第13話 この鳥を分類しよう
俺達が十羽ばかり鳥を連れてきたので、ターミナルにいる村人たちが大騒ぎになった。
「怪物じゃないの?」
「危険はないのかい?」
「肉食だったりしない?」
これらの不安には、賢い幼女ゼータがお答えするのだ。
「彼らはおじさまが破壊したクリーピングヴァインの中にいました。そして真っ先に逃げていましたから、戦うのではなく逃げて生存する種だと考えられます! そしてクリーピングヴァインの一部には食べられた跡がありました。彼らは草食性であると考えられます!」
完璧な理論だ。
俺は感心して拍手した。
そうしたら、俺にしがみついたまま目を回していたモネが、目覚めたのだった。
「ハッ……! い、いつの間にか戻ってきてた! す……すごい音で死ぬかと思った……」
「主に森の危険ではなく、おじさまの技の余波にやられた感じですね」
「それはそうなんだが、一応身内には当たらないように注意してはいるんだぞ」
守らねばならない対象がいるというのは難しいな。
俺は今後のことを考えつつ、十羽の鳥を外に置いた。
みんなヘソ天で転がっている。
そのうちの一羽がカッと目を見開いた。
起きてたぞこいつ!
そして素早く起き上がると、猛スピードで俺から遠ざかろうとし……。
まだ三半規管が回復しきって無かったので、ズザアーッと頭から土にスライディングした。
そこへ、恐れというものを知らぬ村のちびっこが集まってくる。
その手に握られているのは、エウゴ菜だ。
鳥が警戒モードになる。
俺は、青い鳥がちびっこに害を与えないか注視した。
何かあれば、すぐさま俺最速発動の技、雨燕をぶっ放すつもりである。
稲妻の魔法を無詠唱で撃たれた際も、雨燕なら後の先で一方的に潰せるのだ。
なお、隼が出てしまえば一番速く、これは回避されたことが一度もない。
敵に当たった後に音が出るくらいだもんな。
とか考えていたら、エウゴ菜の匂いをくんくん嗅いでいた青い鳥。
パクリと食べたではないか。
おお、凄い勢いで食べているぞ。
どうやら美味いらしい。
他の青い鳥もむくっと起き上がると、エウゴ菜に殺到した。
もりもり食べる。
そしてたくさん食べた後、みんなでダーッと走っていって塔の影に隠れた。
警戒心が強い。
だが森に逃げ去るわけではないらしい。
この鳥、エウゴ菜で餌付けして家禽にできそうだぞ。
「かわいいー」
子どもたちが大変のどかな感想を口にする。
その敵意なく触れる様が、青い鳥たちの警戒心を溶かしているかも知れない。
「おじさま、小さい生き物は私に任せて下さい」
「よし、頼むぞゼータ! 俺は仕留めるのは得意だが生かすのは苦手なんだ」
「おじさま、戦場でしか生きられない存在ですか?」
「文化的な人間であることを自認している」
ゼータがパタパタと走っていき、エウゴ菜を地面にばらまいで上手いこと青い鳥を誘導している。
優秀!
そして大人たちに、鳥が住む鳥舎を作るよう号令をかけている。
村人たちは、謎の幼女とは言え堂に入った指示に、驚きながらも従い始めた。
王の器だ。
「殿下。有言実行で地を走る鳥を連れ帰るとは……流石ですな」
「ああ。荒事が絡んだ仕事なら任せて欲しい。反面、荒事以外はさっぱりなのが悲しい」
「いやいや、自らを守る術を持たぬこの村において、殿下がいらっしゃることは我らにはとても重要です。して、あの鳥は……私が王都にて書物に呼んだ、ブルーキウイ」
「ブルーキウイ!? 知っているのかジムニ!」
「はい。あれらは体の半分ほどもある大きな卵を産む生き物です。大変な大喰らいで、何でも食べますがグルメでもあるそうですな。どうやらエウゴ菜がとても気に入ったようです。たくさん食べると、たくさん大きな卵を産みますぞ」
「体の半分はある卵をたくさん産むのか! どういう身体構造をしているんだ……」
「島の不思議ですな。つまり、王都に残る書籍を書き残した何者かが、この島に滞在していたという記録でもあります。かの作者は人間ではなく、魔人であったとも言われていますな。この恐ろしき環境の島で、人間が生き残ることは叶いませぬゆえ……。我らの村は、その魔人が石碑を蘇らせたところに作られたと考えられます」
「なるほど、人間では生き残れない環境か……。なんと過酷な」
俺がしみじみ呟いたら、モネがじーっと俺を見ているのだった。
「なんだモネ、その視線は。人を化け物でも見るように」
「その環境で縦横無尽に大暴れしてましたよね? ハイザット様、絶対に人間じゃないと思うんですよあたし。魔人じゃないんですか? 本当に人間?」
「人間だぞ!」
ええい、仮にもこの間まで王族だったし、今も現在進行系で島の領主である俺になんという事を言うんだ。
俺じゃなかったら大変だったぞ。
俺だったのでこれくらいの無礼は許そう。
おお、そんな事をやっている間に、ゼータと子どもたちがブルーキウイを石畳の上まで誘い出しているではないか。
もりもりエウゴ菜を食べている。
食べて食べて食べて……。
特に体の大きな丸いキウイがブルブルッと振るえたと思ったら、スポーンと音がして、大きな卵が転げ落ちた。
でかい!
本当にキウイの体の半分の大きさがある。
あれは食いでがあるぞ。
しかもキウイは食べる方を重要視しているのか、誰も卵を見ていない。
今がチャンスである。
俺はズバッと動いて、卵を確保した。
「なんという愚かな鳥たちなのだ……。繁殖よりも食い気とは……。いやいや、これこそ、家禽として理想的なあり方ではないのか! ゼータ、子どもたちよ、任せたぞ! 俺は村の大人たちと協力し、鳥舎を建てることにしよう!」
ターミナルを使った、畑の増産と牧畜計画、本格スタートと言えよう。
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