第99話「虎が、リーダーの葛藤を知る」
# 虎無双、虎無双。
## 第99話「虎が、リーダーの葛藤を知る」
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ゴン、とした瞳。
その目は覚悟が備わっているようにも
迷いを持っているようにも見える。
男が、
虎を見据えたまま、
仲間たちに、
何か指示を出した。
男「お前たちは、先に、拠点に戻れ」
女「でも、リーダー」
男「いいから、行け」
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仲間たちが、
戸惑いながらも、
その場を離れていった。
残ったのは、
男と、
虎とステラだけだった。
虎「話す気に、なったか」
男「……少しだけなら」
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男が、
近くの岩に、
腰を下ろした。
男「俺は、ダイスケという。ここの、リーダーをやっている」
虎「虎だ」
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ダイスケが、
遠くの火山を、
見つめながら言った。
ダイスケ「お前、さっきの話、どこまで聞いていた」
虎「伝説のケモンガを、目覚めさせる、というところまで」
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ダイスケが、
小さく息を吐いた。
ダイスケ「……もう、止められないんだ」
虎「止められない、とは」
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ダイスケが、
両手で顔を覆った。
ダイスケ「正直に言う。俺は、もう、やめたいと思っている」
虎「……」
虎は、
黙って、
続きを待った。
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ダイスケ「最初は、俺一人の、不満だった。バトルで、勝てない。相棒のケモンガとも、うまくいかない。この島で、居場所がない気がして」
虎「それで、仲間を、集めたのか」
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ダイスケ「同じ思いの奴らが、集まってきた。最初は、ただ、愚痴を、言い合うだけだったんだ」
虎「それが、いつから、こうなった」
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ダイスケ「誰かが、伝説のケモンガの話を、持ち出した。目覚めさせれば、この島の、仕組みそのものを、変えられるって」
ダイスケ「みんな、飛びついた。俺も、その時は、希望に見えた」
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虎(希望が、いつしか、後戻りできない流れに、変わったのか)
虎「今は、違うのか」
ダイスケ「……準備が、進みすぎた。もう、俺一人が、やめようと言っても、誰も、聞かない」
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ダイスケが、
苦しそうに、
続けた。
ダイスケ「みんな、必死なんだ。この島で、認められたいと、思っている。俺が、それを、止める資格なんて、あるのか」
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ステラが、
静かに、
口を開いた。
ステラ「……あなたが、リーダーとして、始めたことです」
ダイスケ「わかっている」
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ダイスケ「わかっているが、今更、俺の一存で、止めることは、できない。みんな、それぞれの、思いを、抱えて、ここまで来た」
虎「その思いは、間違っていないのかもしれない」
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ダイスケが、
虎を見た。
虎「勝てないことに、苦しんでいる。居場所が、ないと、感じている。それ自体は、責められることじゃない」
ダイスケ「……なら」
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虎「だが、伝説のケモンガを、目覚めさせるのは、別の話だ」
ダイスケ「……」
虎「島全体を、巻き込む前に、止めるべきだ」
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ダイスケが、
拳を、
強く握った。
ダイスケ「……止めたい。本当は、ずっと、そう思っていた」
虎「なら」
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ダイスケ「だが、もう、火山の封印は、緩み始めている。仲間たちが、日々、儀式を、進めてきたんだ」
虎「……時間が、ないのか」
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ダイスケが、
うなだれた。
ダイスケ「今夜にも、目覚めるかもしれない」
虎(想像していたより、事態が、進んでいるな)
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その時、
少し離れた場所から、
湯気の立つ、
匂いが漂ってきた。
見ると、
ダイスケが、
小さな鍋を、
持ってきていたらしい。
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ダイスケ「……仲間の分の、飯を、作っていたんだ。話しながらでも、食うか」
虎「もらう」
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ダイスケが、
碗によそって、
渡してくれた。
味噌汁に、
ジャガイモと、
ワカメが、
入っている。
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虎は一口飲んだ。
虎「……」
味噌の塩気に、
ジャガイモのほくほくとした甘みが、
溶け込んでいた。
ワカメの磯の香りが、
それを、
爽やかに引き締めている。
簡素だが、
丁寧に作られた味だった。
虎「……うまい。お前が、作ったのか」
ダイスケ「……仲間の、腹が減っては、動けないからな」
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ステラも一口飲んだ。
ステラ「……優しい味です」
ダイスケ「そうか」
ダイスケが、
少し、
遠い目をした。
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ダイスケ「こういう、飯を作っている時だけ、みんな、笑うんだ。バトルの話も、しない」
虎「……本当は、それで、良かったんじゃないか」
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ダイスケが、
目を閉じた。
ダイスケ「……そうかもしれない。だが、もう、遅い」
虎「まだ、遅くない」
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虎(この男一人では、止められない。だが)
虎(俺たちが、加わればどうだ)
虎「一つ、提案がある」
ダイスケ「……何だ」
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虎「島長と、三人のエリアリーダーに、事情を話す。お前も、一緒に来い」
ダイスケ「……俺が、行っても」
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虎「一人で、抱え込むのは、もう、やめろ」
ダイスケ「……」
ダイスケが、
しばらく、
黙り込んだ。
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ダイスケ「……本当に、間に合うと、思うか」
虎「間に合わせる」
虎(伝説のケモンガが、目覚めるまで、時間がない)
虎(だが、動くしかない)
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ダイスケが、
碗を、
握りしめた。
ダイスケ「……わかった。付き合おう」
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虎とステラ、
そしてダイスケは、
急いで、
島長のもとへ向かう、
準備を始めた。
火山の方角から、
先ほどより、
はっきりとした地響きが、
聞こえてきていた。
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虎(急がないと)
虎は、
モチとハクに、
声をかけた。
虎「行くぞ」
夜空に、
火山の頂が、
かすかに、
ぼうぼうと 赤く光り始めていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「ダイスケさん、本当は、やめたかったんですね」
虎「一人で、抱えすぎていた」
ステラ「味噌汁、優しい味でした」
虎「仲間思いの味だった」
ステラ「火山、いよいよ、動き出しそうです」
虎「急がないといけない」
ステラ「……おおむね、時間との、勝負ですね」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、伝説を呼び覚ます』」
虎「間に合ってくれ」
ステラ「はい。急ぎましょう」




