第44話 建築技術を巡る探検
「明らかに俺の手が空いているので、今まで行った辺りを巡ってみて、今後の役に立つ手がかりが無いかを見てみようと思うのだが」
「あらいいですね! 行きましょう行きましょう!」
本日は、ラビハも建築の補助で大忙し。
俺とゼータの二人で向かうことにするのだ。
例によって子どもたちがついて来たがった。
「なあなあ領主様ー! そろそろ連れてってくれよー!」
「そうだよー。オレたち勝手なことしないからさー」
「本当か? 本当に本当だな? 勝手なことをしたら死ぬからな?」
俺は彼らに念押しをする。
少年たちがゴクリとつばを飲み頷いた。
「言うこと聞くよ……!」
「領主様すげえ強いけど、俺らはゼータにも勝てないもん」
そうだな、少年たちは誰一人としてゼータに土をつけることができなかったな。
まだ、ゼータの上手投げすら攻略できないでいる。
つまりこれからが楽しみということだ。
本日、俺についてきた少年たちは三名。
「私と三秒以上勝負できた者を選んでいます!」
「ゼータ、お前まだ無双してるのか。強いなー」
彼らを引き連れて、くぐるのは黄色い光の転送装置。
これを最近、ゲートと呼ぶことにしている。
アガマス号が存在していた、洞窟の入江だ。
あそこはアガマス号を回収したままであり、よく考えたら石碑を解放してすらいない。
それなのに普通のコウモリくらいしかおらず、他の地域で見られる怪物に出会うことはなかったのだ。
かなり安全な場所であると言えよう。
どれどれ……?
ゲートを抜けた先には、潮騒の聞こえる洞窟があった。
光が差し込んできており、見渡す範囲はそれなりに明るい。
だがよく考えると、一つの地域がおよそ直系1ティタンはあるのだ。
「俺とゼータはろくにここを探索していなかったんだよな」
「そうなりますねー。あの時は船を用意するのが一番重要でしたし!」
「うわあー、足元がフラフラする」
「なんださっきの光……」
「光に飛び込んだら、こんなところに来るのか……。奥は真っ暗だあ……」
みんなついてきているな。
「いいかお前たち。まずは火を付けられるものを探せ。あちこちに灯りを点けて、この空間を把握しやすくするのだ。ではダッシュ! 行くのだー!」
「はい!」
「いくぜー!!」
「おりゃー!」
バタバタ走っていった。
「ゼータ。ちびどもが危なくないように見張れるか?」
「お任せですよ! ムンク・シン・ムクーン!」
子どもたちの背中が薄っすらと輝いた。
暗い空間だとよく見えるな。
「凄い能力だな。これは?」
「私が認めた人を光らせる魔法です。光るが背中なので、本人は暗闇の中に突っ込んでもらわないといけないのが弱点ですねー」
「おお、非道な魔法の気配がする……!!」
俺もサボっているわけではなく、少年たちの動きに目を配っているのだ。
ソードソナーで一応調べてはいるが、これは大まかな地形や自ら動く生物を見ることはできる。
しかし、可燃物かどうかを見るには向いていないのだ。
「領主様ー! この辺、木とか生えてなさそうだよ!」
「何かカサカサしたものがあればいい!」
「カサカサ……? うわ、なんかヌルっとしたのがある!」
「おっ、どうしたどうした」
俺は駆け寄っていった。
いやあ、背中が光っていると見つけやすくていいな。
果たして、そこにあったのはコウモリの死体のようなものだった。
死体なのだが、壁に張り付いたようになっており、質感がおかしい。
毛皮がぺったりして皮膚と一体化して、そのまま生きていた頃の姿でミイラ化しているみたいな……。
「あ、死蝋か! これは燃えるかもしれないぞ。よし、避けるんだ少年」
「はいーっ! うわあ、気持ち悪いもの触っちゃった!」
「よし、ソードティンダー!!」
俺たちが動き回ったことで発生した洞窟内の粉塵を着火し、これを用いて死蝋を燃やす。
しばらく持つといいなー。
ろうそくと違って、すぐに燃え尽きそうな気もする。
だが、一気に周囲は明るくなった。
「領主様、こっちも!」
「こっちにもある!」
どうやらこれは……。
コウモリの死蝋があちこちにあるようだぞ!
まさかここ、コウモリの墓場なのか……?
「よーし、集まれ少年たちよ! これから死蝋を着火しながら歩く!」
「酸素が心配ですねえ」
「酸素ってなんだ……?」
いつもゼータは、妙なことを言うなあ。
だが、ちょっと息苦しくなってきた気がする。
「空気の流れが淀んでいますね。これ以上死蝋を燃やすのは辞めたほうがいいと思います。見える範囲に石碑があれば……。みなさーん! 目を凝らしてー! 村にもあった石碑! 似た感じのがどこかにないですかー!」
「おー!」
「探す!」
「どこだー!」
少年たちがキョロキョロしている。
彼らの目をあてにさせてもらおう。
その間に、俺は息苦しいのを解消だな。
外から風を吹き込ませればいいのだ。
「ソードクッションを連続しながら……直接向こうの風をこちらに持ってくる……!」
遠くに剣圧を放つことで、それに反発して風が洞窟内に吹き込んでくる。
死蝋の炎が大きくなった。
さらに、ソードクッション!
どんどん風を送り込むぞ!
洞窟の中が明々と照らされた。
「あった! あそこだ!!」
少年の一人が、洞窟の先を指さす。
そこには……。
「あー、辛うじて見えた! あれか? あれなのか? 鍾乳石みたいなのに飲み込まれているあれが石碑か! よし、行くぞ!」
「おじさま! 死蝋が燃え尽き始めてます! ラストチャンスですよー!」
「任せろ、ダッシュだ!」
バタバタ走ると、少年たちもわいわいとついてきた。
どんどんと死蝋が燃え尽きて暗くなる中、俺は鍾乳石を「おりゃ!」と砕いた。
「うーん、これが出来上がるまでに数百年掛かったでしょうから、もったいなくはあるんですが! 行きましょう! ミーユ・カム・ユーダビン! 石碑よ、目覚めよ!
!」
ゼータの手が光り輝いた。
そこから伸びた光が、石碑に注がれる。
石碑もまた光り始めた。
周囲の洞窟が振動を始め、崩れていくぞ。
これは……洞窟ではなく、もっと他の何かに変わるのではないか!?
「少年たち、俺にしがみつけ!! しがみつかないと死ぬぞ!!」
「うわあーっ!!」
「何がおきるんだー!?」
「ひいー!」
小さいの三人をくっつけた俺とゼータの前で、洞窟がその姿を変えていくのだ。
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