第74話 災害竜退治
「うーわー! 飛ばされます~!!」
「ひいー、ラビハ、足がつかなーい!」
「なんとかしてくださいハイザット様~! なんとかできるんでしょー!」
「モネの態度がだんだん馴れ馴れしくなってきているな……! まあできるが」
今、俺たちは嵐が吹き荒れる外に出てきている。
そして三人娘は俺と、ラビハの糸で繋がっているのだ。
これで飛ばされることはあるまい。
ゼータとラビハがプカプカ浮かんでいるが。
さて、ここに抜き出したアドラマント。
微振動くらいの揺れだ。
「これは俺がかつて嵐を切った事があるので、比較すると微妙に危険度が高いかな、程度だっていう判定なんだな」
「随分雑な判定ですね~!?」
「ああ。俺基準だからな……。あと、未知の脅威は高めに危険度を見積もるところがあるので助かる。ああ、喋ってる場合じゃなかったな」
吹き付けてくる風を目掛けて、俺は剣を振り下ろす。
サクッと切れた。
「あっ!?」
「あれー!?」
「風が無くなった! まあ、あたしは浮いてなかったんですけど」
「モネは肉がついてて重いもんな」
「たくさん食べてますから!」
モネが誇らしげに胸を張った。
王都の貴婦人たちは、重いとか言われるとショックを受けたものだ。
所変われば文化も変わる。
今は、体重の軽いゼータもラビハも地面にストンと落ちた。
「あれ!? 周りが見渡せないくらい凄い風と雲が渦巻いていたと思ったのですけど……。頭の上にだけ、一直線に青空があります」
「俺が切ったからな」
「えーっ!? で、でたらめ……! ラビハ現実逃避……!!」
「まあまあ、ハイザット様ならできると私は思ってたんです」
モネめ、調子に乗ってるな?
さて、叩き切られて大きく形を崩した嵐。
吹き出す風が回転を失い、めちゃくちゃに内部で吹き荒れているようだ。
そして、姿を見せていなかった災害竜が現れる。
嵐の中でも最も太い風が白く染まると、そこに赤い目玉のようなものが出現した。
「うわーっ!? なんだか吠えるみたいな声が聞こえます!」
「ひいいい、ラビハ怖い!」
「ハイザット様! よろしくお願いします!!」
「へいへい」
災害竜は、白く巨大なヘビのような見た目だ。
こいつは意思があるようで、明確な意思はない。
ただ、勢力が衰えて消えてしまうまで吹き荒れ続けるだけだ。
放置しててもいいんだが、うちのガタガタな家が壊れてしまいそうなんでな。
「切らせてもらう。よっ!」
俺は剣を真横に振った。
そして鞘に収める。
「あれ?」
ゼータが首を傾げた。
彼女の見つめる先で、災害竜の首が胴体からズレていく。
そして完全に切り離され……。
次の瞬間、嵐が空に向かって一気に吹き上がり、飛び散った。
残ったのは青空だ。
雲一つない。
全て、飛び散った嵐が持っていってしまった。
「ほえーっ!? いや、分かってはいましたけど……。おじさま。これって、剣技とかそういう次元じゃないですよね……!? もしかしておじさま、今までずーっと手加減し続けてきました?」
「おう。技を使ってた時があっただろう。技には剣気が乗らないから、弱いんだ」
「ちょっと何言ってるか分かりません」
「今のは技を使わずに剣気で斬った。なので、割と本気だ……!」
「割と?」
「ラビハ実感。十二神将全員でもこの人には勝てない」
「すごーい! 嵐が無くなっちゃった!! びっくりしたー!! さっすがハイザット様!」
モネだけが素直にはしゃいでおり、ゼータとラビハが呆れた顔で彼女を見ているのだ。
いつもとは立場が逆だな……?
急に嵐が無くなったので、領民たちが驚いて外に出てきた。
嘘のような晴れ空だ。
「何が……何が起こったんだ……!?」
「嵐が消えてる!」
「お、俺は見たぞ! 領主様が……嵐を斬った!!」
どよどよどよ!
何やらどよめくルナス領なのだった。
「おーい! 気にするな! 気にすることないからなー!! 嵐があのままだと、村が荒らされそうだからちょっと対策しただけのことだ! ほらみんな! 晴れたから、あとは被害状況を確認だ! 何が起こったか、何か壊れたものがないかを調べて修理したりするぞ! 片付けも大事だ! さあ動いた動いた!」
領民たちは首を傾げながらも、みんな仕事に戻っていった。
なんか、俺を見つめる視線に尊敬だけでなく、畏敬みたいなものがあったな。
いかんいかん。
俺は親しまれる領主になりたいのだ。
「私が思いますに」
「おっ、ジムニ! 無事だったのか!」
「ええ、お陰様で。粘土板が崩れてくるところでしたわい」
危ないところだったじゃないか!
「私が見たところ、殿下のお力は人という領分を遥かに超えています。これは人ではなく、ましてや魔だの怪物だのの領域にすら収まらぬ……竜です」
「ほう。竜と言うとさっき俺が斬った?」
「いえ、そのような小さなものではございますまい」
なんかジムニの眼光が強い。
「小さなもの!?」
ラビハが驚いているのだ。
ジムニが静かに告げた。
「星渡りの竜の力に相違ありませんな。殿下は人でありながら、星を渡る竜の力を得ておられるのです」
「ほう……?」
何を言ってるか良く分からない。
だが、なんかジムニが言ってやった!みたいな顔をしているので、そのままにしておこう。
本人楽しそうだし。
「さて、じゃあ俺はターミナルの視察を……」
「領主様! 領主様ーっ!!」
「おっ、なんだ領民よー」
俺を呼びに来る者たちがいるではないか。
大慌てだ。
あっちは海か?
「船が……!」
「なにっ!? また船!?」
「異国の難破船です、領主様ーっ!」
「なにーっ!!」
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