第96話「虎が、山岳部を目指す」
# 虎無双、虎無双。
## 第96話「虎が、山岳部を目指す」
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がざり、がざり
山道を進む音だ。
翌朝、
虎とステラは村を出て、
山岳部へと向かう道に、
足を踏み入れていた。
道は次第に、
勾配を増していき、
空気も少しずつ、
冷たくなっていった。
ステラ「農村部とは、また違う雰囲気ですね」
虎「登るほどに、寒くなるな」
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モチが、
虎の肩の上で、
形を丸く縮こめていた。
ハクは、
気流を読みながら、
ゆったりと上空を飛んでいる。
虎「モチ、寒いのか」
モチが、
虎の首元に、
そっと寄り添うように、
形を変えた。
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しばらく歩くと、
小さな山小屋が見えてきた。
看板に、
『山への入り口、休憩処』
と書かれている。
ステラ「少し、休みましょうか」
虎「そうだな」
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小屋の中に入ると、
女将らしき人物が、
出迎えてくれた。
女将「おや、都市部から来た子かい。珍しいね」
虎「山岳部リーダーに、会いに来た」
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女将が、
少し驚いた顔をした。
女将「あんた、そんな軽装で、山岳部リーダーに、会いに行くのかい」
虎「軽装、まずいか」
女将「あそこは、この島で、一番、過酷な土地だよ。準備は、しっかりしないと」
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女将が、
奥から、
何かを持ってきた。
竹の籠に入った、
緑色の葉のようなものだった。
女将「これは、イタドリだよ。この辺りに、たくさん生えている」
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女将が、
それを油で揚げて、
天ぷらにしてくれた。
虎は一口食べた。
虎「……」
さくりとした衣の中から、
イタドリ特有の、
ほのかな酸味が、
広がった。
噛むほどに、
青々しい風味と、
油のコクが、
ちょうどよく絡み合っている。
山の入り口らしい、
素朴で力強い味だった。
虎「……うまい。癖があるが、それが、いい味だ」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、独特の風味です」
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女将が、
続けて、
別の器を持ってきた。
温かい湯気の立つ、
白い液体が入っている。
女将「これは、農村部からの、定期便で届く牛乳を、使ったスープだよ」
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虎は一口飲んだ。
虎「……」
濃厚な乳のコクに、
山菜の出汁が、
溶け込んでいた。
体の芯から、
温まるような味わいで、
先ほどのイタドリ天ぷらの酸味と、
交互に楽しむと、
また違う満足感があった。
虎「……これも、うまい。体が、温まっていく」
ステラも一口飲んだ。
ステラ「……疲れが、和らぐ気がします」
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女将が、
嬉しそうに言った。
女将「農村部と山岳部は、こうして、支え合っているんだよ。牛乳は、山じゃ、作れないからね」
虎「持ちつ持たれつ、か」
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食事を終えると、
女将が、
虎たちに、
防寒用の外套を、
貸してくれた。
女将「これを、着ていきな。上の方は、まだ、冷え込むから」
虎「助かる」
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外套を羽織って、
再び歩き出した。
道は、
さらに険しくなり、
岩場が、
剥き出しになっている場所も、
増えてきた。
ステラ「……本当に、過酷な道ですね」
虎「だが、モチとハクがいる」
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モチが、
虎の足元を、
柔らかく整えるように、
形を変えて、
歩きやすい道を、
作ってくれた。
虎「便利だな、これは」
虎(一人で登るより、はるかに、楽だ)
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しばらく登ると、
遠くに、
何やら不自然な人影が、
見えた気がした。
虎は足を止めた。
虎「……誰か、いるな」
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ステラも、
同じ方向を見た。
ステラ「……岩陰に、隠れているようです」
その影は、
虎たちの視線に気づくと、
すぐに、
姿を消してしまった。
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虎(気配が、妙だったな)
虎(旅人にしては、隠れる理由が、わからない)
ステラが、
少し不安そうに言った。
ステラ「大丈夫でしょうか」
虎「今は、先に進もう」
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虎は、
その違和感を、
胸の片隅に、
留めておくことにした。
虎(山岳部リーダーに、会ったら、聞いてみるか)
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日が傾き始めた頃、
山道の先に、
石造りの門が見えてきた。
門の向こうに、
山岳部の集落が、
広がっている様子だった。
ステラ「あそこが、山岳部ですね」
虎「ようやく、着きそうだな」
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門の前で、
虎は一度、
振り返った。
来た道を、
見下ろすと、
農村部の田園風景が、
遠くに、
小さく見えていた。
虎(都市部から、農村部、そして、山岳部か)
虎(この島も、色々な顔を、持っているんだな)
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モチが、
虎の肩の上で、
体を伸ばした。
ハクも、
門の前に、
静かに降り立った。
ステラ「虎様、行きましょう」
虎「ああ」
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門をくぐると、
冷たい風が、
一段と強く吹きつけてきた。
石造りの家々が、
山肌に沿って、
点在している。
虎(さて、リーダーは、どんな人物だろうな)
虎(それに、さっきの影も、気になる)
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集落の入り口で、
一人の老爺が、
虎たちを、
見つめていた。
老爺「……都市部の匂いがするな。何の用だ」
虎「山岳部リーダーに、会いに来た」
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老爺が、
少し目を細めた。
老爺「その前に、聞いておこう。お前、腕は、あるのか」
虎「二つ、エンブレムを持っている」
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老爺が、
虎の懐を見て、
小さく頷いた。
老爺「……本物のようだな。案内しよう」
老爺が、
先に立って、
歩き出した。
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夕暮れの光が、
山岳部の集落を、
オレンジ色に、
染めていた。
虎は、
その景色を見ながら、
歩き続けた。
虎(山岳部リーダーと、あの影の正体、両方を、確かめないといけないな)
足元でイタドリが
夕日で影を垂らしていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「山岳部、寒さが厳しい場所でしたね」
虎「イタドリの天ぷらが、印象的だった」
ステラ「牛乳のスープも、温まりました」
虎「農村部と山岳部の、繋がりがわかったな」
ステラ「道中で、気になる影も、見ましたね」
虎「あれは、何だったのか」
ステラ「……おおむね、不穏な気配がしました」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、山岳部リーダーに挑む』」
虎「最後のエンブレムだな」
ステラ「はい。楽しみですね」




