第51話 最後は奴隷船をつけておこう
材木の森を確保に行く前に。
桟橋につけてある巨大過ぎる奴隷船を移動させておこう。
「行くぞゼータ」
「はーい。ブライ・ブラウ・ノブライト! 船よ動けー!」
巨大奴隷船に乗り込んだ俺たち。
そのまま船を動かして、港湾施設へと向かうのだ。
「しかしこの船、サイム号だったか。奴隷船のままの名前というのもよろしくないな」
「そうですね。何かそれっぽい感じで、私たちの考えた名前をつけましょう。何がいいですかね」
「そうだな……そうだなあ……。今後改造をすることを考えて、サイム改号と呼んでおこう。略して改号だ」
「よくわかりませんけどそれでいいと思いますよ? 気になるのは改造の方ですね。どうしましょうか。砲台でもつけますか?」
「砲台ってなんだ……!?」
「あっ、まだ銃や砲が開発されていない時代!! これは迂闊なことを言えませんね」
ゼータは俺が知らない進んだ文明の知識をたくさん持っているようだ。
下手に聞き出したら、今後の村の開拓に差し支えが出てきそうだ。
慎重に会話を進めねばな。
この先の世界の種明かしをされてしまうぞ。
さて、ゼータの力で自動運行させている改号だが、これがかなり速い。
アガマス号の倍の速力である。
「本体が大きいですから、動力も大きいのかもしれませんね。あるいは、この木造部分は後から付け足したもので、本体は凄まじいパワーを持った動力部分なのかも」
「そうなのかー。なるほどなあ……。何を言っているのかさっぱり分からんが、凄いことだけは分かったぞ」
「おじさまは多分、剣の力を使えばこれ以上のことを技だけでやりますからね……。単身で超文明に匹敵しないでください」
「ひどい言いがかりだ!」
一時間ほどで、港湾施設まで到着した。
逆を言えば、かなりの速度で一時間行かねば、島の港湾施設には到着しないというわけだ。
万一転送装置がおかしくなって戻れなくなったら終わりだ。
屋根がある環境だが、あそこを拠点にするのは危険だな。
たまに行くくらいでいいだろう。
改号が近づくと、空中桟橋みたいなのがグーッと伸びてきた。
どういう仕組になってるんだこれは!
桟橋が改号に接続し、見事に停泊。
俺とゼータが降りると……。
施設の中からカチャカチャと音を立てて何かがやって来た。
なんだなんだ。
魔剣が反応しないから、スルーしていいっぽいな。
ボーッと見ていたら、ゼータくらいの背丈の金属の人形みたいなものが何体も小走りでやって来たのだった。
「これはなんだろう?」
「港湾施設の保守要員ですね。この間は上まで行かなかったですからね。彼らに会うことは無かったんです。船の修理や保全を行うゴーレムですよ」
「ゴーレムか! ほー、なるほどなるほど。船の修理や保全なんて、随分高度なことをできるんだなあ……」
保全ゴーレムたちは船に乗り込むと、あちこちの様子を見ている。
破損した箇所をみつけて、他のゴーレムに手を振って連絡している。
おっ、指差し確認しているな。
かなり職人的なゴーレムらしい。
せっかくなので眺めていくことにした。
ゴーレムの数は十体ほど。
うち五体が表面の破損箇所を調べ終わった後、ガッシャンガッシャンと施設の奥に戻っていった。
そして少ししたら、ガラガラと巨大な手押し車を運んでくる。
手押し車の中には、金属板が何枚もあった。
あれで俺が開けた穴を塞ぐんだろうか。
どうなるか気になりすぎる。
「おじさま、多分何日も掛けて修繕していくと思いますよ! ずっと見てたら帰れなくなりますよ!」
「そうかあ……。気になるなあ。残念だなあ……」
後ろ髪を引かれる思いで、空中桟橋から転送装置の部屋まで戻るのだった。
そこからまた、ターミナルまで帰還する。
一瞬だ。
やはり転送装置は凄い。
だが、解析できない代物だからな。
畑に直結してるものが働かなくなっても、食べるものがあるからまだいい。
港湾施設に繋がっている装置は、止まらないで欲しいものだ。
「おじさま、何か心配してます? 転送装置が止まらないかとか考えてるんですか?」
「そう、それ。本当に大丈夫なのかあ……?」
「多分、一日で使える回数制限はあると思いますね。大気中の魔力を使って稼働してますけど、それは毎日決まった量しか発生しませんから」
「新情報が次々に出てくるな。じゃあ、理想的にはあの畑の位置をはっきりさせて、道なりに移動してどうにかできるようにしないといけないな」
「はい。今は言わば、虫食いみたいな状態で島のあちこちを解放している状態です。この間を繋いでいくのは、おじさまと私でやっていかないといけないわけですね」
「ああ。材木の森を解放するのは、その一助になるわけだ。改めて、俺の仕事の意味合いを確認できた」
戻ってきたこの足で、早速開拓に行こう! ということになった。
「戻ってきてすぐ行くんですか!? 二人とも体力おかしくないですか?」
「相変わらずモネは思ってることを全部口にするな……! いいんだよ。元々俺は体力あるんだから」
「私はおじさまの上に乗ってるだけですからねえ。たまに魔法を使っているだけです」
「二人ともとんでもない事をしてるんですけどねえ……。あ、これ食べてってください。サンドイッチ」
「お、ありがとう」
「ありがとうございます! やっぱり空腹にはエウゴ菜と卵のサンドイッチですよねえ」
「だなあ。偉大なるワンパターンだ。まあ、食材のバリエーションは増やしていきたいとは思っている。新住民たちは今の食材では、故郷の料理ができないらしいからな」
こうしてやるべき事を幾つも抱えて、俺たちは新たな領域の解放へ向かうのだった。
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