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島流しにされた第三王子は、遺跡から発掘された幼女と古代文明の島で開拓スローライフする  作者: あけちともあき
書籍を探しに王国へ行く

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第24話 その名はアガマス号

 黄色い船の上に、乗り込み口があった。

 蓋がされていたので、剣でコツコツ叩いてみる。


「開きそうにないな。斬るか?」


「やめて下さいおじさま、壊れちゃいます! ここはいつもの呪文ですよー」


「あー、いつもの! やっぱり、こういうところはゼータじゃないとダメだな。頼むぞ!」


「はい、頼まれました。ブラウ・ブライ・ノブライト!」


「いつもの呪文と違うやつじゃない!?」


 だが、呪文は正しかったらしい。

 ゼータの手のひらがピカピカ輝いたと思ったら、黄色い船の乗り込み口が開いたのだった。

 中に降りてみると、そこは外の光を取り込んでいるようで明るい。


 だだっ広い空間があり、中心にはテーブルみたいなものが突き出していた。

 床は全体的に柔らかめで、このまま寝れるな。

 靴は脱いだほうがいい。


「どれどれ……? ここが操舵のための席か。舵輪がある。だが、どういう動力で動くんだ? 帆はなく、オールもない。謎だ……」


「おじさま、これは言わば、魔法の力で動くんです」


「魔法の力でえ!? また!? この島は不思議なものがいっぱいだなあ……」


「私からするとおじさまの存在もとても不思議ですけど。中に入ったら、構造の記憶が蘇ってきました! こっち! こっちがトイレです!」


「トイレ付いてるんだ……!」


 基本的に出したものを海に落っことす作りなのは、ラディッシュ号と同じだ。

 だが、なんというか……磨かれた陶器のような便器はとても美しい。

 王宮にあるそれよりも良い作りなんじゃないだろうか。


「こちらは海水を真水に変える装置です」


「なんだそれ!? 世界の常識が覆されるぞ!?」


 これを使って水浴びもできるようだ。


「操縦は私じゃないとできないみたいです。よいしょ」


 席によじ登るゼータ。

 ちょこんと座ってから、船に向かって呪文を唱えた。


「ブラウ・ブライ・ノブライト! 船よ、動け!」


 すると……この黄色い船の色合いは、内側からも黄色く見えるのだが、それが真っ白に変わった。

 そして振動があり、動き出す。

 なんだこれはー!


 帆も漕ぎ手も無いのに、ひとりでに動き出した!


「一度動き出したら、方向決めはおじさまがやって下さい!」


「あ、そこは俺なんだ。どれどれ」


 ゼータがどいて、席に俺が座った。

 舵輪を軽く回すと、船の方向が変わる。


「おおーっ、こりゃ凄い。なんだか分からないが、俺の思うがままに船が動く! おっ、入江を出たぞ。このままどこまでも進んでいけそうだ。だが俺は慎重なんだ。陸沿いに移動して、村に戻るぞ」


「おじさま、あれだけ強大な力を持ちながらも絶対に慢心しませんよね」


「俺の自認は常識的文化人だからな」


「おじさまのいつもの一般人気取りがでましたね」


「なんだって! なんてことを言うんだ、人を化物みたいに」


 こうして船は島をぐるりと巡る。

 結構な速度ではないだろうか?

 俺が山野を小走りで移動するくらいの速さはある。


 感覚的に、ラディッシュ号が風を受けているときの速度に近い。

 ということは、船としてはかなりの速さを常に出せることになるだろう。


 しかし、こうやって島の周囲を巡ってみると、断崖絶壁ばかりだ。

 時折、洞穴が口を開けていたりするのだが……。

 これらの奥はまたとんでもない魔境になっていることであろう。


 さあ、村が見えてきた。

 ラディッシュ号と並ぶようにして、桟橋につけたら村人たちが集まってきた。


 物珍しそうに眺めている。

 怖いもの知らずだな。


 俺とゼータがひょこっと出てきたら、みんなワーッと歓声をあげた。


「領主様が不思議な船を持ってきたぞ!」


「なんだありゃあ」


「真っ白でツルッとした船だ。あっ、黄色くなった」


 他に物を知らないから、形容詞がないよな。

 リック船長とディア兄弟もやって来て呆然とした。


「な、なんだこりゃ……。見たことも聞いたことも……いや、確かこいつは、遥か西の海で商船団が遭遇したっていう、玉の船か……!?」


 何か、それっぽい伝承があったようだ。

 俺が船から降りようとすると、ゼータがぴょんと背中に張り付いてきた。


「新しい転送装置を使って飛んだ先にあったんだ。こいつを使って、俺たちは王国まで行こうと思う。だが船長、俺は目的地まで航行する手段を知らない。そして船長は俺を島の外に連れて行くわけにはいかない。そこでだ」


「殿下、何かろくでもねえことを考えてるな……?」


「ふふふ、船長はたまたま王国に戻ろうと移動していたら、いつの間にかこの鳥型の船に後をつけられていた。船は速く、撒くこともできなかったので、王国までついてきてしまった……というシチュエーションで行こう」


「なるほどなあ! そりゃあいい。俺が殿下を案内して連れてきたなんて、そんな事は誰も証明できないもんな!」


 俺とリック船長で、ガッハッハと笑い合う。

 完璧な作戦である。

 そこにモネとジムニもやって来た。


「あっ、つるつるしてかわいい! 鳥の顔もついてる! なんですこれ?」


「私がおじさまと一緒に見つけた船なのですよ!」


「船!? これが!?」


「おじさまがジムニさんを連れて、王都へ本を取りに行くそうなんです。そのための船です!」


「へえー、すっごい!」


「モネさんも行きましょう!」


「えっ!? あたしも!?」


 ジムニはと言うと、興味深そうにこの丸い船を見つめている。


「これは……伝承に言う玉船ですな」


「リック船長と同じ事を言ってるな」


「ええ。本にまとめられているのですよ。風も漕ぎ手も無いのに素早く海を動き、その丸い船体には矢も魔法も通じなかった。玉船は新たな大陸への道を示すように、船団の前を進み、やがて人々を新世界へと導いた。その頃の言葉で運命……アガマスと呼ばれていましたな」


「アガマスか。ということは、この船はアガマス号ということだな。喜べジムニ。こいつで本を取りに行けるぞ」


 王都へ乗り込み、ジムニの記憶が薄れる前に本そのものを確保するのだ。

 全ては俺の、文化的領主生活のために!

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
あれ?ハイザットが何も斬ってないw 次回は大破壊で王城がバッサリといくのかw しかし妹姫はどうやってハイザットを抑えたのか…。 新王は小者っぽいが、妹姫は純粋善なのか腹黒なのか。遭遇あるのかな。
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