第39話 魔人奴隷商? 知らん知らん
堅焼きパンに卵を乗せて食べた。
美味い。
これはパワーフードだ。
「おじさまのパン大きくないですか?」
「体が大きい分食べる量も多いのだ」
「ハイザットさん、村で一番大きいもんね」
「あたしも村で一番背が高かったんですけど、ハイザット様が来たときはほんとびっくりしたなあ」
そう。
村の大人たちは幼い頃の栄養不良からか、あまり体が大きくないのだ。
なので、188ティタほどの俺が最大身長ということになる。
これから伸ばしていくぞ、領民の平均身長!
「さて……飯を食い終わったが……。返答がないな。そして奴隷船は動かないか」
「旦那はとんでもねえ胆力だぜ……。というか、あいつらを一蹴しちまったもんな。どうするんだい、旦那。小さな国なら、あれに停泊されただけで国民を丸ごと奴隷として連れて行かれて干からびちまうほどだぜ」
「そんな怪異が世の中にはいたのか。世界は広いなあ。だがあまり文化的ではないし、ときめかないな」
ジムニが本を開く。
「かつて世の半分は、人ならざる超常の者、魔人が治めていたと言われておりますな。だが、魔人たちは強いが故に驕り、人を見下して油断して打ち倒されました。その数は減じましたが、まだ生きながらえている魔人もいるというわけですな。魔人奴隷商ブラーン、私も聞いたことがございます」
「ジムニは本当に物知りだなあ……」
「そて、殿下。どうなさいますかな?」
「奴隷船がどかないと自由に漁もできないからな。どけと言ってこよう。応じないようなら力ずくでぶっ飛ばしてくる」
「いってらっしゃいませ」
「お、おいおいジムニさん、いいのかよ!? いかに旦那が強くても、相手は何百年も生きている恐ろしい魔人商人だぜ!? ……いや、なんかいけそうな気もする……」
「うむ、相手が何なのか知らないが、領主を蔑ろにする侵入者は罰さねばならない。うおーっ、領主らしいことできるぞー! やるぞ! 領地を守るぞー!」
「おじさまのテンションが高いです! 私も行きましょうー」
おっ、ゼータが背中にくっついた。
「ゼータの出番は無いと思うのだが?」
「あら、分からないですよ? さあさ、行きましょう行きましょう! 食べてすぐ運動したら、太りにくいらしいですよ」
「そうなの? じゃあ行くかあ。ソードクッション!」
その場から、空中高く飛び上がる。
後方に剣圧のクッションを作り、さらに足元にクッションを次々に作り……。
ポンポンと奴隷船までを渡っていく。
おや?
奴隷船からたくさんの小舟が降りてくるところだ。
そこには青い肌の男たちがぎっしり乗っている。
さては勝手に上陸するつもりだな?
「させるかよ! 急速落下!!」
「おじさまー!? いきなり落ちるのはー!!」
下では、落ちてくる俺を見て、青い肌の連中がわあわあ騒いでいる。
みんな爪を伸ばしたり、矢を構えたりして攻撃の態勢に入ったようだ。
なんと悠長なのだ。
俺は既に剣を抜いているというのに。
剣を抜いたら、相手を活かしておく必要はないよな。
「放鷹!」
雑に剣風を叩きつけた。
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
「うわーっ!! 嵐が叩き込まれたみたいです! 一気に小舟が乗っていた人たちがまとめてズタズタになりましたー!!」
「うむ。勝手に上陸することは許さんからな。俺の許可を取ってから上陸して欲しい」
「おじさま、その辺りこだわりますよねー。あ、甲板が近づいてきました。武器を構えた方々でいっぱいですよ。撃ってきました!」
「はいはい、雨燕!」
究極の後の先、雨燕。
ということで、放たれた矢やおかしな飛来する弾よりも速く、斬撃が届いた。
それが迎撃に出ていた連中を連続で切断する。
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
ストンっと甲板に降り立つ俺だ。
「死屍累々ですねえ……。あ、舵輪発見! これ、魔法の力で動いてるみたいです」
「そうなの? もしかして、そうしたらゼータが介入できる?」
「支配権奪っておきますね。ブラウ・ブライ・ノブライト!」
ゼータが手から黄色い光を放った。
それが舵輪を包み込む。
一瞬、船がガクガク震えた。
抵抗しているような感じだったが……。
「やめろーっ!! サイム号に手を付けようとするなーっ!!」
さっき俺がふっとばした男が出てきた。
ゼータに向かって手を伸ばしていたので、俺はそいつに向かって斬撃を飛ばして両断しておいた。
「ウグワーッ!?」
「支配権を奪取しました!」
「えらい。じゃあ船は沈めちゃおうね」
魔人だかなんだか知らないが、俺の領地に勝手に入ろうとした連中は処した。
無断上陸を企んだり、いきなり武器を向けたんだから仕方ないぞ。
地獄で反省するように。
「おお……なんということだ……!! わしの……わしのかわいい手下どもが……!!」
しわがれた声が響いた。
振り返ると、全身に装飾品をまとった300ティタはある巨漢が立っている。
背後にある船室から現れたようだな。
「お前がやったのか。お前、わしを魔人奴隷商ブラーンと知っての」
「ここは俺の領地であり、領海だ! いつまでも退去しないから強硬手段を取りに来たぞ。よしゼータ、強硬手段執行! 船をへし折って沈めるんだ!!」
「はーい、おじさま!」
「なんだと!? やめろ! やめろーっ! この船にはわしの商売道具の奴隷どもが男と女合わせて40人も……」
「なにーっ!! ゼータ、執行ストップ!」
「はいおじさま。どうしたんです?」
「40人ほど領民が増えるぞ」
「まあ!」
「なんだと……!?」
ブラーンが信じられない物を見るように、目を見開いた。
「お前は、とんでもない馬鹿なのか……? それとも、わしには理解もできぬ化物なのか……? まあいい! わしはお前を許すつもりなどない! わしの手下を殺した報いを受けるがいい!」
ブラーンの胴体が大きく開いた。
それは巨大な口だ。
口の中から激しく燃え盛る真っ黒な炎が見える。
「焼き尽くせ、ヘルファイア……!!」
「俺の領地から出ていくがいい! 放鷹!」
「ウグワーッ!!」
次の瞬間、俺の放鷹がヘルファイアとかいう良く分からないものとブラーンごと、奴隷船の上半分を消し飛ばした。
ブラーンは滅びた。
「おじさま、あまりにも身も蓋もない」
「どうでもいいことはサッサと終わらせる主義なんだ。それよりも、船底に40人だぞ、40人!! よーし、助けるぞー!! そして領民にしてやるからなー!!」
俺はほくほくで、奴隷船の船底へ向かうのだった。
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