肉の有用性を理解してもらう必要がある。
だが、まだみんなピンと来ていない様子だった。
「つまり、俺は肉を食べて育った。そうすると強くなったのだ」
おーっとどよめく男衆なのだった。
これはちょっと汚い手だったか……!?
だが、この領地で、民衆による狩りのチームというものを実現するためには仕方がない。
「領主様みたいに強くなるのは無理としても、少しでも子どもたちを元気にできるなら……」
「やってみる価値ありますぜ!」
「俺もやってみる!」
おっ、おっ!
みんなやる気になってきたじゃないの!
俺が目配せすると、ファースとプラシアが頷いた。
「私たちが狩りを教えます!」
「皆さんで練習して、小さい獲物から捕まえていきましょう!」
こうしてスタートする、ルナス領の狩りなのであった。
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