第11話 やたら増える葉野菜は武器になる
「うおー、すげえことになってる!」
「なんだここ!? あのしょぼくれた村にこんな新しいスペースが!?」
船乗りたちがやって来て驚いている。
そうだ、君等まだいたんだったな。
リック船長とディア兄弟と言うらしい彼らは、島流しになった罪人を、この島に運ぶ仕事をよくやっていたらしい。
とは言っても、せいぜい一年に一人いるかいないか程度。
「俺等からすると、この名も無き村はずーっとあんな感じだったんだ。罪人を送り込んでも、そいつがいることで村が変わることなんか無かった。だが、あんたは違うみたいだな」
リック船長が俺を見る目に尊敬の色が混じっている。
「まあな。たまたま元村長の企てにやられて、よく分からん空間に送り込まれたんだ。だが、そこからが逆転の始まりだったな。そこにいるゼータを拾って、この島の正体を解き明かしつつある」
「ゼータって、あの嬢ちゃんかい? うおっ、自分よりもでかいガキを抱えあげて、放り投げたぞ」
「ウグワーッ」
子どもが土の上でのたうち回っている。
転送装置に近づこうとした子どもを、ゼータが不思議なホールドをかましてから放り投げたのだ。
不思議な技を使うなあ。
「フロントスープレックスですよ、おじさま!」
「案外ゼータはアクティブなんだなあ……」
俺はすっかり感心してしまった。
子供相手なら負けないだろう。
「クソーッ! 新入りが生意気だぞ!」
「やっちまえー!」
子どもたちが次々に襲いかかる。
「ふふふ、あなたたちみたいな細い男の子は相手になりませんよ」
次々に掴んでは投げ飛ばすゼータ。
無双状態だ。
「……あれが、俺が謎の暗闇空間で見つけた神秘の少女だ」
「神秘的って言うにはあまりにもフィジカルじゃねえかなあ……」
「まあまあ。彼女はこの島に施されている、様々な封印みたいなのを解く能力を持っている。で、そこに至るための危険な道のりは、俺が切り開くというわけだ」
「ははあ、殿下とあのお嬢ちゃんで、完璧なコンビが揃っちまったってわけか!」
「すげー」
船員の一人が、青い葉っぱをもしゃもしゃ食べながら感心するのだった。
その葉っぱ、俺を歓迎する宴の時も出てきてたな。
漬物にもなってたし、あらゆるところにあった気がする。
そこにモネが通りかかった。
「あらハイザット様。今日はのんびりなんですね」
「ああ。どうだモネ? ターミナルの空きスペースに、どういう野菜を植えるかは決まったか?」
「はい、もちろん。うちの村と言えば、この葉野菜。エウゴ菜でしょう」
「どこにでも出てくるこの葉っぱ、エウゴ菜って言うのか……」
「うちの村が飢えないのは、エウゴ菜のお陰なんですからね。これ、植えとくだけで勝手に増えるし、収穫してもさらに増えるし、葉っぱを切り取って植えるとそこから増えるんで」
「凄い生命力だ……」
この村の主食みたいになっているらしい。
茎を干したものから出汁が取れるし、葉っぱは刻んで食べてよし、塩漬けにしてよし、煮てよし、干してよし。
これと魚だけで生きているようなものらしい。
ごくたまに、森の入口で怪物の死体があると、これを解体して村は宴状態になる。
そんな感じで彼らは生き延びてきたのだった。
「何をどうやってもどんどん増える、生命力が強すぎる葉野菜か……。これはいいな。こいつはこれから、島を開拓していく上で大きな武器になるぞ」
「武器に!? このエウゴ菜が!? なんでです?」
「おじさまがまた何か思いつきましたね!」
転送装置に近づこうとする子どもたちを一人残らず土の上に打ち倒したゼータが、こっちに走ってきた。
こうして見ていると、普通の子どもにしか見えないのだがなあ。
「ああ。まず、この空きスペースは一面にエウゴ菜を植えることに決定した。勝手にバンバン増える葉野菜だ」
「あー、ありますよね、やたらと生命力が高い植物。食べられる植物で本当に良かったです」
なお、この話を聞いた子どもたちは復活しつつ、
「エウゴ菜飽きたー!」
「それしか喰うもの無いから食べてるけど、他のも食べてみたい」
モネが肩をすくめた。
「船乗りが気まぐれで持ってきた、島の外の食べ物を覚えてしまったんですよねー。ほんと、知らなければずっとエウゴ菜で暮らせてたのに」
これを聞いた船乗りたちがわっはっはと笑った。
まあ、誰にも悪気は無いもんな。
「そこでだお前ら。俺はここで畜産をしたいと考えてる。畜産ってのは、動物を育てて、そいつの乳や卵やらをいただいてこちらの食生活を豊かにしようという活動だな。だが、問題が一つあった。飼われる動物の餌が無いことだ。誰もが満足に食えてない村で、何を食わせたらいいか。これを考えていたのだが……」
「そこでエウゴ菜の出番というわけなんですね、おじさま!」
「そういうことだゼータ! エウゴ菜は人間が食うにはあっさりしてて、体の肉にはなりづらいだろう。だが、世の中には草ばかり食べてるのにその身にたっぷりと肉をつけ、乳や卵を提供する生き物がいる。そいつを飼うんだ」
俺の提案に、いつの間にかやって来ていたジムニが「ふおおおお」と感動しているのだった。
「流石は殿下! 私もその発案は行いましたが、実行能力が無かった。ですが殿下なら実行できますからな!」
「へえー、面白そう! あたしも手伝いまーす!」
モネが挙手した。
今回はありがたく手を借りよう。
子どもたちは、肉や卵が食えるかもということで、ざわついている。
「畜産用の動物の確保は、俺とゼータとモネで行く。子どもたち。お前らはエウゴ菜をたっぷり、この辺りじゅうに植えるんだ。後で腹いっぱい美味いものを食べるためだからな。いいな?」
「分かった!」
「任せて!」
「美味しいもの食べたい!」
わーっと盛り上がる子どもたち。
これを見て微笑むジムニと船乗りたちなのだった。
何というかこの島は、とても健全だな。
領主として、この村のために仕事をするやりがいみたいなものを感じるのだった。
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