第45話 謎の施設が蘇った
鍾乳石が次々に砕け、天井が割れ、その中に隠されていた構造材が姿を表す。
陽の光が一瞬差し込んだかと思ったら、俺達を構造材が包みこんでしまった。
気がつくと、そこは建物の中だ。
少年たちが俺にしがみつき、ぎゅっと目を閉じている。
「おい、もう終わったようだぞ。足元もしっかりしてるだろ」
「へ? ほんとだ!」
「あれ? 回りも明るい!」
「な、なんだこれー!?」
島から出たことがない少年たちは見たことがあるまい。
つるりとした壁面は、継ぎ目のないタイルのよう。
それがどこまでも続き、円筒形の空間を作り上げていた。
部屋の大きさは、アースユニ城の謁見の間の半分ほど。
かなり広い。
そこに、背の高い柱が何本も立っていた。
柱自体が光を放ち、そしてつるりとした天井も光を放っている。
光源がなんなのかはっきりしないのに、この空間はとても明るかった。
「どうやら復活したようですね! ここは港湾施設だと思います」
「港湾施設……? このツルツルの部屋がか? どこにも窓はないのに……」
「ミーユ・カム・ユーダビン!」
ゼータが呪文を唱えた!
すると、俺の背後にある壁がウイーンと音を立てて開く。
な、なんだこれはー!!
そこに出現したのは通路だ。
やはり天井が光を放っている。
ここを通ったら……見覚えのある入り江に出た。
アガマス号が埋まってた辺りだ。
「なるほど……。港湾施設か。つまり、本来ならここがルナス島の港だったわけだな? それが長い間に洞窟に覆われてしまっていたと」
「そうなりますねー。おじさま、振り返ってみて下さい」
「なに? どれどれ……うおわーっ!!」
俺は大いに驚いた。
少年たちも腰を抜かすほど驚いた。
そこには、黄色に輝く巨大な建造物が存在したからだ。
いくつもの円筒形の建物を組み合わせて作られた、幾何学的な塔の集合体、
それが復活した港湾施設だった。
これのどこが港なんだ……。
ああいや。
高いところから、海に向かって展開している場所がある。
あの巨大な奴隷船だったら、ちょうど乗り付けられる辺りか。
どうも高さを変えられそうだな……。
そんな場所……いわゆる搭乗口らしきものがいくつもあった。
使えそうなのはその一つだけということだ。
「突然、貧乏な俺の領地にとんでもない設備が誕生してしまった。だが正直、こんなものは使い切れないぞ」
「本当ですねえ。一応使い道があるとしたら、この入江で釣りをするのがいいと思います! 村とは違う魚が釣れるみたいですよ?」
「あ、なーるほど。それに奴隷船はここに係留しておけばいいか。外から来た使者があるなら、ここに連れてくればいいだろうし……」
俺がゼータと相談していると、少年たちがムズムズしているようだった。
「な、なあ領主様!」
「オレたちお願いがあるんだけどー」
「ちょっと冒険してきていい?」
「あっ、好奇心の虫がうずいてるな!? まあまあ安全になってるだろう。よし、行ってこい。ただし、無茶はするなよ? 死ぬ可能性は全然あるし、俺は領地の人口を無駄に減らしたくないんだからな」
「はーい!」
少年たちはやたらと、返事だけがいいのだった。
彼らはワーッと屋内に駆け戻っていく。
「ミーユ・カム・ユーダビン! 扉よ開け! 一応いくつかの扉は開けておきました。凄く広い施設ですよここ。全部開けてたら大人だって迷子になりそうです!」
「そうなのか。ゼータも迷子になるのか?」
「私は頭の中に地図が入ってますから」
ふふーんと俺の背中で得意げなゼータなのだった。
よーし、ではゼータの案内を受けて、俺も施設内を見て回ってみよう。
さて、島において俺が履いているのはエウゴ菜の繊維で編まれたサンダルだ。
ここもエウゴ菜である。
それで、ぺったんぺったんと歩いていく。
床も磨き上げられたタイルだ。
まずは屋内を見回す。
「この円柱は……なんだ?」
「おじさま、これは書籍ですよ」
「書籍かあ。……書籍!? そんなバカな。書籍っていうのは紙でできているものだろう?」
「何というのでしょう。魔法の書籍は、光で作られているんです。ちょっと思い出してきました。ここには、たくさんの本があるんですよ。光だから場所を取らないですし」
「うーん、全く理解できない世界だ。だが、ジムニに読ませてやりたいな……!」
「いいですね! 一応、言葉がわからないと思うので私が翻訳しないとですけど」
「そうか、言語が違うのか……!」
俺が思うに、ゼータは遥か昔に生きていた人々の生き残りだ。
何故か俺の言葉を話すのは、これは魔法かなにかの効果なのだろう。
ジムニには言葉を覚えてもらう必要があるかも知れない。
いやいや、あのご年齢で言葉を覚えるのは大変だぞ……!!
それなら子どもたちを教育し、これを読み解けるようにするのがいいんじゃないか。
「ここに建築に関する書籍があればいいんだが……」
「図書館ではないですから、本格的なものはないでしょうけど……ちょっとした趣味の建築に関するものはありそうですねー。探します?」
「いや、ここにいるだけで何日も経ってしまう! やめておこう……」
今は、少年たちの後を追うしかない。
なんかこの施設、貴重なものが色々ありそうじゃない?
めちゃくちゃにされたら堪ったものではない。
「大半の部屋にはロックを掛けてます! ええと……今の文明レベルでは意味がないので!」
「意味がわからないことを言うなあ。ま、いい。おーい少年たち! どこだー!」
俺は彼らの後を追って、石碑のある部屋を飛び出すのだった。
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