第52話 ターミナルの隣へ行こう
さて。
ターミナルの隣にやって来た。
石碑の守りから外れると、一気に森になるんだよな。
実に不思議だ。
「おじさまがまるで散歩でもするかのように……」
「ここに来るの、これで四回目だからな。勝手知ったる庭的なやつだ」
「この魔境があ?」
俺に向かって襲いかかってくるのは、樹上に潜む人食いヒトデみたいなやつだ。
それがジャンプして次々に襲いかかってくる。
さらに足元からもうぞうぞ出てきて、俺に食いつこうとしてくる。
「おりゃ!」
一閃で三十匹ほど撫で斬りにし、返す刃で五十匹ほど叩き斬り、鞘に納める動きで七十匹ほど断ち切った。
「おっ、なんだかでたらめなことをして、群がってきた集団の過半数を一瞬で切り倒しましたね。明らかに再生能力が高そうなのにピクリともしていません」
「剣というのはな、叩き込む時に殺気を流し込んでおくといいんだ。これを剣気と呼ぶこともあるらしいが、必要量が注ぎ込まれていると相手は再生も復活もしなくなる」
「私の知らない理論なんですけど?」
誰かに話したことはないからな。
なにせ再現性がない。
俺しかできない。
俺が切ると、再生するタイプのゴーレムも直らなくなるし、サイズ差がある巨大な敵だろうが普通に死ぬ。
「きっとみんな、俺の域まで達してないんだろう。頑張ってほしい」
「おじさまにそう言われると、反論できる人はいなくなりますね……! 武に打ち込んできた方々皆様の心を折る言葉なのであまり外では言わないほうが」
「うん、俺もそう思った」
こんな雑談をしながら、サクサクと怪物を排除していくのだ。
触手を伸ばして絡め取ってくる、巨大なウニみたいなやつとか。
「おらっ」
『ウグワーッ!?』
「真っ二つになったら、なんだか美味しそうな匂いがしますね」
「ウニみたいに食べられそうだなこいつ」
目にも止まらぬ速度で周囲を駆け回り、刃になった爪で首を狙ってくる獣とか。
「カウンターだおら!」
『ウグワワーッ!』
「ウサギみたいな見た目じゃないですか?」
「こいつも食べられそうだね」
だが、領民は決まったものしか食べていないから、いきなり肉なんか食ったら胃がびっくりするんじゃないか。
肉は少しずつ広めていくことにしよう。
こんな感じで歩き回っていたら、恐らくこの辺りが入口から1/3ティタンくらいかなというところに来た。
何箇所かの石碑を解放して分かってきたんだが、こいつは完全に埋もれて見えなくなるということがないんだよな。
あるいは、石碑が隠れている場合はそこだけ不自然に植物なんかが盛り上がっている。
侵食したりすることができない素材でできているのだろう。
ここにもあった。
枯れたクリーピングヴァインらしきものに埋もれて、しかし石碑のツルッとした上部だけが顔をのぞかせている。
「あれだあれ。頼むぞゼータ!」
「はい! おじさまがここまで連れてきてくれるから、本当に楽ちんですねえ。ミーユ・カム・ユーダビン! 石碑よ、目覚めよ!」
ピカーッと輝く石碑。
色は緑色だ。
ターミナルの石碑と同じだな。
これはどういうことだ?
周囲が盛り上がり、形を変えていく。
ここは元々、鬱蒼と茂る森だった。
その森であるという形を大きく崩さないまま、生態系だけが変化したようだった。
怪物たちの気配が消えている。
恐らくは、ブルーキウイみたいな動物だけが住む森に変わったのではないだろうか?
それでも一般的な領民にとっては脅威となる獣もいるだろう。
そこは後々調査すべきだ。
「およそ三時間くらいでしたね。思ったより長かったかも……」
「足場が悪かったからな。足元を切り払い、怪物たちを蹴散らしながら進んだらこんなもんだろう」
振り返ると、戻りは獣道のようになっている。
俺が切り開いた道だ。
「獣道ならぬハイザットロードですね」
「そう言われるとなんかかっこいいな」
戻りは小走りですぐだった。
俺はその足で、居住区に向かう。
そして伐採責任者の二名を連れて戻ってきた。
「うおっ!!」
「これは凄い!!」
彼らが大いに驚く。
「村にある森でも大事に伐採していけば長く使えると思いましたが、これは凄い……」
「これだけの大きな森があれば、何代にも渡って森を使っていくことができるでしょう。もちろん、植樹は必要になりますけど」
「植樹とかはお願いしていい?」
「もちろんです」
頼れるー!
「この森は獣もよく出るようなので、なんなら捕らえて食肉にしてしまってもいいと思う。そこは任せるので、やりたいようにやってみてくれ」
「おお、肉が!?」
「この島に来てから、肉は食べられなかったからなあ。食いたい!」
どうやらモチベーションも上がったようだ。
じきに、肉も食べられるようになるかも知れない。
俺が個人的に狩ってもいいんだが、そういう一人だけ特別みたいなのはちょっとな。
今までの人生が割と孤独だったせいもあって、今はなんでも領民と一緒の生活なので、かなり楽しいのだ。
どうせなら、一緒に肉を食えるようになりたいもんだよな。
「おじさま、私も早くお肉が食べたいです!」
「おや? ゼータには肉食の記憶が……」
「あったみたいですねえ。地域を解放するごとに、少しずつ記憶が蘇ってきてますよ。ここは緑の領域ですね。ターミナルからここ、そして先へ先へと、緑の転送装置で移動できる、同じ領域とされる場所が連なっています」
「なんだって」
つまりこの島、その土地の性質によって色分けがされているというわけなのか。
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