第100話「虎が、伝説を呼び覚ます」
# 虎無双、虎無双。
## 第100話「虎が、伝説を呼び覚ます」
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島長の館へ向かう道すがら、
ダイスケが荷物から、
おにぎりを取り出した。
ダイスケ「……歩きながらでも、食っておけ」
虎「もらう」
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虎は一口食べた。
虎「……」
塩気だけのシンプルな握り飯だったが、
米の甘みが噛むほどに、
はっきりと出てきた。
急いで用意したものだとわかる、
少し不揃いな形が、
かえって作った人の焦りを、
そのまま伝えてくるようだった。
虎「……うまい。急いで握った感じが、味に出ているな」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、温かみのある味です」
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ダイスケが、
布に包んだものを、
さらに広げた。
キュウリと、
ニンジンのぬか漬けが、
並んでいた。
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ダイスケ「これも、食え。歩きながらでも、いい」
虎はキュウリを、
一口かじった。
虎「……」
しゃきしゃきとした歯ごたえと、
ぬかの発酵した香りが、
一緒に広がった。
塩気が、
おにぎりの甘みを、
うまく引き締めてくれる。
ニンジンの方は、
噛むほどに、
甘みと酸味が、
交互に感じられた。
虎「……これも、いい。歩きながら食べるには、ちょうどいい」
ダイスケ「……うちの村の、伝統の味だ」
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ステラも、
ニンジンを一口食べた。
ステラ「……緊張している時ほど、こういう素朴な味が、支えになりますね」
ダイスケ「……そうだな」
虎(この味、覚えておこう)
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道を急ぐうちに、
島長の館が、
見えてきた。
大きな石造りの建物で、
入り口に、
守衛らしき人物が、
立っていた。
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虎「島長に、緊急の用件がある」
守衛「……エンブレムを、確認させてもらう」
虎が三枚のエンブレムを、
見せると、
守衛の表情が、
変わった。
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守衛「三つ、揃っているとは。だが、それより先に、事情を聞こう」
虎「時間がない。火山が、目覚めかけている」
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守衛が、
すぐに、
中へと案内した。
館の中央広間で、
すでに、
三人のエリアリーダーが、
集まっていた。
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レイナ「……お前、なぜここに」
タクミ「何かあったのか」
ガクト「その顔、穏やかじゃないな」
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虎は、
手短に、
これまでの経緯を、
説明した。
伝説のケモンガのこと、
ダイスケたちの計画のこと、
そして、
封印がすでに緩んでいること。
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三人のリーダーが、
顔を見合わせた。
レイナ「……本当なのか」
ダイスケ「……本当です。俺が、原因です」
ダイスケが、
深く頭を下げた。
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ダイスケ「みんなを、巻き込んだのは、俺です。今からでも、止めたい」
ガクト「……お前、あの、勝てなかった連中の、リーダーか」
ダイスケ「はい」
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タクミが、
静かに言った。
タクミ「……お前たちの気持ち、わからなくはない。この島は、強さだけで、評価されすぎていたのかもしれない」
虎(タクミも、何か、思うところがあるようだ)
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その時、
奥の扉が開いて、
島長が姿を現した。
年老いた、
だが、
鋭い目をした人物だった。
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島長「……話は、聞こえていた。急がねばならんな」
虎「島長か」
島長「そうだ。だが、今は、名乗り合っている場合ではない」
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島長が、
杖を、
強く床に打ち付けた。
島長「全員、火山へ向かう。伝説のケモンガが、完全に目覚める前に、封じ直さねば」
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レイナ「私も、行きます」
タクミ「うちの村の、ケモンガも、力になれるはずだ」
ガクト「力比べなら、任せろ」
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虎は、
三人の様子を見て、
少し安堵した。
虎(一人じゃない。これなら、間に合うかもしれない)
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ダイスケが、
島長に向かって、
再び頭を下げた。
ダイスケ「……俺も、行かせてください。自分の、始めたことです」
島長「……当然だ」
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一行は、
すぐに、
火山へ向かって、
出発した。
道中、
地響きが、
どんどん、
激しくなっていく。
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ステラが、
ハクの背に乗りながら、
上空から言った。
ステラ「虎様、火口が見えます。赤い光が、噴き出しています」
虎「間に合うか」
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モチが、
虎の緊張を、
感じ取ったように、
形を鋭く尖らせた。
虎「モチ、頼むぞ」
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火山の麓に到着すると、
すでに、
ダイスケの仲間たちが、
儀式のような輪を作って、
座り込んでいた。
女「……リーダー、なぜ、ここに」
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ダイスケ「みんな、聞いてくれ。この計画は、間違っていた」
女「……リーダー、やっぱり」
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その時、
火口の奥から、
巨大な咆哮が、
轟いた。
地面が、
大きく揺れる。
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虎(来る)
虎は、
火口を、
じっと見つめた。
赤い光の中から、
巨大な影が、
姿を現し始めていた。
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島長が、
低い声で言った。
島長「……伝説のケモンガだ。目覚めてしまった」
その姿は、
虎たちが今まで見てきた、
どのケモンガよりも、
はるかに大きかった。
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虎(この島全体を、変えるほどの力、というのは、大袈裟じゃなかったんだな)
虎は、
モチを見た。
虎「モチ、俺の姿になれ。今から、みんなで、封じ直す」
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モチが、
虎の姿に、
すっと変化した。
ステラも、
ハクの背から、
決意の表情で、
虎を見た。
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ステラ「虎様、私も、加勢します」
虎「頼む」
三人のエリアリーダーと、
ダイスケも、
それぞれのケモンガを構えた。
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伝説のケモンガが、
巨大な咆哮を、
再び上げた。
火山全体が、
その声に、
共鳴するように、
揺れていた。
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虎(全員で、力を合わせれば)
虎(この島を、守れるはずだ)
ゴウゴウと。
赤い光が
夜空を焦がす。
決戦が、始まる。
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ステラ「切迫した状況ですが、今回で100話です」
虎「俺たちの、話がか」
ステラ「ええ、ここまで読んでくれた皆様、誠にありがとうございます」
虎「ありがとう」
虎「これからも、よろしく頼む。」
ステラ「戻しまして、伝説のケモンガ、ついに、目覚めてしまいましたね」
虎「大きな相手だ」
ステラ「おにぎりとぬか漬け、緊張の中で、支えになりました」
虎「あの味、忘れないな」
ステラ「島長さんたちと、力を合わせるんですね」
虎「全員で、封じ直す」
ステラ「……おおむね、これが、最大の山場です」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、力を合わせる』」
虎「みんなで、勝ち取るぞ」
ステラ「はい。行きましょう」




