第37話 青い草原解放
青い草原を、いっちょ解放しちゃうかということになった。
今回の主題は穀物を探すことだったからな。
それが果たされた以上、サクッと草原を解放してしまうのがよろしい。
潜んでいた青い蛇はなかなか脅威だったが、俺にとっては脅威でもないし。
彼らの生息地を奪ってしまうのは心苦しい。
だが、ここを手に入れなければ俺たちは穀物を得られないのだ!
「おじさまがまた百面相してますね!」
「ハイザットさんはきっと何か難しいことを考えてる」
おおラビハ!
俺が内心でぶつぶつ言ってるのをフォローしてくれたのは君が初めてだぞ。
付き合いがそれなりに長くなってきているのに、俺にくっついているこの幼女はまったく察してくれなくてなあ。
「なーんですか、おじさま! その顔はー」
「やめろやめろ、後ろからほっぺを引っ張るな」
こうして緊張感に欠けたまま、青い草原に降り立つ。
「石碑は言われた通りの見た目のを探しておいた。糸で繋げてるから、あとは辿っていくだけ」
「優秀だなー」
戦闘力以上に、ラビハはこの探査能力などが突出している気がする。
開拓にこれ以上無い、心強い仲間だ。
「むふー、褒められた。ラビハはご満悦」
「ラビハちゃん良かったですねー! おじさまは凄く褒めてくるタイプなので、今後も期待してていいですよ!」
「ほんと!? ラビハ頑張る」
「プレッシャーをかけるんじゃありません」
ラビハが張ってくれた糸は、バラカコーンの隙間に隠れて見えにくい。
だが、ラビハにはよく分かるようだ。
すいすいと草原を進んでいく。
時折青い蛇が扁平な体をガバーっと広げて飲み込んでこようとするのだが、いつの間にかそこにはラビハの網が張られていて、蛇はぐるぐる巻きになって転がることになる。
「用意周到、そして平和的だ……。俺の場合、迎撃したら即ち死になることが多いからな。俺の反撃は威力があまりにも高すぎるんだ」
「一人だけ戦闘力がバグってますからね」
「バグ……? なんだそれは?」
ゼータはちょこちょこ、不思議な言葉を使うな。
彼女が生きていた時代の言葉なんだろう。
記憶はまだまだ曖昧らしいから、ゼータとしても言葉の深い意味とかは分からないことも多いようだ。
「ついた!」
「おっと! もうか! なーるほど、バラカコーンが密集して石碑を隠している。糸を伸ばして隙間から探ったの? 凄いなー」
「むふー」
得意げなラビハなのだった。
いや、本当に優秀だからね。
「ではバラカコーンを切り飛ばすのはもったいないので、引っこ抜いていこう。ラビハとゼータはそっちから。俺はこっちから」
「はーい! ラビハちゃんやりますよー!」
「やろうやろう!」
周囲のコーンを次々に引っこ抜く。
比較的非力な女子チームは、ラビハの糸を活かしたてこの原理みたいなので引っこ抜いているようだ。
負けないぞ。
俺は腕力だけで引っこ抜く。
「おらーっ!」
スポーン!
「力押しでも何気に誰にも負けたことはないからな。うらーっ!」
スポンスポン抜いていたら、石碑がはっきりと見えてきた。
「おじさま、定位置!」
「おう!」
俺がちょっとかがむと、ラビハの肩の上に乗っていたゼータがピョーンとジャンプしてきた。
空中でくるっと回って、俺の背中にがしーんとくっつく。
腕を石碑目掛けて伸ばしたゼータは、呪文の前にラビハに注意勧告!
「これから地形が物凄く変わります! ラビハちゃんはいつでも回避できるように注意深くしていてくださいねー!」
「分かった! 繭玉展開!」
ラビハが取り出した糸のボールみたいなものが広がり、彼女の手足の間で幕のような形に変化した。
おお、羽ばたきながら上昇する!
ラビハは本当に飛べるんだな。
応用力が高すぎないか、あの糸使いの能力。
「ミーユ・カム・ユーダビン! 石碑よ、目覚めよ!」
俺がよそ見している間に、石碑の力が目覚める!
大地が振動を始め、草原の中に歩きやすいような通路が出現した。
ここからどんな変化が!?
と思ってじっと見ていたら、それしか変化しない。
青い蛇たちが大慌てで、この地域の外に逃げていくところだった。
「何も変わってなーい」
ラビハが降りてきてそんな事を言った。
拍子抜けだよなあ。
「私もびっくりしました! この土地は既に完成形に近かったのですね。そしてこのまま、ずっと形を保ってたんですねえ」
「住んでいる生き物があの蛇だったから、コーンは進化したり変化したりする必要も無かったのかもな」
そんな事を言っていたら、見覚えのある生き物がコーンをパクパクついばんでいる。
あ、あれは!!
ブルーキウイ!!
青い草原では彼らも保護色になるだろう。
そして、蛇から逃げられる位の速度もある。
バラカコーンを食べるものは、ブルーキウイたちだったのだ。
「うちでは家禽になってる奴らだが、つまみ食いするとなると害鳥にもなりうるかあ……!? いや、だが、石碑で弾かれないということは、ブルーキウイは怪物としては判定されてないということだよな。どういう判断基準で、石碑はその中で生きられる生物を決めているんだろうな……」
謎が残った!
あと、コーンを食っているキウイは食肉にしてしまってもいいんじゃないか?
いやいや、まだ領民には、肉にしていい動物とそうではないものの見分けがつくまい。
ここはルール決めをしていかねばな。
キウイは基本食べないようにし、食肉は別の動物で補う的な。
そもそも、彼らは狩りをしたことがあるのか?
ないだろうなあ……。
それに、色々やっていくには人手を増やさねばならないし。
どこかでどかんと人が増えるイベントでも無いものか。
そんな都合の良いこと、無いだろうなあ……。
「またおじさまが考え込んでます!」
「孤独な時代が長かったから、自分の世界に入るクセがついてるんだよな」
「じゃあ口に出して下さい! 私たちは仲間なんですから、相談に乗りますよ!」
ゼータに言われて、俺はハッとした。
そりゃあそうだ!!
「じゃあ、一旦戻ってから相談しよう。いやな、開拓すればするだけ、やらなくちゃいけないことややりたいことが出てくるんだよ……」
青い草原は、バラカコーン畑になった。
新たな人の領域を開拓した俺たちは、またターミナルへと戻っていくのだった。
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