第80話 オスのキウイを食う
「俺は肉を食うということを思い出した」
「おーっ!」
俺が言葉を紡ぐと、ターミナルで仕事をしていた新住人たちがどよめいた。
やっぱりみんな、肉が足りないと思っていたか!!
色々厳しい環境だけど、パワーを出すにはやっぱ肉だよなあ。
肉食べたいよなあ。
「ルナス領がいよいよいい感じになってきたし、最近は大地母神教団から地味豊かな野菜スープのレシピが伝授されたことと思う」
「ぬぐぐ」
新住民女性陣は悔しげだが、元の住民たちは新しいメニューに大喜びなのだ。
何せ、香味野菜の発見により、あらゆるものを香り付けして食べられるようになったからだ。
そしてスープは胃腸が弱ったお年寄りでも栄養を摂取できる。
伊達に救貧活動を行ってきた人々ではない。
やるな、大地母神教団!
もう少し大人しくして、新住民たちが許すようになったら、彼女たちも村を闊歩し始めるに違いない。
そしてまた子どもが増える……。
「元気に子どもを増やすためには、肉だ。肉が絶対的に欲しい!」
そうだそうだと新住民が同意している。
なお、キウイを追い立ててレースさせていた子どもたちはよく分かっていない。
彼らにこの事を告げるのは残酷だろうか?
いや、いつかはやらねばならぬことだ。
そもそも、オスのキウイなんかちょっと子ども産ませたらあとはいても無駄飯ぐらいだからな……。
「おーい、ゼータ。子どもたちに大事な話がある……」
「おじさま、やる気ですね? 別に私から話してもいいんですけど」
「いや、これは大切な話なので、領主がやるべきだろう。何せ、この領地での俺の仕事は何でも屋だからな……!」
執政なんかをやるべきらしいのだが、そんな作業はこの領地にない!
結果的に、俺は新しい食材を見つけたり、新しい開拓地を広げたり、新しい移民を連れてきたり、外敵を粉砕したりする仕事をしている。
正しく何でも屋である!
「集まったな。今、大変に大事な話をするぞ。具体的には肉の話だ」
「肉!」
ハッとする子どもたちだった。
肉とはなんぞや、という話をする必要がないのは実に良かった。
大地母神教団の神殿へ忍び込んだちびっこたちは、既にそこで肉の味を知ってしまったのである!
「肉をもう食べている君たちなら話が早いだろう。肉とは、生きているものを殺してこれを食べることだ。ここまでは神官たちから聞いたな?」
頷く子どもたち。
「では、この領地にいるとある生き物を、俺が肉にしようとしていると言ったらどうする?」
ざわつく子どもたち。
そのうちの一人が「はい!」と挙手した。
「はいどうぞ!」
「それってもしかして……卵を産まないキウイですか?」
「正解!!」
俺が彼を指さした後、拍手をすると、子どもたちも「おーっ!」「やるじゃん!!」と拍手し始めた。
よし、この波に乗って説明するぞ!
「キウイを食べます!!」
おーっ!とどよめく子どもたち。
なんか盛り上がっていて、残酷だーとかショックーとかそういうのが出てこなくなったな。
勢いのまま、俺はその辺りを走っているキウイを指さした。
「卵産まないやつを連れてきてくれ!」
「はーい!」
「こっちこーい!」
「こっちこっち!」
「キキー」
おっ、やって来たやって来た。
「はい、こっちこっちー。そいっ」
俺は剣を抜いて収めた。
キウイはトコトコこっちに歩いてきてから、すっと三枚に下ろされて死んだ。
「あっ!!」
衝撃を受ける子どもたち。
「ここからが勝負だぞ! 肉は鮮度だ! みんな、血を抜いたら羽をむしるんだ! みんなでむしれー!」
「は、はーい!!」
「やるぞー!」
子どもたちがわーっと来て、三枚おろしのキウイの羽をむしる。
そしていい感じでまるはげになったキウイを、俺は石の上に乗せて窯に放り込む。
「ここで輻射熱でじっくりと焼く」
「おー」
「あんなふうになるんだ……」
「びっくりしたな!」
よし、衝撃とテンションで、生き物を殺して肉にするというショックが曖昧になったな。
「おじさま、凄まじい力技ですね……!」
「ああ。だが、彼らの中には案外、肉にするために動物を殺すということへの抵抗が薄いのかも知れないな。全然いけたぞ」
「そうですねえ。いままでの人生経験が薄すぎて、ピンと来てないんだと思います。あとからゆっくり理解するのがいいかもですね」
わいわいとおしゃべりしている子どもたち。
彼らが飽きる前に、肉は焼き上がった。
薄くスライスしておいたからな。
そして焼き上がった肉は実にいい香りを放っている。
色は小麦色。
中まで火が通っているな。
これに塩と香味野菜を乾かしたやつを振って……。
「召し上がれ!」
わーっと手のを伸ばす子どもたちなのだった。
いつの間にか、領地にいる年頃の子どもがみんな来ているではないか。
お陰で、一人一切れしか食べる量はない。
だが、パクっと食べた子どもたちは「おーっ!」と歓声をあげるのだった。
美味しかったらしい。
どれどれ……?
皮の部分をつまんでみる。
むむっ!
グニグニして歯ごたえがすごい。
そして臭みがある!
美味しくはないな。
皮はダメだな。
「うへえ、ゴムです」
ゼータも顔をしかめて舌を出した。
キウイの肉は果たしてどんな味だったんだ?
皮は食べないことが決定したが……。
そこへやって来る、呑兵衛夫妻。
「チッチッチ……。分かってませんね領主さま」
「皮はね、さらに叩いて伸ばして、カリッカリに焼くんですよ」
「なにぃ」
強者オーラを感じる。
なお、俺が彼らとそんな話をしている間に、ゼータは子どもたちからキウイの味を聞き出していたのだった。
肉がグニグニしてて、噛む度に味が出てきて美味しかったらしい。
固くはあったんだな……。
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