第98話「虎が、島の影を追う」
# 虎無双、虎無双。
## 第98話「虎が、島の影を追う」
---
カクゥー。カクゥー。
カラスが鳴いている。
翌朝、
虎とステラは、
ガクトに教わった、
影が目撃された場所へと、
向かった。
山と麓の境目にある、
細い道の途中だった。
ステラ「昨日、あの影を見たのは、この辺りでしたね」
虎「ああ」
……………………………………………………………………………………………
モチが、
地面に、
体を薄く広げて、
何かを探るように、
動いていた。
虎「モチ、何か見つけたか」
モチが、
虎の足元まで、
細長く伸びて、
一方向を指し示した。
……………………………………………………………………………………………
虎「あっちに、続いているのか」
ステラも、
その方向を、
確認した。
ステラ「足跡のようなものが、あります」
虎「追ってみよう」
……………………………………………………………………………………………
道を外れて、
茂みをかき分けながら、
進んでいった。
しばらく歩くと、
小さな茶屋が、
見えてきた。
ステラ「……こんな場所に」
虎「立ち寄ってみるか」
……………………………………………………………………………………………
茶屋の店主が、
虎たちを見て、
少し驚いた顔をした。
店主「珍しいね。こんな山奥まで、来る旅人は」
虎「調べ物をしている」
……………………………………………………………………………………………
店主が、
虎の懐にある、
エンブレムに気づいた。
店主「三つ揃えたのかい。大したもんだ」
虎「最近、この辺りで、怪しい連中を、見かけないか」
……………………………………………………………………………………………
店主が、
少し表情を、
曇らせた。
店主「……ああ、いるよ。前は、ちょくちょく、うちにも来てたが、最近は、姿を見せない」
虎「どんな連中だ」
……………………………………………………………………………………………
店主「みんな、覇気のない目をしていてね。バトルで、負け続けた連中だって、噂だ」
ステラ「負け続けた」
虎(それで、あの目立たない動き方を、するのか)
……………………………………………………………………………………………
店主が、
団子を、
串に刺して、
出してくれた。
店主「話も、腹が減っては、続かないだろう」
虎は一口食べた。
……………………………………………………………………………………………
虎「……」
もちもちとした団子の食感に、
甘辛い醤油だれが、
しっかりと絡んでいた。
香ばしく炙られた表面の焦げ目が、
噛むほどに、
香りを広げてくる。
素朴だが、
どこか懐かしい、
温かみのある味だった。
虎「……うまい。歩き疲れた体に、ちょうどいい甘さだ」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、ほっとする味です」
……………………………………………………………………………………………
店主が、
続けて言った。
店主「あいつら、火山の方に、向かうのを、見た奴がいるって話だ」
虎「火山」
虎(この島に、火山があるのか)
……………………………………………………………………………………………
ステラが、
地図を確認しながら言った。
ステラ「山岳部の、さらに奥に、活火山があるようです」
虎「そこに、拠点があるのか」
……………………………………………………………………………………………
店主が、
心配そうに言った。
店主「あの辺りは、危ないよ。バトルで負けた連中が、何を、考えているか」
虎「見に行ってみる」
……………………………………………………………………………………………
団子を食べ終えると、
虎とステラは、
茶屋を出て、
火山の方角へと、
足を進めた。
道は、
さらに険しくなり、
硫黄の匂いが、
かすかに、
漂い始めた。
……………………………………………………………………………………………
モチが、
虎の肩の上で、
警戒するように、
体を尖らせた。
ハクも、
上空で、
慎重に、
周囲を見渡している。
……………………………………………………………………………………………
虎(先ほどの影と、同じ気配がある)
虎は、
足を止めて、
辺りの気配を、
探った。
……………………………………………………………………………………………
しばらく進むと、
岩場の陰に、
複数の人影が、
見えた。
ステラ「……いました」
虎「静かに、近づこう」
……………………………………………………………………………………………
岩陰から、
様子を伺うと、
みすぼらしい格好をした、
数人の男女が、
集まっているのが、
見えた。
その中心に、
一人の男が、
立っていた。
……………………………………………………………………………………………
男の声が、
かすかに、
聞こえてきた。
男「……もうすぐだ。伝説のケモンガを、目覚めさせれば、この島は、変わる」
虎(伝説のケモンガ、と言ったか)
……………………………………………………………………………………………
別の一人が、
不安そうに言った。
女「本当に、いいんでしょうか、こんなこと」
男「勝てない連中に、居場所はない。この島を、リセットするしかないんだ」
……………………………………………………………………………………………
虎(バトルで、勝てないから、島全体を、変えようとしているのか)
虎(そういう、絶望が、あるのかもしれないな)
ステラが、
虎の袖を、
そっと引いた。
……………………………………………………………………………………………
ステラ「虎様、どうしますか」
虎「まずは、話を聞く」
虎(力ずくで、止める前に、事情を、知っておきたい)
……………………………………………………………………………………………
だが、
虎が動こうとした瞬間、
モチが、
何かに反応するように、
形を、
波打たせた。
虎「……気づかれたか」
……………………………………………………………………………………………
岩陰の集団が、
一斉に、
虎たちの方を、
振り返った。
男「……誰だ」
虎は、
岩陰から、
姿を現した。
……………………………………………………………………………………………
虎「話を聞かせてくれ」
男「……エンブレムを、三つ持っているな」
男の目が、
鋭く、
虎を見つめた。
……………………………………………………………………………………………
男「島長への、挑戦者か。だが、もう、遅い」
虎「遅い、とは」
……………………………………………………………………………………………
男が、
ゆっくりと、
振り返って、
火山の方を、
指差した。
男「もうすぐ、伝説のケモンガが、目覚める。その時、この島は、生まれ変わる」
……………………………………………………………………………………………
虎
虎(急いで、止める必要が、あるかもしれない)
ステラが、
緊張した面持ちで、
虎の隣に立った。
……………………………………………………………………………………………
虎「その計画、止めさせてもらう」
男「……できるものなら、やってみろ」
男の表情に、
覚悟のようなものが、
浮かんでいた。
……………………………………………………………………………………………
虎は、
その目を、
じっと見つめた。
虎(この男、迷いがあるようにも、見えるな)
虎(だが、止められない、何かも、抱えているんだろう)
火山の方角から、
かすかに、
地響きのようなものが、
グツグツと。
鬱屈したモノの唸りに聞こえた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「悪人たちの、正体がわかりましたね」
虎「バトルで、勝てなかった連中、か」
ステラ「団子、素朴で美味しかったです」
虎「甘辛いたれが、よかったな」
ステラ「伝説のケモンガ、気になります」
虎「島を変える、と言っていた」
ステラ「……おおむね、緊迫した状況です」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、リーダーの葛藤を知る』」
虎「あの男の、本音を聞きたい」
ステラ「はい。楽しみですね」




