第43話 区画というのものを作ったほうがいいか?
本日は新たな住民たちも加わり、次々に掘っ立て小屋を作る作業だ。
そもそも、この島に掘っ立て小屋ではない建物はない。
俺の住まいがちょっとマシなくらいだ。
隙間は粘土で埋めて、雨と風を凌ぐのだ。
おっと、ぱらぱら雨が降ってきた。
徐々に雨足が強まる。
みんながわあわあ言いながら物陰に隠れた。
井戸があるから、雨水がそこまでありがたくはない。
この島のちょっと変わってるところだな。
だが、人口も増えることだし、雨水を飲水として利用する術も考えておいたほうがいいだろう。
井戸一個だと限界があるからね。
「しかし毎度ながら凄まじい雨だな。辺りが暗くなるし、すぐに分かるのがいいんだが……。こりゃ、なんなんだ」
「王国より遥かに北方の地に降り注ぐ、スコールというものでしょう」
「知っているのかジムニ!? いや、これは確か俺も知ってる名前だ。北方にはアホみたいに暑い地域があり、春も秋も冬もない。一年中が夏で、蒸し暑い場所があるという……。まさか」
「そのまさかです。恐らくここは、王国から七日間北上し、さらに海を七日間北上した場所にある……北方の島なのでしょう」
「なーるほどなあ……!! 俺は書物にあった北国に来ていたんだな!」
激しい雨が屋根を叩くように降り注ぐ。
こいつのお陰で、屋根は定期的に粘土を塗ったりして修繕しないと保たないそうだ。
いやはや、厄介だ。
建築技術を発展させないと、落ち着いて暮らしてられないな。
「ほわわわわ」
「大丈夫ですよラビハちゃん! ただ凄まじい雨というだけですから!」
「こんなとんでもない量の雨、知らない……。ラビハ知らない~!」
ラビハは暗殺者だから、想定外の事があると警戒心が高まるんだろうな。
「王国があった大陸は、まず王国があるだろ? 東に帝国があるだろ? そこから北に行くと砂漠があるんだ。死の砂漠だな。だから海辺を巡っていくと……他の国々がある。恐らくこの島は、そこよりもさらにずっと北にあるんだろう」
十神将は、どうやら大陸の外に出たことはなかったらしい。
というか、大陸で仕事をしてるんだから外に出る必要はあるまい。
さて、スコールも収まってきた。
村の中をブルーキウイたちが駆け回っており、空に向かって口を開いている。
こいつら、マシになってきたスコールを飲んで喉を潤す習慣が!?
あるんだろうな。
「はいはい、みんな出てきて出てきて!! 雨は止んだよー!!」
「ほんとに?」
「とんでもない雨だったな……」
「なんだったんだあれは……」
怯えた様子で新住民たちが出てきた。
モネが彼らを先導している。
他の領民は当たり前みたいな顔で、作業を再開する。
「ラビハ! 君が手伝いに行かないと作業の進捗が遅いのだ!」
「わ、分かったー!」
「うおー、私も応援しにいきますよー! 応援だけですけどー!」
ラビハの後を追って、ゼータがトテトテ走っていった。
バイタリティに溢れている幼女だ。
建築されていく家々を眺めていると、明らかに村にスペースが無くなってきた事が分かる。
ここは直系1ティターンはあるはずなんだがなあ。
200人の住人が住む家の数は、およそ30軒。
デカめの掘っ立て小屋で、みんな雑魚寝が普通だ。
さらに料理スペースで屋根だけがあるところが一つ。
井戸があり、港に当たる桟橋とその周辺。
ちょいちょい屋根があるのは、洗濯物や干物を干すスペース。
ここに、昨日でかい掘っ立て小屋を仮組みした。
2軒な。
これらがある場所に、新住民が住めるちゃんとした家を建てようというのだ。
手狭になってくるよなあ。
1ティターンの直系があるとは言っても、半分は岸壁であったり、材木や薪を切り出すための森であったりするわけだし。
この森、なんと生き物がいない。
木だけが生えているのだ。
で、古くなった木が倒れると、これが材木や薪の素材になる。
枝が落ちているのもそうだな。
この島には、木を切り倒すような斧を作る技術がない。
石を割って作るナイフや、大きめの包丁くらいのものだ。
この刃物を色々工夫して材木を割り、削ぎ、使ってるんだよなあ。
非効率的だ。
技術を発展させたい……!
だがその方法が分からない。
しかしジムニが今、本を読み解いているから、ここから技術の発展も生まれてくるのではあるまいか。
「殿下。私が思うに……区画を分けた方がいいでしょうな」
「ほう、区画とな」
「今までは、私が流れ着いたときのままでやっておりましたが……。今後は番号を付け、ある程度管理したほうがいいと思いますぞ。人の数が増えるとはそういうことです」
「なるほど。それは俺の仕事っぽいな」
「はい。殿下が決めたことなら誰も文句を言いますまい。そしてこれは仕事の割り振りにも関係してきますな。殿下。人材を徐々にスカウトし、仕事を割り振るのです」
「そういうことになるか。そうか、そうか……。とりあえず、新住民代表所ジェイドと、それと今の住民からはモネを取り立てる感じかな」
「ええ、それがよろしいかと。モネは才覚のある娘ですからな。今まで他の住民と同じように過ごしてきましたが、与えるべき役割があるかと」
「分かった。ちょっと計画を立てていこう。おーい、誰か粘土板くれ!」
俺が声を掛けたら、子どもが走ってきた。
「領主様どうぞ!」
「ありがとう。こいつはいい粘土板だなー」
粘土板は土から掘り出して、ペタペタと固めて作る。
昔は文字を書くために粘土を使うなどもったいないと言われていたのだが、ジムニがその人柄で勉学の必要性を伝え、今では記録媒体として使われるようになったのだ。
ちょっと干しておけば長期保存できるしな。
ジムニの家の半分は、粘土板で埋まってるらしい。
すごくない?
今度見せてね。
次々に立てられていく小屋を見ながら、俺はさらに忙しくなりそうだと唸るのだった。
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