第49話 家を建ててみよう
「もうすぐ、もうすぐ。がんばれがんばれハイザット様!」
「なんで領主である俺が本棚を運び、モネは横を歩きながら応援しているんだ?」
「本棚は一つしか無かったですし、大きさ的にあたしが運ぶのちょっと大変そうじゃないです? ハイザット様が運ぶのが一番いいと思います。そうしたらあたしができることって、応援しか……」
「急に口が回り始めたな……」
こうしてジムニの家に来て、粘土板をどけて本棚を設置した。
ルナス領の家には鍵なんかついていない。
誰でもフリーパスで中に入れるのだ。
さて、本棚に書籍を詰め込んでいく……。
おっ、全部収まりそうだな……。
横ではモネが、粘土板を立てて並べていた。
「適当に並べると分からなくなるんじゃないか?」
「これ、粘土板に番号が振られてるんですよ。あ、懐かしい。奥からあたしが勉強してた頃の粘土板が出てきた!」
「なにっ、そんな昔の!? 二十年くらい前?」
「あたし生まれてないんですけど」
「そんなに若いの!?」
モネと喋りつつ作業を終えて外に出る。
そうしたら、材木が次々に運ばれていくところだった。
男たちがみんなで協力し、担いでいる。
「おっ、今まで見たことがないくらい綺麗な材木じゃないか」
「領主様!」
ジェイドが俺に気付いて手を振った。
「領主様が持ってきてくれた斧のお陰で、家を建てる効率が上がります! 不揃いな木材を粘土でくっつけてどうにか家の形にするとか、そんなことをしなくて済みますよ。今までの家じゃ、地震が起きたら終わりですからね」
「ほんとにね。なあ、モネ。この島に地震ってある?」
「じしん……?」
あ、なさそう。
そもそも、古代文明の力で作られた人造の島っぽいし、災害竜ナマズが引き起こす地震に抗える仕組みがあるのかも知れないな。
よし、地震の話は終わり。
掘っ立て小屋でも、無事に立っていられる土地だってことは分かった。
「お、ラビハじゃないか。今回は手助けしないの?」
「変な木がないから、糸で結ばなくていいの! ラビハお役御免」
「いい方のお役御免だね」
三人で並んで、家を建てる様子を眺めることにした。
新しい住民たちがまずは地面を均しており、これを見て元からの住民が「おおーっ」と感心していた。
今まではどんな凸凹でも、石ころがあってもそこにそのまんま建ててたもんな。
お陰で村の掘っ立て小屋は、みんな傾いてたり変な形だったりする。
誰もが、家はそんなものだと思って暮らしてきたのだ。
その常識が今、崩れようとしている!
「問題は俺たちの中に、大工の専門家がいないことなんですよね。見様見真似でやってます」
「なんだって。まあいけるだろう……」
万能補助剤の粘土もあることだし。
地面を掘って柱を立てて、板材で床を作って……。
なんかそれっぽい感じで進んでる。
だが、この出来上がっていく家の様子が大変にちゃんとしているので、古くからの住民たちがどよめくのだった。
「まあ、あたしも王都に行ってみたら、物凄くしっかりした家がたくさんあってびっくりしましたからね。あたしたちが住んでた家ってなんだったんだーって思って、途中で、あれを作るのはムリって諦めたら楽になりました」
「諦めちゃダメだろ」
「でもハイザット様。王都の家って、木じゃなくてなんか不思議な四角いものでできていた気がするんですけど……」
「あれはレンガだな。そっか、粘土でレンガを作る手があるな……。ちなみに王国の家はレンガを直積みではなく、間にセメントを塗ってしっかりさせていてだな。というのは王国には地震があるので……」
「ほえー」
「ハイザットさん物知り!」
「ラビハは大陸にいただろうに……」
そうこうしているうちに、柱が全部建った。
という辺りで、本日は終わりのようだ。
「以外と王国の家は時間が掛かるんですねえ」
「王国の家というか、ジェイドたちの故郷の家だな。とにかく床を徹底的にしっかり作るようだ。まるで、地面から蛇とかサソリが襲ってくる環境のようじゃないか」
「その通りです」
ジェイドからの肯定。
「俺たちの故郷では、床を徹底的に作らなければならないんですよ。隙間から蛇や毒虫が入り込んでくるから。ですけど、床をしっかりさせて作ると居心地は良くなりますよ」
「それはそうかも」
床が平らなら、ハンモックじゃなくても寝やすいからね。
そのうち、ジムニたちも帰ってきた。
ゼータに色々と質問をしているな。
なんと生き生きしているのか。
ジムニも建てかけの家に気付いた。
「おお、これは!! 今まで無理を言ってもと何も口にしてきませんでしたが、しっかりとした家の土台ができあがっている!」
「ジムニさん!?」
モネ、ジムニが秘めていた、掘っ立て小屋へのモヤモヤを知ってしまったか。
「これならば、私が今日見つけてきた建築技術も応用できそうですな」
「なにっ、ジムニが見つけてきた建築技術とな!?」
「いや、別に特別なものではありませんが……。これをこうしてこうして」
ジムニが地面に棒で絵を描く。
なにっ、木材であらかじめ壁を作り、あとからパチパチとはめ込んでいく!?
「古代文明では、様々な効率化が行われていたようです。その一つがこのユニット工法ですな。無論、寸法などが正確でなくてはなりませんが、これを行えれば建築速度は一度に上がりますぞ!」
どよめく住民たち。
そして俺。
そ、その手があったかぁ~!!
言われてみれば、それは効率的だ。
あまり凝ったものは作れないだろうが、掘っ立て小屋からすると圧倒的なクオリティアップと言っていいだろう。
「よし、明日からはこのユニット工法で行ってみよう! そのために寸法を正確に合わせていこうな……!」
そもそも、ひとかたまりのユニットにした壁とか、運ぶのもかなり大変なんじゃないか……?
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