第73話 嵐の激しさを確認だ
外でのんびり嵐を待っていると、漁担当の者たちがロープで船を桟橋に繋いでいる。
そのロープもエウゴ菜なんだろ? 知ってる。
船一艘一艘が、筏に毛が生えたような船なのだ。
だから軽くて、嵐でも桟橋にくっつけておけば流されない。
ラディッシュ号はしっかりと作られた船なので、やはりロープで係留しておけばよしと。
海辺の準備は万端だな。
村の中は……。
積み上げられている薪はやはりロープでまとめられている。
家々は粘土であちこち補強されており、きっと内側も粘土で補強されている。
ここはよーし。
「おじさまが指差し確認してます」
「ハイザット様領主だからね。見回りやってるんでしょ」
「ラビハたちもついてく!」
「あっ、三人娘がついてきたぞ。君たちは暇なのかね」
暇なんだろうな。
三人を引き連れてターミナルまで行くと、子どもたちがブルーキウイを塔の下に設けられた檻に追い込んでいた。
檻というか、キウイたちの家だな。
尻を叩かれて、キウイが次々に檻の中へ入る。
ぎゅうぎゅうだ。
「随分大人しいんだな」
「あっ、領主様! たぶんね、嵐がくるって分かってるんだとおもう!」
「なるほど、野生動物は賢い。君たちも家に入ってるんだぞ」
「はーい!」
その他、呑兵衛夫婦は酒蔵に閉じこもって嵐をやり過ごすつもりらしい。
「俺たちの体を張って、酒を守りきってみせます!」
「酒蔵は雨も風も入りにくいように作ってあるからね!」
「凄い覚悟だ。任せたぞ」
命を大事になんて野暮なことは言わないのだ。
彼らにとって、酒こそが命なんだからな。
楽士メスタだが、伐採チームと一緒に伐採林で待機するそうだ。
というのも……。
「ここにみんなで休憩用の小屋を作ったんですよ。宿泊もできるようになってますし、僕らで色々手を加え続けて建築を試してるんです」
「ほー! 言われてみると、休憩小屋は見たことがないほどみっちりと密度が高く組み上げられている……」
ここで、ルナス領の建築技術が磨かれるわけか。
「じゃあ色々期待しているぞ!」
伐採担当とメスタたちの肩を叩いて回った。
「みんな、結構その場その場にとどまるんですねえ。でもさすがに畑には誰もいないみたいです。さっきランチャーが来て、おサルたちは森の奥で身を寄せ合って隠れるそうですよ」
「そうかそうか。じゃあ最後は俺たちだな。我が家へ戻ろう」
ぞろぞろと戻っていくのだった。
おや……?
一人多いような。
「この間はお酒でクラクラになってここで寝てたんですけど、普通な時に見てみると、いやー、よくできてる家ですねえ」
「モネがいる! お前、自分の家があるだろう」
「家って言っても、他の家の家族と同居してるだけですよ?」
「そうだったの? もともとルナス領は、家族関係とか曖昧そうだもんな」
「生まれた子どもは村全員の子どもだからみんなで育てるみたいなとこありますね」
「そうだったのか……。じゃあモネがここにいてもいいか」
「はっ、これは……」
「モネちゃんをくっつける計画、いける」
「自らモネちゃんを内側に招くとは、おじさま迂闊ですねえ」
そこの小さい女子達は何を企んでいるんだ。
「なんでもないですよー」
「そうそう、なんでもなーい!」
「この二人、あたしとハイザットさんとくっつけようとしてるんですよ。なんで?」
「うん、知ってる知ってる」
「ラビハちゃん! 気付かれています!」
「どうして!? ラビハ衝撃!」
気付くに決まっているだろう。
第一君たち、いつも言ってるじゃないか。
そんな感じでぺちゃぺちゃと喋っていたら、嵐がやって来たようだ。
パラパラと雨が振り始め、風がびゅうびゅうと叩きつけてくる音がする。
ルナス領の全ての家は鎧戸だ。
閉じると、ほとんど灯りがなくなる。
まあ、気密性が低めなので、あちこちに隙間があって、そこから光は漏れてくるんだが。
「嵐が来ましたね! なんだかわくわくしますね!」
「うんうん、安全なところで嵐をやり過ごすの、ドキドキする。ラビハこういうの好き」
「あたしは気が気じゃないですけどね……。家とかいつ壊れてもおかしくないですし」
文明圏にいたかどうかで感想が異なるな。
「俺は城だったから、その辺り全く心配は無かったな。特大の嵐が来ても大丈夫だった。城下町は大きな被害を受けたようだったが」
これにモネが驚く。
「あの凄く発展した街が、嵐で!? どれだけ凄かったんですかそれってー!」
「実はな、レンガを積み上げただけの家ってのもちょこちょこあるんだ。そういうのは嵐に耐えられない。そもそも、嵐自体が少ない土地だから、嵐のことを考えずに家を作ったりもしててな」
「そうだったんですねえ……。世界は広いなあ」
全くだ。
この中では、モネが一番世界の広さを実感しているのではないか。
こうやって腹を割って色々話したことが無かったから、この機会はとても貴重だ。
嵐の間に、語り合うというのも乙なものだ。
と思っていたのだが……。
びゅうびゅう、ざあざあ、ガンガン。
いよいよ嵐がうるさくなってきた。
「これは大きい……!!」
「大きい方の嵐なのか?」
「間違いなく大きいですよ! 家がいくつか壊れちゃうかも!」
「なーるほど。それは困る。うるさくて語り合うのにも邪魔だしな」
俺は対処することにした。
「よし、いっちょ、嵐を倒してくる」
「いけいけおじさまー!」
「どうやって嵐に勝つの!? ラビハ興味~!!」
俺とモネが喋ってる間は、静かにしてて成り行きを見守っていた女子二人が賑やかになった。
ええい、何か狙っているのを感じるぞ。
「後ろで見ててもいいから、吹き飛ばされないように糸で俺と繋いでなさい」
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