第50話 行くぞユニット工法
まずは、ユニット工法をテストしてみる。
板をまとめてから、粘土で貼り付けるのだが……。
「粘土万能じゃない?」
「この土地の粘土、様々な性質があるんですよ。驚きました! これは焼かずに接着剤として使ったり、隙間を埋めて乾かして使うといいようですね」
すっかりルナス領の建築事情に詳しくなったジェイドが説明してくれる。
おかしい……。
この男、畑の方に行ってもらったはずなのに。
モネともども、建築現場にいるではないか。
まあいいか。
「よーし、板を並べてくれ! 横板を貼り付けるぞー!」
「くっついた! ちょっと時間を置いて乾かす!」
どうやらこれは、粘土とエウゴ菜の根から抽出した液を混ぜて作られているらしい。
またエウゴ菜!?
こうやって作られた粘土は、ニカワのような性質を発揮する。
釘も無いのに、この土地の掘っ立て小屋が安定して建てられている理由がよく分かった。
さてさて、壁のユニットを四つ組み上げて乾かす。
でかめに作ってあるので、はみ出たところは斧で割って削った。
うん、まあこれでいいだろ。
端材は薪にする。
屋根のユニットは左右からくっつけるので、二枚作って乾かす。
床は既に張ってあるから、後はこれらのユニット六枚を持ち寄ってだ。
「よーし、柱にくっつくように張り合わせろー!」
「うおおー!!」
領民たちが掛け声とともに、ユニットを組み合わせたのだった。
そのまま押し付けながら、一時間ほど。
みんなで寄りかかって時間を潰す。
離れてみると……。
「で……できてる!!」
「あっという間に家ができた!」
ユニットを作って貼り付けるまで、掛かった時間は三時間だ!
ここに屋根を乗せてまた一時間乾かしたら、家が完成した。
見た目も崩れていない、かなり四角い家だ。
もう掘っ立て小屋とは呼ばせない。
なお、この島の扉は、引き戸である。
ユニットの壁に据え付けたままで組み立てられるんだな。
まあ建付けが悪いので、刃物で削りながら開閉チェックするか、ゆるゆるなのを粘土を噛ませてマシにしたりする。
「これは、建築作業が効率化してしまうな……。しかも新たな住民たちの技術で平らな床と曲がっていない柱を手に入れた。正直この家は俺の住んでいる家よりもできがいい」
領民たちがハッとした。
ハッとするな。
あれはあれで、お前らが頑張ったってのは分かってるし、感謝してるから。
だが、領民たちみんなが忖度した。
このユニット工法第一号の家は、俺の屋敷ということになったのだった。
気を遣わせてしまったな……。
「わーい、平たい床! ラビハ、ごろ寝できる床ひさしぶり~!」
「まーだラビハは俺の家で寝るの?」
「むっ、ラビハは任務を負ってる。ハイザットさんの監視! そのためにここで寝泊まりする!」
「昼間は普通に別行動したりしてるでしょ」
「ラビハ黙秘!」
当初の目的が完全にどうでもよくなってるやつだ。
まあいい、こちらは大人なんだから突っ込まないでおいてあげよう……。
その日はさらに二軒の家が完成した。
テストケースである我が家はその中でも一番大きい。
他の家はもっとこじんまりさせて、完成スピードを重視した形になった。
一つはジェイドと仲間二人の家。
もう一つは女性側の中心である人物と友人たちの家になった。
雑魚寝の大きい家に、新しく作られた掘っ立て小屋もある。
新住民たちはそれなりに広々と家を使い、暮らせるようになったと言っていいだろう。
なお、ここで切り出した木材が尽きた。
「どれくらい木材を用いて家を建てるかなんですが」
ジェイドが相談にやって来た。
「そうだな。この居住区にある森はそこまで大きくない。木を切りすぎたら、薪の材料が減ってしまうだろう。それに、人数が増えたことで薪は必要量も増しているだろうし……。材木の伐採のため、遠征できるようにしてみるか」
「はい。ハイザット様にその準備をお願いできるとありがたいです。俺たちでは死んでしまうので……」
「分かったぞ。ではまた、新しい地域の開拓を行うことにする。今度は材木が手に入る森だな」
一般の森ともなれば、居住区の不自然な森と違い、多くの生物もいることだろう。
ここで食肉や毛皮を得られるようにしてみたい。
まあ、この島は常夏みたいな感じだから、スコールに長時間当たらない限り凍えることはないんだが。
「おじさま、新たな探索の始まりですか?」
「ああ、そうなる。港湾施設はしばらくあのままだな。ジムニは自力で文字を解読するだろうし」
「はい。ジムニさんはとっても覚えが速かったです! 既に一部の文字は読み解くことができていましたから、そこから推測して全文をイメージできるみたいですね。流石です」
「我が領土に欠かすことにできない人材……!」
俺が唸っていると、ラビハがやって来た。
「ラビハは? 欠かすことができないラビハ?」
「ラビハもそうかもなー」
「やった! ラビハ歓喜」
糸使い、なんだかんだでめちゃくちゃ便利だからね。
さて、では向かうのは、ターミナルから右手。
転送装置を使わない移動になる。
そこは、新住民たちに島の脅威を覚えてもらうため、連れて行った区画になる。
モネもそこに連れてったし、ブルーキウイもそこで回収したなあ……。
あれ?
何気にあの辺りって、多様な生き物がいる地域なのではないか?
あそこを開拓して、安全に木を切れるようにしたい。
次の探索はそれを目指すこととしよう。
それから……。
「あのー、領主様」
新住民の一人がやって来る。
夫婦だ。
二人とも、何やら言いづらそうである。
「どうした? 何か要望があるのか?」
「へえ、あの。俺もかかあも、その……酒に目がなくて」
「あー!」
この島、酒が無いな!
「少しでいいんで酒が手に入らねえかなって……。いや、みんなが元気に生き残る方が大事なんで! もうもう、酒なんかおまけでいいんで」
「そうですよお。あたしも亭主も、ちょっと。ほんのちょびっと飲めればいいんで。お願いしますよ……! あの果実じゃ、酸っぱくて酒になりゃしないですから」
「よし分かった。覚えておくよ」
材木の確保と、酒の確保。
これがテーマになるわけだな。
俺が知る限り、酒は麦や甘い果実を発酵させて作るものだったのだが……。
もしかして、新住民たちの地域では違う作り方をしてたのかもな。
その辺も後で聞いてみることにしよう。
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