第81話 肉の専門家に頼もう
「キウイは色々加工が必要そうだ。やはりここは……肉の専門家に頼むしかあるまい」
「肉の専門家ですか!! ……誰ですか?」
ゼータは不思議そうだが、既に会っているだろう。
何の情報もなくこの島を行脚し、モグラを食肉に変え、香味野菜という名のハーブすら発見した女たちだ!!
「ということで来たぞ。何人かついてきてくれ。これから……肉を狩りに行く!!」
「おおー!」
「待ってました!」
「やっぱり夜の生活には肉ですよね!」
ぬっ!
聞き逃がせないことを言ったやつがいるな……?
「大人の男が訪ねてきて、それで一夜を深く接触して過ごしてしまったりはしていまいな?」
大地母神の神官たちが静かになった。
やったな!?
まあいい。
「多分、新住民の男たちだろ? あいつら、酒の時も盗み飲みに来たからな……。なんと誘惑に弱い男たちだろう」
「領主様も誘惑に負けてしまっていいのに」
「ヒャクシはさりげなく俺の腕を取ろうとするんじゃない。魔法で誘惑すると自動反撃で真っ二つになるぞ」
「ひー」
女司祭がスススっと離れていった。
ということで、狩りの経験がある女神官二名が同行することになる。
「ファースです」
「プラシアです」
体の大きな女と、細身で目つきの鋭い女だ。
「ファースは信仰に目覚める前は、猟師をしていたんですよ。私たちの中で一番、獲物を取るのが上手いです。プラシアは元盗賊で、とても目端が利きます。獲物のちょっとした痕跡も見逃しませんよ」
「おお、プロフェッショナルじゃないか」
そう言えばこの間の料理の時、二人は手伝いに徹していたな。
得意ジャンルが違うというわけか。
「頼もしいですねー。私はお肉を所望します!」
そんな二人だが、ゼータが元気にお肉食べたい宣言をするとにっこりした。
「子どもにはたんとお肉を食べさせないとね!」
「お姉さんたちが美味しいお肉をとってあげるからね」
「俺の中で二人への好感度がアップしたぞ」
こうして、四人で森に繰り出すのだ。
二人に先達を任せる。
俺が手を出しては、人間に再現不可能な狩りになってしまうからな。
なお、ゼータは二人の後ろにピッタリくっついて、特等席で狩りを体験させてもらっている。
いいなあ。
俺が近すぎると殺気で怪物どもが反応してしまうからな。
おっと、プラシアが何かに気付いたようだ。
そっとそっと痕跡を辿っていく。
ファースが背負ってきた得物を構えた。
巨大な弩弓だ。
普通の男であれば、全力を振り絞ってやっと矢を番えられるレベルだろう。
俺はまあくるくるいけるが。
何かいるのかな……?
俺にはさっぱり分からん。
おっと、アドラマントが軽く震えている。
殺気を放つ何かが茂みの中にいるということだ。
プラシアは気配を殺し、全身に土をなすりつけた後、じわりじわりと近づいていった。
茂みの中からは、真っ黒な何かが突き出してくる。
鼻だ。
匂いを嗅いでいるのだな。
だが、プラシアは既に土を被っているので自分の匂いがしない。
鼻の持ち主は、嗅覚をより働かせるべく、顔を突き出してきた。
おっ、イノシシ!!
かなりの大きさだ。
肩の高さだけで、200ティタはあるだろう。
そして顔のあちこちに、甲羅のようなものを纏っている。
あんな大きいのに、守りを固める必要があるのか?
つまり、あの巨大イノシシを捕食するやつがこの島にはいるということだ。
音もなく真横に回ったプラシアが、イノシシの鼻先目掛けて何かを放り投げた。
『ブオッ!?』
驚くイノシシ。
そこからは酸味のある強い匂い。
これは、乾燥させたクアットロの実を、少しの水で練ったものか!
鋭い嗅覚に強烈な酸味を叩き込まれ、イノシシが混乱した。
『ブオオオオ!!』
プラシアが手をあげて合図した。
ファースが矢を放つ。
太い矢だ。
それが飛来し、イノシシの目玉を貫いた。
凄まじい狙いの精度だな。
「当たっちゃった」
「私のナビゲートは確かでしょう」
本人が驚いてる!
ゼータが手伝ってたのか。
俺以外をサポートしても有能な幼女だな……。
『ブオオオオオ!!』
「ファース、まずい! こいつは規格外!」
「プラシア逃げろ!」
威嚇で矢を打ち込むファース。
大イノシシは片目を射抜かれても、動きが鈍らない。
激しく暴れ、飛んでくる矢を甲羅で弾きながらこちらに向かってくる。
途中でプラシアが巻き込まれそうに……。
「俺が乱入だぞ。飛燕!」
俺の剣風が、飛び込んでくる大猪の顔面を削ぎ落とした。
接近して返す刀で、真っ向から両断しておく。
イノシシが左右に、どうっと倒れた。
「無事か? 一人でも減ったらまずいからな」
「あ、あ、ありがとうございます……」
「プラシアー! この森、とんでもないところだよ……」
ファースが相棒を迎えに来た。
そして、二人で俺にペコペコ頭を下げている。
「なに、気にしない気にしない。普通サイズのイノシシならこの二人でいけるってことなんだな? ということは、村人もチームを組めば大イノシシの子どもなら狩れる……! 参考になる狩りだった」
「二人とも勘違いしないでくださいね。おじさまが参考になるのではなく、普通の領民の人たちがやれそうという話をしているんです」
「あ、はい」
「領主様は規格外過ぎるから……」
「うん、絶対に俺を基準にするなよ? よし、イノシシを持って帰ろう! そして狩りのフォーメーションとか、その辺りを研究していきたい。ファース、プラシア。君たちは講師として村まで来て欲しい」
こうして次なる目的がまとまるのだった。
始めるぞ、狩り!
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