第97話「虎が、山岳部リーダーに挑む」
# 虎無双、虎無双。
## 第97話「虎が、山岳部リーダーに挑む」
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ゾボボボボ…!
家の門が開く。
老爺に案内されて、
集落の奥にある、
大きな家に、
たどり着いた。
石造りの建物の前に、
筋骨隆々とした、
壮年の男が、
立っていた。
老爺「山岳部リーダー、ガクト様だ」
虎「虎という。挑みに来た」
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ガクトが、
虎を、
値踏みするように見た。
ガクト「エンブレムを、二つ持っているそうだな」
虎「そうだ」
ガクトが、
腕を組んだ。
ガクト「山岳部は、単純な力比べだ。小細工は、通用しない」
虎「望むところだ」
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ガクトの隣に、
大きな岩のような、
甲羅を背負ったケモンガが、
控えていた。
ステラ「……あれは」
虎「亀型か。頑丈そうだな」
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ガクトが、
少し笑った。
ガクト「うちのケモンガは、防御力なら、島一番だ。正面から、削り切ってみせろ」
虎「面白い」
虎(モチの分身と、力押しで、削っていくしかないな)
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試合は、
明日の朝、
行われることになった。
その日の夜、
虎とステラは、
宿として用意された、
小さな山小屋に、
案内された。
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宿の主人が、
夕食を、
用意してくれた。
大きな鍋に、
根菜と干し肉が、
たっぷり煮込まれている。
主人「山岳部特製の、ポトフだ。冷える体には、これが一番だよ」
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虎は一口食べた。
虎「……」
干し肉の旨みが、
じっくりと煮出されて、
根菜の甘みと、
溶け合っていた。
噛むほどに、
体の芯から、
温まっていくような味わいで、
今日一日、
冷えた体に、
まっすぐ染み渡ってくる。
虎「……うまい。この寒さの中じゃ、格別だな」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、体が、温まります」
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主人が、
にこやかに言った。
主人「この時期の根菜は、味が、濃くなるんだ。冬支度の、恵みだよ」
虎「そういう味か」
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食事をしながら、
虎はガクトの言葉を、
思い返していた。
虎(力比べ、か)
虎(モチの器用さより、単純な力の方が、試されそうだな)
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ステラが、
虎の様子を見て、
聞いた。
ステラ「何か、考え事ですか」
虎「明日の試合のことだ」
虎「モチの分身を使っても、亀の甲羅は、崩せないかもしれない」
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ステラが、
少し考えてから言った。
ステラ「ハクさんの、上空からの支援は、使えますか」
虎「地上の力比べだ。空からの一撃で、隙を作れれば」
虎(連携すれば、単純な力比べにも、工夫が入る)
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翌朝、
集落の広場に、
試合の準備が、
整えられていた。
観客席には、
山岳部の住民たちが、
すでに集まっている。
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ガクトが、
亀型のケモンガと共に、
広場の中央に、
姿を現した。
ガクト「準備は、いいか」
虎「ああ」
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老爺が、
審判として、
右手を上げた。
老爺「では、始め!」
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試合が始まると、
亀型のケモンガが、
甲羅を、
虎に向けて、
突進してきた。
虎はそれを、
両腕で受け止めた。
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どごん。
衝撃が、
腕に響いた。
虎(重い。だが、耐えられる)
亀型が、
そのまま、
体重をかけて、
押し込んでこようとした。
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ステラが、
上空から、
声をかけた。
ステラ「虎様、上です!」
ハクが、
急降下しながら、
水の弾を、
亀型の甲羅に、
撃ち込んだ。
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甲羅に、
一瞬、
動揺が走った。
虎(今だ)
虎は、
その隙を突いて、
甲羅の縁に、
手をかけた。
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虎(引っくり返す)
虎は、
渾身の力を込めて、
亀型のケモンガを、
持ち上げた。
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会場が、
どよめいた。
観客A「持ち上げた……!」
観客B「あの甲羅を……!」
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虎は、
そのまま、
亀型のケモンガを、
横倒しにした。
足が、
宙で、
無防備にばたついている。
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老爺が、
すぐに、
勝敗を宣言した。
老爺「勝負あり! 虎選手の勝利だ!」
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ガクトが、
少しの間、
呆然としていたが、
やがて、
豪快に笑い出した。
ガクト「……力比べで、負けたのは、初めてだ」
虎「モチとハクの、連携のおかげだ」
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ガクトが、
懐から、
最後のエンブレムを、
取り出した。
ガクト「三つ目の証だ。受け取れ」
虎が、
それを受け取ると、
三枚のエンブレムが、
一斉に、
強い光を放った。
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ステラが、
その光を見て、
息をのんだ。
ステラ「……揃いましたね」
虎「ああ」
虎(これで、島長に、会える)
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ガクトが、
虎の肩を、
軽く叩いた。
ガクト「よくやった。だが、油断はするなよ」
虎「何かあるのか」
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ガクトの表情が、
少し、
曇った。
ガクト「……最近、山の中で、妙な連中を、見かける。お前も、道中で、何か見たんじゃないか」
虎「岩陰に、隠れる影を見た」
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ガクトが、
低い声で言った。
ガクト「ここ最近、バトルで、勝てなかった連中が、集まっているという、噂がある」
虎「勝てなかった連中」
ガクト「詳しいことは、わからん。だが、何かを、企んでいる気がしてならない」
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虎は、
その言葉を、
心の中で、
反芻した。
虎(あの影も、そういう連中の、一人だったのかもしれないな)
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夕方、
祝勝の場が、
広場で、
開かれた。
宿の主人が、
昨夜のポトフを、
もう一度、
振る舞ってくれた。
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虎は、
一口飲んだ。
虎「……」
昨夜よりも、
さらに、
煮込まれた分、
根菜の甘みが、
深くなっていた。
勝利の余韻の中で食べると、
その温かさが、
一層、
染み渡ってくる。
虎「……うまい。今日の勝利に、ちょうどいい味だ」
ステラも一口飲んだ。
ステラ「……本当に、おめでとうございます」
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食事を終えて、
宿に戻ると、
虎は三枚のエンブレムを、
並べて見つめた。
虎(あと少しで、島長に、会える)
虎(だが、あの怪しい連中のことも、気になるな)
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モチが、
虎の膝の上で、
静かに丸まっていた。
ステラが、
ハクを撫でながら、
言った。
ステラ「虎様、あの影のこと、調べてみますか」
虎「そうだな。島長に、会う前に、少し、調べてみよう」
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窓の外に、
山岳部の、
澄んだ夜空が、
広がっていた。
虎はエンブレムを、
懐にしまいながら、
呟いた。
虎(この島にも、影がある、か)
月影が、
三枚のエンブレムに
暗闇を差した。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「三つ目のエンブレム、手に入りましたね」
虎「ガクトさんも、いい相手だった」
ステラ「ポトフ、二晩とも、美味しかったです」
虎「根菜の甘みが、深かったな」
ステラ「怪しい連中の話、気になります」
虎「調べてみる必要がありそうだ」
ステラ「……おおむね、次の展開が、読めません」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、島の影を追う』」
虎「あの影の正体、突き止める」
ステラ「はい。楽しみですね」




