第79話 これが大地母神料理か!!
大地母神の神殿にやって来た。
おお、倉庫の中にあったものがいい感じで神殿っぽい見た目に配置されている。
あるものを利用するのが上手いな彼女たち。
「ははあ、やるものですねえ」
「ウキャムキャ」
「あっ、領主様とゼータ様~! ……とお猿さん?」
俺とゼータは大歓迎を受けて、ランチャー相手は戸惑っているようだ。
まあ、気の良いお猿さんであることがすぐに分かり、年若そうな神官がランチャーに撫でさせてーとお願いしたりしている。
カメレオンエイプの毛は透明で柔らかだけど、撫でても大丈夫なもんなの?
「アウチ!」
刺さったらしい。
周囲の光を反射して映し出し、大猿の肉体をも隠してしまう毛だから、やはり特殊なものだったんだろう。
なお、大地母神の神官は怪我をしてもすぐに魔法で癒すことができる。
「回復魔法はどういう原理なんだい?」
「あら領主様、興味があります? なんならベッドの中で教えて……あっ、ゼータ様違うんです、太ももをつつかないで~。あのですね、出血を止めます。それから傷口を貼り合わせてくっつけてしまうんですよ。失われた血は戻ってきませんが、これ以上の出血は避けられます。ただし、腕を切り飛ばされたり、大きく肉を抉られたりするともう癒せません」
「割と限界がある力だったか」
「魔法とは言っても、やっぱり力技ですから。ただ、お産の時の出血や裂傷に対しては効果抜群ですよ」
お産の補助に使用されるのが主な用途で、怪我を癒すのは副次的な効果なんだろう。
俺とゼータで女神官から回復魔法のレクチャーを受けている間に、ヒャクシたちは料理を始めたようだった。
神殿の外にテーブルを並べて、その上で野菜や肉を切っている。
今日は肉は別で焼き、スープはランチャーのことも考えて野菜メインで作るそうだ。
気遣いができているなあ。
「いい匂いがしてきましたよ」
「俺たちが来ることを見越して、既に野菜を煮込んでいたらしいからな」
「野菜だけでこんな香りが!? 今まで村で食べてきたものはなんだったんですか?」
「あれは俺たちが取ってきた野菜を適当に煮込んだら偶然美味しいものができたやつだ。こっちは野菜の性質をしっかりと掴んだ上で、ハーブみたいな香味野菜まで完璧に使いこなし、野菜の味を十分に引き出したスープを作っているんだ」
「な、なんですってー」
大げさに驚くゼータなのだった。
ランチャーも横で真似をしている。
「かわいいー」
「姉弟みたいだろう」
女神官たちが集まってきて歓声をあげるので、俺がうんうん頷いた。
ゼータが俺の膝をぺちんと叩く。
「だーれが姉弟ですか! 私とランチャーは相棒同士なのです」
「ムキャー!」
対等だったか!
「あれ? じゃあ俺は?」
「擬似的な親子じゃありませんか?」
「な、なんだってー」
「領主様の反応がわざとらしいなー」
「どういう関係なんです~?」
こんなやり取りをしている間に、スープの味付けが終わったようだ。
運ばれてくる。
「テーブルと座席があれば良かったんですけど……郷に入れば郷に従えとも言いますし」
ヒャクシの言い回しに、ゼータの目が光る。
「この間のおじさまと言い……。この世界には外の世界からの来訪者が、色々な言葉を残していったようですね。でも、それだけで文化的には大きな痕跡は無いみたいですけど」
「どうしたんだゼータ、難しいこと言って」
「色々思い出してきてるんです。さあ、食べましょう!」
床に布を敷いて座り、食事も布の上。
王国ではテーブルと椅子を使うのが当たり前だったが、基本的にルナス領は地べたの上で食事をする。
居住区には地を這う虫もほとんどおらず、危険なものに遭うことがないためだ。
「匙まで作ってるのか。ちゃんとしてるな……」
「これは船から持ち出してきました。この形を参考に、私たちで増産していますよ」
「匙を増産!? 大地母神教団は器用過ぎる……!」
何もかも自給自足してるんじゃないのか?
さて、スープだが……端的に言って絶品だった。
多彩な野菜が生み出す、しっかりとしたコクと味わい。
香りもふくよかだ。
「美味い! 美味い! 美味すぎる! ゼロから文化を作り上げているルナス領で今食べられていいレベルのものじゃないだろう!」
「お、美味しいですねえこれぇ~!! びっくりです!!」
いつも冷静なゼータもびっくりして、語尾が強くなってしまうのだ。
冷ましたものを飲んだランチャーも、
「ウキャ!? ムキャキャ!! ウキャーッ!!」
と大興奮。
カメレオンエイプにすら通じるか、このスープ!
いや、野菜しか使っていないと言うのに、本当に美味かった。
びっくりした。
たまげた。
これだけで、大地母神教団をこの地に招き入れた甲斐があったというものだ。
出産時の危険を減らす医療と、栄養豊富で味の良い料理。
彼女たちはこの二つを持っているのだ。
あとはまあ、ルナス領の人々とも馴染んだら、子どもを産んでもらってもいい。
そこはこれからの課題だな……。
「俺としては、このスープだけで君たちの援護をしてやる価値があったと確信している。これ、さりげない感じで村にも作り方を教えてあげてね」
「はい、もちろんです!」
ヒャクシが満面の笑顔で頷いた。
後ろでは、女神官たちがみんなでガッツポーズをしている。
後はメインディッシュのモグラ肉の焼肉だが……。
あー、肉!
肉、懐かしいなあ!
クセはあるが、やっぱ肉を食べると体が喜んでいるのを感じるなあ。
やっぱりルナス領にも、肉食文化をもたらさないとダメだよなあ……!
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