第77話 来た、大地母神教団!
「新鮮な島よお~っ!!」
「やったーっ!!」
ヒャクシの声の後、女神官たちが飛び上がって歓声をあげた。
大変元気である。
「俺は君たちに、我が領地での医療を期待して招き入れたんだ。人間関係のゴタゴタが起きない程度に男を漁ってもらっても結構。だが、本分は医療だ。いいな?」
「分かっておりますともー! そもそも難破船で私たちだけが生き残ったのも、大地母神教が誇る圧倒的な生存能力によるもの。私たちはこれを、母体や赤子にももたらすことができるのです!」
ヒャクシが胸を張った。
「でっか!!」
モネが正直な感想を漏らした。
俺はそこまで興味はない……。
「おじさまは何になら興味があるんですか?」
「文化的なものと領地の繁栄、発展かなあ」
「おじさまは人から離れていっているのではないですか?」
「むむっ、ラビハも成長したらあれくらいになる。と思う」
大変賑やかな感じで、改号前方の開口部を桟橋に接触させ、ここから領地に降り立った。
その途端、女神官の数人が崩れ落ちて号泣する。
「土! 土! 土!」
「二度と揺れない地面を踏みしめることは叶わないかと思っていましたあーッ!!」
「もう、もう、ここに骨を埋める……!!」
感激してもらって嬉しいよ。
では領民に彼女たちを紹介するとしよう。
見物のために、みんな海べりにやってきているからな。
「彼女たちは大地母神教団。人の傷や病を癒す力を持った人たちだ。これによって、もうじき生まれてくるベイビーたちと母体の安全を確保できることになる」
おおー、とどよめく元住民たち。
そして嫌悪の色をあらわにする新住民の女性たち!
あー、大地母神教団をご存知でしたか。
「領主さま、どうしてこんな奴らを国に入れてしまったんですか!」
「彼女たちの医療能力はあらゆる神官の中でもダントツだぞ」
「そ、それはそうですけど……」
「俺は生まれてくる命と母体を、可能ならば一つも取りこぼしたくないんだ。今は一番大事な時期だからな」
「そ、それはあ……」
抗議にやってきた女性が勢いを失った。
大地母神教団、性の乱れ的な意味で悪評は凄いのだが、同時に助けを求めて来た者を絶対に見捨てない人々でもあるんだよな。
救貧院の役割を負っている土地も多くある。
若い女が大地母神教団にいると色々胡乱な目で見られるため、大体は年老いた姿に見せるよう化粧をしたりして化けている事が多いのだ。
なお、大地母神教団の神官は基本的に外見があまり年を取らないぞ。
これは長く健康な母体を保ち、赤子を多く産むために体が作り変えられるかららしい。
人間ではないのでは?
「あら、でも私たちの寿命は人間と変わりません。年を取りませんが、稼働時間が定められているのです。同じ血を持った赤子が増えすぎないためですね」
「大地母神教団は謎に包まれているなあ」
ヒャクシの説明を聞いて、俺は感心した。
ゼータが「邪教では?」とか素朴な疑問を抱いているのだ。
簡単な説明会が終わり、彼女たちが住まう神殿が作られることになった。
言わば大きな小屋だ。
十人全員が同じ部屋でも全く問題ないらしい。
大地母神教団は、清貧を旨とするのだ。
「教義は大変自愛に満ちていて、素晴らしい教えだと思います。そして彼女たちの心根も基本的には善人ですね。ですがそれ以外の部分がとても邪教です。世の中は凄いことになっていますねえ」
ひたすら感心するゼータだ。
もしかして、過去の時代の記憶を取り戻したかな?
向こうでは、ジムニとヒャクシが何か話し合っている。
この領地に住むに当たって、注意してほしいことなどが伝わっているのだろう。
「ジムニ、どんな感じだ?」
「殿下。彼女たちがルナス領に住むことは、大変良いことですな。抵抗を示すのは新住民の女たちばかりでしょう。ですから、彼女たちを納得させるルール決めが重要になって参りますぞ」
「ほうほう、例えば?」
「神殿は村の中に作るのではなく、一旦港湾施設の中に設けてはいかがですかな? 彼女たちの元へ行くには手間を掛ける必要があり、そして彼女たちはこちらに来るために手間を惜しむことはありませんからな」
「ほうほう。手間を増やすことで、敵意を向けるには距離が邪魔するようにするわけか」
「ええ。害が何もない状態で敵意を持ち続けることは極めて困難ですからな。それに、彼女たちは皆、大地母神教団から直接的に被害を受けたことがありませんぞ」
「そうなの? なるほどなあ」
上手い決定だった。
俺はヒャクシたちを率いて、ターミナルから港湾施設へ。
屋根と壁がある場所なので、彼女たちは大層この新しい住居を喜んだのだった。
「大地母神の像を彫って、礼拝所を作ってもいいですか?」
「いいよいいよ。好きに改造しちゃって」
やったー!とはしゃぐ女神官たち。
これから彼女たちには大いに活躍してもらうのだし、モラル面での決め事とかはここからおいおい定めていくことになるし……。
今は楽しく過ごしてもらおうではないか。
そして、新住民の女性陣には、俺が都度ごとに説明会を開いて説得していかねばな。
情が勝って彼女たちを追放するようなことになれば、この領地そのものが立ち行かなくなる可能性もあるのだ!
「まあ、私はおじさまがイニシアティブを握っている限り、悪いことにはならないと思っていますけど!」
ゼータの信頼が妙に厚いのだった。
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