第14話 卵で料理を作るのだ
巨大な卵が、取れること取れること。
ブルーキウイ、食わせれば食わせるだけ卵を産むのだった。
なんだこの生き物。
「普通の生き物ではなく、怪物の類なのでしょうね。そして繁殖のために卵を産んでるわけではないように見えますね」
「ほう、ゼータ嬢ちゃんもそう思うかね。こりゃあ私が思うに、卵に見える形に栄養を蓄えているのだろうな。そしていざとなった時にこの卵から栄養を吸収するのではないかな」
「ゼータとジムニが食事中のキウイをつつきながら真面目な話をしているな……。ほんとにそんなことありえる?」
それにしても、たった数日でキウイは完全に餌付けされてしまったのだった。
卵は合計十個ほど産んだ。
一つ一つが、赤ん坊の頭くらいはある卵なのだ。
「そろそろ、卵料理を作ってもいいのでは? 村の子どもたちに栄養のある料理を食べさせたい!」
「ハイザット様、なんだかんだ言っていい人ですよねえ」
モネが感心している。
君は相変わらずアレだな!
俺じゃなかったら無礼討ちされてるからな!
まあ、俺はそういうの気にしないからね……。
「で、誰か卵の料理の仕方を知っているかな? 俺は御覧の通り王族なので、料理などはしたことがないのだ。知識では知っている。しかし知識だけで動くとろくなことにならない、という教訓もまた知っているので身動きが取れないのだ」
「ハイザット様、日常生活面では理論オンリーなんですねえ」
「王宮で第三王子に料理をやらせる人間がいると思うか? いやいない」
こうして、俺は卵を十個ばかり抱えて村に降りていった。
畑仕事をしていた、料理担当の奥さんたちを招集する。
「奥さん卵だぞーご存知?」
「あらまあ、大きい!」
「たまに水鳥の卵がとれたけど、全部元村長たちが持って行っちゃったからねえ」
「お料理の仕方なんか分からないわ」
なるほど、今は亡き元村長たちは、村が得たわずかな恵みを少人数で独占していたのだな。
それはヘイトが溜まる。
俺が結果的に彼らを全滅させても、むしろスッキリしたくらいの感じで扱われるはずだ。
ここで出てきたのは、俺と一緒に島にやってきた二人の船乗りだった。
アポール・ディアという男で、背が低い方はロベール・ディア。
実は双子だったらしい。
「俺等に任せてくれよ!」
「島の外じゃ、卵をこうして喰うんだぜってやり方を教えてやるよ!」
「おっ、頼れる!」
俺も奥さんたちも、勇ましい二人の登場に拍手喝采だ。
俺は料理の完成した姿は知っているが、その過程をよく知らないからな。
こうして、村で一番大きな鍋が持ってこられ、そこに塩水を入れてから火にかけることになった。
卵がぐつぐつとした湯の中で茹でられていく。
ほうほう、料理とはこうやるのか……。
「エウゴ菜の塩ゆでと同じなのね」
「でもあんなに大きくて分厚いの、どれくらい茹でたらいいのかしら!」
「長いこと茹でないとね」
「日が暮れちゃうわ」
俺もそう思う。
実際、一時間ほど掛かった。
途中で暇になったので、奥さんたちは畑に戻ってしまった。
アポールとロベールは大変決まりが悪そうだ。
ここに残っているのは暇人だけ。
そう、俺である。
「こ……これで完成なんだけど……」
「誰もいねえ」
「よし、俺が奥さんたちを呼んでくる」
畑まで行って、またみんなを呼んできた。
「あら、領主様が直々に声を掛けてくださるなんて!」
「今度の村のリーダーは働き者だわね!」
「それに若いしいい男だし」
「早くモネとくっついて子どもをこさえて欲しいわねー」
なんだか恐ろしいことを言っているぞ。
こうして戻ってきた俺達の前で、得意げなアポールとロベールが卵の殻を割るところだった。
「殻には小さい穴がたくさん空いてるんで、もう塩味がついてんだ」
「あとは割るだけ! こう言う風によ! ……割れねえ」
鍋の縁でコンコンやってもヒビ一つ入らない。
「この! 割れろ! 割れろ!」
ガンガンぶっ叩くアポールとロベール。
割れない。
ついにはナイフを叩きつけ、上から意思でガツガツやる。
それでも殻は割れないのだ!
奥さんたちも面白くなってきたらしく、みんなで棍棒とか刃物を持ってきて、ガンガン殻を叩く。
割れない。
「こんなの食べられないじゃないのさ」
「これが卵料理だっていうの?」
「海鳥の卵はもっと小さかったもんねえ」
奥さんたちに失望の色が漂い始めた。
アポールとロベール、二度目の決まりの悪さ!
「まあ待て待て。俺が割ろう。そこ、十個置いて。置いたね? はい、おりゃ!」
俺が魔剣を一閃すると、全ての殻が真っ二つに切れた。
割ってみて納得。
殻がなかなか分厚い。
半タンほどの厚みあるな。
100タンで1ティタ。1000ティタで1ティタンだ。
このティタンという単位は、かつてティターンという恐ろしく巨大な亜竜がおり、こいつの大きさを基準にしたんだそうだが……。
まあ、そんな事はどうでもいい。
俺と奥さんたちは、卵の一つから実を取り出し、それを分け合って食べてみたのだった。
「おお、塩味が効いてて美味い」
「あら初食感!」
「悪くないわね」
「それになんか栄養がありそう」
「うちの旦那と子どもに食べさせたい!」
概ね好評なようだった。
城で供される卵と比べると、白身も黄身も硬く、端的に茹ですぎではある。
だが、これくらいした方がよく火も通っていて安全だろう。
その後、呼び集められた子どもたちと男どもが、ゆで卵を楽しんだのだった。
村人全員がちょっとずつ食べると、あっという間に無くなってしまうな。
これは、卵を増産できる体制にした方がいいだろう。
エウゴ菜を大量に植え、キウイの数も増やす。
これで行こう。
そしてキウイの世話を専任でやる役割を作るのだ。
なお、卵の殻についてはすぐに解決した。
「熱い湯で熱された殻は、すぐに冷やせばひび割れるのですよ」
「さっすがジムニ、物知りだ……」
このじいさん、俺の右腕にしよう……!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




