第12話 家禽になりそうなのはいないか
「モネさんがついてきたのはどうしてでしょう?」
「あたしは毒に強いのと、毒がある味が分かるの。だから村のみんなが食べられるか食べられないか判断できるでしょ」
「なるほどですー」
「それでもこっちは危ないからな。モネは俺の近くを絶対に離れないように」
「はい、頼りにしてますよハイザット様」
俺達がやって来たのは、ターミナルの隣。
そこも森になっているのだが、この辺りで家禽にできそうな鳥がいないか探しに来たのだ。
肉になる家畜を飼うはいいのだが、肉を食べつけてないと腹を壊すかも知れない。
その点、卵は摂取しやすいだろう。
村人に栄養をとらせて、今後の開拓を進めやすくする計画でもあるのだ。
魚とエウゴ菜だけでは元気が出ないからな。
「だけど……本当にターミナルから一歩踏み出したら、魔境って感じになるね……。あたしが知ってる村の外ってこれだわ。ハイザット様から離れたらすぐ死ぬ自信がある……。ねえハイザット様、本当にこんな恐ろしいところを、ゼータちゃんと二人で踏破したんですか? それって異常ですよお?」
「できたんだから仕方ないだろう」
「おじさまは人知を超えた強さを誇りますからね!」
俺は普通の人間なので、あくまで人の範疇の実力だと思うのだが……。
鬱蒼とした森を歩きつつ、時折現れる怪物を飛燕で叩き斬りながら俺は内心で呟いた。
「あんな大きな怪物が出てくるなり一撃で真っ二つに!! に……人間業じゃない!!」
「ばかな。あくまで人間業だぞ」
モネまでゼータみたいなことを言うのだ!
「そんなことより、鳥を探してくれ。できれば飛ばない鳥がいい。餌を自動で食べられることを知ると、途端に大人しく人間に従うようになったりする性質があるとなおいい」
「そんな都合の良い生き物いますぅ?」
モネは疑問の声をあげながらも、俺のオーダーに従って周囲を探っているようだった。
おっと、クリーピングヴァインの仲間が出てきた。
「今回は石碑のことを気にしなくていいからな。放鷹!」
『シュグワーッ!』
一撃で消し飛ばしてやった。
背後にある木々までふっ飛ばした。
やはりこの技は威力が高すぎるな……。
「ひい、ま、魔法!」
「あくまで純粋な技術だ」
「おじさまはあえてそう主張し続けるのですね」
モネとゼータの二人がかりで俺の技を魔法扱いとは!
特に不思議なことは何もしていないだろう。
制御せず、俺の力をそのまま剣圧として一方向に叩きつけてるだけの単純な技だぞ。
とまあ、好き放題言う二人だが、それでもちゃんと俺に頼まれた鳥探しをやっているようだった。
「あ、いた! いました!」
モネが何かを発見する。
それは、破壊されたクリーピングヴァインの中から飛び出したようだった。
「どこだ?」
「あれですあれ! あれ見て!」
モネが俺の脇から乗り出して指さす先。
地面に積み上がった落ち葉や朽ち木の上を駆け抜ける、青い影がいる。
凄い速さだ。
あれが飛ばない鳥か?
それが何羽もいるな。
群れだ。
これは都合がいい。
「鳥を捕縛するぞ。モネ、俺の腰にしがみつけ」
「はい!?」
「君を一人置いていったら死ぬだろう。しがみついてなるべく密着するように。これから跳躍するから」
「は、は、はいっ!! なんだか分かりませんけど、とんでもないことになるのだけは分かりました!」
俺の腰に手を回して、モネが強く抱きついてくる。
「あっ、私のお尻を頭で押さないでくださーい」
「仕方ないでしょー! ここしかしがみつける場所が無いんだから! ゼータちゃんもっと上行って!」
ちょうどいい塩梅で、二人が縦に並んでいるな。
「では行くぞ。エアクッション!」
地面に剣圧を叩きつけると、俺の体が二人を乗せたまま飛び上がった。
そのまま猛烈な勢いで、前方へと跳躍していく。
「ふわーっ」
「ひいーっ」
二人の悲鳴が聞こえた。
俺は一瞬で青い鳥の群れに追いつく。
鳥の見た目は青くて大きいキーウィ。
それが十羽単位で走っている。
大きいとは言え、俺の攻撃を受けたら粉々になるだろう。
だとしたらどうするのか?
ちょうどいい技がある。
ただただ大きな音を立てるにはどうしたらいいかを研究した時期があった。
俺はソードソナーとソードクッションを応用し、高速で剣圧を複数生み出してぶつけ合うことで、破裂音を発生させる技を編み出したのだ。
「ソードクラップ!!」
俺が剣を振った瞬間、辺り一帯に破裂音が鳴り響いた。
隼のそれとは違い、後に残らない一瞬の大音量だ。
これを聞いて、青い鳥たちが一斉につんのめった。
転がって動かなくなる。
よし、失神させた!
「きゅう」
「うーん」
こっちの二人も失神している。
「わ、私は無事ですがあ。おじさま、技の引き出しがあまりにも多くありません?」
「ゼータは頑丈だったか。そうだな、俺はまだまだ大量に剣技を編み出している。これだけで、俺がいかに王都で無為な時間を過ごしたかが分かろうというものだ」
「無為というか、一人の人間がこれだけの魔法みたいな技を作り出してストックしている異常性というか……。あっ、おじさまが袋の中に鳥をどんどん入れてる!」
「こいつらが目覚める前に戻るぞ。モネはしっかり抱きついたまま失神したから良かったな。まあ、今回は彼女の毒耐性なんかが役立つことはなかったが。次は彼女のために役立ててやらないとな」
「おじさま、使わないほうがいいものってたくさんあるんですよ?」
そういうものなのか?
俺は首を傾げつつも、十羽ばかりの青い鳥を確保。
このままターミナルへと帰還することにした。
さて、こいつらは家禽に向いているのか否か……。
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