第34話 いつもの持ち帰り案件
「集まってきてる。蛇、たくさん感知したよハイザットさん」
「おじさま! 無駄な殺生はいけません。危険な怪物と言えど命なので、虐殺はやめておきましょうね!」
「ゼータは俺の殺傷能力の方を危惧しているな……。まあその通りだと思うけど。どれ、では草を数本、根本から刈り取って持ち帰るとするか。その前にラビハ、耳を塞いでおくように」
「? ラビハ疑問」
「ラビハちゃん、おじさまの言う通りにするんです! ヤバいですよーっ!」
「分かった!」
素直にラビハが耳をふさいだところで、ソードクラップ!
音圧で、周囲一帯半ティタンの草原が波紋状に揺れ動いた。
「あわわーっ!!」
ラビハの悲鳴が聞こえ、あちこちで扁平な蛇が起き上がってビクンビクン痙攣している。
よし、今だ。
素早く草を刈り取ると、抱え込む。
「ラビハも一房抱えるんだ。なに? 音の余波で耳があまり聞こえない? 抱えるんだ。抱える!」
ジェスチャーで示して草の束を抱えさせた後、一緒に撤退することになった。
転送装置を抜けてターミナルに戻ったところで、ラビハがばたーんと倒れた。
「あっ、ラビハちゃん! ハイザット様何してるんですかー! 無理させたでしょー!」
モネが猛抗議!
なんと人聞きの悪い。
「いいか? 俺はソードクラップで怪物たちを怯ませただけだ」
「あれを使ったんですか!? ハイザット様の技はどれもこれも同行者に優しくないです!」
「うむ、事前説明をすべきだったな。だがラビハがいたお陰で、多めに植物を持って帰れたんだ。これだ」
青い草をその場に放り出す。
かなり長い草の根本が大きく膨れ上がり、そこから真っ白なつぶつぶが顔を覗かせている。
茎の皮が剥けて、その中に芯があるようだ。
そして芯を規則正しく取り巻くつぶつぶこそが、穀物なのではないか。
俺はそう睨んでいる。
「ややっ、殿下が戻られましたな」
子どもたちと一緒にキウイの世話をしていたジムニがやって来た。
「私がラビハちゃんの看病をするので、その間におじさまたちは研究をするといいのです」
「助かるー」
ラビハはゼータに任せよう。
隠密を旨とする暗殺者的に、大きな音はショッキングだっただろうからな。
さて、村で使われている石のナイフ。
これで茎を切り開くと、円筒形に白いつぶつぶゾーンが取れた。
削ぎ落としていくと……。
おお、みずみずしい粒がザルにこぼれ落ちる。
このザルもエウゴ菜の茎で編まれたものだ。
エウゴ菜、万能すぎるだろう。
「どれどれ……? ふんふん。あ、これ、甘い香りがしますよ」
モネが早速一粒手にとって、匂いを確かめている。
「ということは、匂い方面はいいわけか。ちょっと毒見してもらっていいか?」
「はいはい。んー。ちょっとカリッとしてて、固いかも。これは熱を通したほうがいいかもですね。あ、でも味は悪くないです。あまり濃くなくて、ほんのり甘くて。毒は無いですね、これは」
「ほうほう……」
毒がなく、食味のいい穀物。
それがよくぞ自然環境で存在してこれたものだ。
「殿下、もしやこの植物、様々な獣が食い荒らしてはおりませなんだか?」
「いや、俺が見た限りでは全くの手つかずだった」
「なるほど……。ということは、この穀物の周辺に肉食性の怪物が生息してはおりませんでしたかな?」
「いた! よく分かるな」
ジムニがふーむと唸った。
「それは共生関係が生まれているのでしょうな。植物の実を求めてやって来る動物を、怪物が狩る。植物は守られつつ、恐らくは近くを通過する怪物に実をなすりつけたりなどして、それを運ばせる。そういうものではないですかな」
「あー、なるほど!」
あの蛇と、この青い穀物は互いに持ちつ持たれつだったわけか!
この実は食べられるためではなく、獲物となる動物を寄り付かせるため。
そして規則正しく並んでいる実は、青い蛇が体をこすりつけるように通過すると、その体に張り付いて離れたところへと運ばれる。
自然環境が生まれている!
そんな自然をこれから俺とゼータでぶっ壊すわけだが。
「よし、じゃあ早速この穀物を煮てみるか。その前に名前が無いのは困るな」
「そうですな……。確か、書物ではこのような規則的に実をつける物をコーンと呼んでおりました。そして殿下がおられぬ間、さらに解読を進めましてな。あの青い草原は、バラカ草原というのです。ですからこれは、バラカコーンと言うことになるでしょう」
「バラカコーンか! なんか独特の響きだな」
こうして料理が始まった。
料理となると、奥さんチームがやって来る。
大きな鍋にバラカコーンを放り込み、わいわい言いながら水で煮ていく。
適時塩を加えたりな。
海に囲まれているから、塩だけは潤沢に採れるんだ。
ぐつぐつ煮える、なんともいい香りが漂ってきた。
バラカコーンが一回り大きく膨らんでるな。
「くんくん……いい匂いにつられて、ラビハ覚醒……」
「おっ、復活した」
「ラビハちゃんも私も食いしん坊ですからねー」
ゼータとラビハがお皿を用意し、もう食べる態勢である。
よーし、では初回の実食はプレーンに行ってみるか。
粒一つあたりの大きさは、3ティタ四方。
形は角の取れた四角形。
一つの草からは、これが何百も採れる。
なかなか期待できそうじゃないか……?
ずらり並んだ俺たちと奥さんたち。
「ではいただこう。どーれ」
パクリと口に放り込む。
ほう!
みずみずしい歯ごたえ。
野菜のようだが、ほのかな甘みがあり……なんというか数を食べていると腹に溜まっていく感覚がある。
これはいい。
「煮たら美味しい。元のままだと何か料理できないかな。あたしは王国のパンが食べたいんだけど……」
「パン……パンか……!! あ、つまり元のままの実を潰して粉にして、パンにできたりはしないか!?」
「おじさまの閃き、なんだか美味しそうな気配を感じるのです!」
任せろ。
実行力はないから、アイデアだけだがな。
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