第53話 思わぬ再会
「では一休みしたし、次の地域に行くとしよう」
「行きましょう行きましょう!」
「えっ、もう行くのですか!?」
「一日で二つの地域の復活を……!?」
うむ。
まだ夕方になる前だし、あと一箇所いけるだろ。
いや、危ないか?
どうしようかな。
ちょっと迷ったところで、ラビハが走ってきた。
「ハイザットさーん! ゼータちゃーん!」
「おー、ラビハ!」
「お手伝い終わったんですかー!」
「うん。みんな、ラビハの助けなしでやれそうって言うから。だから暇になった。ラビハフリータイム!」
「心強い!」
「これは今日中に終わりますねおじさま!」
「行こう行こう!」
そういうことになったのだった。
石碑を背にしながら、真っ直ぐに進んでいく。
そこは、海が見える崖だ。
木々が茂っており、なぜだか地域全体から甘い香りがする。
「この香りは一体……」
「おじさま、こう言うときこそラビハちゃん!」
「ラビハにお任せ!」
ラビハがしゅるしゅると糸を作り出した。
それが木々を這い、その先に何かが実っていないか探っている。
「こういうのは幾つかのパターンがあるらしい。果実、花、キノコとか……」
「なるほどです。私は都会で生まれ育った存在なので、森のことはさっぱり」
「ゼータちゃんシティーガールだった。む、ラビハ発見~!!」
何か見つけたようだ。
糸がそれを巻き取り、運んでくる。
これは……。
白い花だな。
そこから強烈な甘い芳香が漂ってきている。
摘み取られた花には蜂や蝶などの虫が群がっており、これは彼らを誘引するためのもののようだ。
そして。
『ウキィーッ!』
『ホウホウホウ!』
『キャキャキャ!』
「この声は!! おーい! おーい!」
聞き覚えのある鳴き声に、俺は大きく声を張り上げて答えた。
すると、何もなかったはずの木々の間から、白い毛皮を持った大きな猿たちが姿を現す。
「むっ! ラビハ警戒!」
「大丈夫だ。あいつらは保護色猿と言ってな。和解した仲なんだ。おーいお前たち、俺だ俺だ」
『ウキャー』
猿が一匹降りてきた。
その背中には、ちっちゃい猿がいる。
小さいとは言っても、ゼータよりデカいが。
「ムキャホー!」
「あら、ランチャー! ひさしぶりー!」
ゼータが俺の背中から、ピョーンとジャンプした。
ランチャーも母親らしき猿の背中から飛び出し、ゼータをキャッチする。
「ウキャキャ、ムキャー!」
「おー、かわいいかわいい。ランチャーも元気でしたか。そうでしたかー。今はこの花を食べているんですね」
「ウキャ、ムキャホホ」
この光景を、俺と猿たちがニコニコしながら見守るのだ。
ラビハだけが首を傾げていた。
「どういう関係? ラビハ不思議!」
「まだゼータから聞いてなかったのか。俺たちはクアットロの実を手に入れる途中で、この保護色猿と接触してな。色々あったんだが、結果的に和解。特に子猿のランチャーはゼータと仲良しになったんだ。友達関係というわけだな」
「なるほど! ラビハ納得~!」
少しして、猿たちの中から一際大きいヤツが出てきた。
ボスザルであろう。
彼は俺を見ると、どしんと腰を下ろした。
『ウゴウゴ、ギャオギャオーン』
「どうしたどうした。何か話があるようだな」
「おじさま、私、ちょっとですけど彼らの言葉が分かりますよ」
「本当に!? ゼータは何でもできるな……」
「ハイザットさんがそれを言うの?」
俺は剣しか使えないぞ!
ゼータは、ランチャーと会話を交わすことで保護色猿の鳴き声を解析。
ある程度の意思疎通ができるようになったようだ。
魔法の力か!
凄いな、魔法。
攻撃力は大したことはないが、この応用性こそが魔法の凄さだ。
「おじさまが魔法の威力を凄く侮るようなことを考えてそうですが、おじさまだけはその傲慢が許されるでしょうね……。さあ行きますよー! 翻訳の魔法! トーレ・トレス・サグエサ・トーレグサ!」
おっ、謎の温かい波動が俺の中に……。
『わしの言うこと分かるか』
「あっ、明確な言葉になって聞こえた! 分かるぞ。どうしたんだ」
『話聞いてくれるか、強きオスよ。群れは飢えようとしている。赤い実から離れた。食べるものが減っている。メスの乳の出が悪くなった』
「なるほど理解した。食べ物があるところに連れて行ってほしいんだな?」
『そうだ。甘い実があるところはまだある。だがそこには恐ろしい者がいる。紫の虫がいる。幼い子を連れて、群れは近づけない。群れは困っている』
「分かった。一時的にだが、うちの畑を利用するといいだろう。それに果樹園に来てもいいんだぞ。俺たちの頭数と比較して、作物が採れる量が明らかに多いんだ」
『木が低い。枝を渡れない。群れは不安がる』
「背に腹は代えられんだろう。我慢しろ。食い物が食えるんだから」
「おじさまがおサルさんにお説教しています」
「こんな光景見たことない。不思議」
見世物ではないぞ。
だが世にも珍しい光景なのは確かだよな……。
こうして俺たちは保護色猿を引き連れ、ここから赤い果樹園までの直通ルートを開拓していくことになるのだった。
まずはこの崖際のルートを解放だぞ!
「ミーユ・カム・ユーダビン! 石碑よ目覚めよ!」
崖際の森が、道に変わっていく。
傍らには森があり、これは猿たちも利用できるようだ。
『追い出される感じ、しない。どうしてだ』
「お前たちが俺に助けを求めたからだろう。よく分からないが、この島は人を選んで協力してくれるようだ。お前たちは俺の仲間と判定されたということだ」
恐らく保護色猿たちは、遥か昔、しかし島が本来の機能を失ってしまった後の時にここへ移り住んだ存在なのだろう。
再び目覚めた島にとって、彼らは他の怪物たち同様、部外者なのだ。
では、覚醒した石碑は猿たちや怪物を追い払うが、どうして人間をその懐に入れてくれるのか?
これは、この島がかつて、人間たちのものだったからなのでは無いだろうか。
謎に満ちているが、その辺りだけは確かな気がするのだった。
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