第25話 いざ、海へ
王都に顔が利き、何かあっても力ずくでどうにでもなる俺。
アガマス号を動かすために必須なゼータ。
今回の主役であるジムニ。
そしてついでにモネ。
この四人を乗組員として、アガマス号は出航した。
七日分の食料は、村の保存食をいただいてきたぞ。
最近のルナス領はたくさんの食材が採れるお陰で、保存食に頼らなくても良くなってきているのだ。
まあ、それでもいざという時の備えとして、領民たちは新たな保存食開発に余念がないのだが。
領民たちに見送られる。
「領主様ー! 必ず戻ってきて下さいよー!」
「領主様がいないと始まらないんですからー!」
「一ヶ月は長いなあー!」
俺は乗り込み口から身を乗り出し、手を振った。
「少し待っていてくれ! 絶対に帰ってくるからな! 本を持ってくるだけだから!」
子どもたちも集まり、
「まだお前に勝ってないんだ! 絶対帰ってこいよゼータ!」
「勝ち逃げすんなー!」
ゼータは俺の背中をするする登ってきて、
「私が帰ってくるまでの間に力を付けておいて下さい!!」
なんかノリが違うな……。
チャンピオンの風格を感じる。
こうして、アガマス号は島をあとにした。
「それじゃあ、俺らについて来てくれ! 島には方位磁針も無かったし、それにルナス島の近くは、針が狂うんだ。夜にならない限り、方向は分からねえ。だから、船乗りが先導をするってわけだ」
「頼りにしてるぞ、リック船長! よし、モネ、操舵してくれ」
「あたしこれ初めてなんですけど!?」
「私が教えますよー」
「ほっほっほ、愉快だのう! この年になって、こんな面白いことが起きるとは思ってもおらんかった!」
不安げなモネと、そんな彼女の背中をよじ登るゼータ。
ジムニはとても楽しげだ。
俺は乗り込み口から体を出して、船員たちの話を聞いたりする。
「殿下ー! 釣りなんかどうですかね!」
「いいな、やろう。新鮮な魚があった方がテンションが上がるもんな」
船を動かしながら釣り糸を垂らすのだが、そうすると泳ぎ続けるタイプの魚が釣れる。
ちょっと抵抗するので、水中に飛燕を飛ばして海を切り裂き、空中に浮かせてから一気に手繰り寄せる。
「うわーっ! 殿下、そりゃ反則だ! もう釣りじゃねえよ!」
「この船は構造上、一人しか外に出られないんだ。そうするとタモ網でキャッチすることもできない……。これが合理的なやり方だとは思わんかね」
「殿下、今片手で釣り竿操りながら、手刀で斬撃飛ばしただろ!? 人間業じゃないの前提の釣り方は反則だって言ってんですよー!!」
ディア兄弟はうるさいなあ。
釣れれば正義であろうが。
こうして釣れた魚はソードティンダーでこんがり焼き、俺たちの食卓に登った。
名前は知らない魚だが、美味い。
高速で泳いでる魚には毒は無いのだ。
本で読んだ。
「うむ、その通りです殿下。素早く泳ぐが故に、身に毒を蓄える必要がないのですな」
ジムニがうなずきながら、焼き魚にかぶりつくのだった。
途中途中、モネとジムニ、俺と操舵手を交代しながら、ひたすらにアガマス号は海を走った。
いい感じで風も吹いてきており、ラディッシュ号も快速で飛ばしている。
こちらはずっと付いて行かねばならないのだ。
もう、必死。
ようやく夜になり、並べてロープで繋いだ。
海のど真ん中で停泊ということになる。
船内にはエウゴ菜の茎の繊維を編んで作った布を敷き詰め、ごろ寝できるようになっている。
ちなみに、ルナス領の衣服も全てエウゴ菜の繊維でできているのだ。
全てがエウゴ菜で賄われているな。
王国で、何かしら買ってきてやるからな。
「うう、揺れる……。眠れない……」
モネがむにゃむにゃ言っているので、ゼータが「仕方ないですねえ」とかお姉さんヅラをしに行った。
世話焼きだよなあ。
子守唄歌ってるな!
聞いていると眠くなる歌だ……。
俺が先に寝てしまった。
朝になる。
保存食で朝食を摂った後、また本日も航海だ。
これが七日間続く。
後半では、モネもすっかり揺れに慣れ、すぐに寝てしまうようになった。
これで、陸に上がると違和感を覚えるようになるからな……。
なお、ジムニは寝ると時折、目を開けて口をカッと開いたまま寝ているので、死んでるんじゃないかと心配になる。
怖い寝方をしないで欲しい。
最終日近く、アースユニ王国の漁船と行き違った。
船長が挨拶をしている。
俺も挨拶を返した。
すると、漁師がギョッとする。
「な、なんだそれ!?」
「俺が発見した大昔の船らしいぞ」
「そ、そうなのか……。あれ……? あんたの顔、どこかで見たことがあるような……」
いかん!
この漁師、俺が島流しになる時に降りた港町の人間か!
「気のせいだぞ」
「そうかな……そうかも」
首を傾げながら、漁師たちは行ってしまった。
ふう、誤魔化しきった。
船長とディア兄弟が、手を叩いて大笑いしていた。
そんなに面白かったか?
翌日。
ついに、アースユニ王国の港が見えてきた。
ラディッシュ号はアガマス号に横付けし……。
「よーし、じゃあ殿下、俺たちを縛ってくれ! 俺たちはあんたに脅されて言う事を聞いていた! そういう方向で行くからよ!」
「分かった。だが縛ると言っても加減がな……」
「絞め殺さないでくれよ!?」
「それじゃ、あたしが……」
モネがするすると、いい感じで三人を縛り上げてくれた。
頼れる~。
「おじさまは無か破壊かの二択しか力加減が無いのですか?」
「もうちょっと細やかな事ができるとは思うんだが、やってこなかったからなあ……」
俺の言葉を聞いて、ディア兄弟が青くなるのだった。
こうして、船はアースユニ王国へ到着!
乗り込み口に封をして……。
「よーし、王国よ、俺は戻ってきたぞ! まあすぐに島に帰るけどな」
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