第89話「虎が、南の海へ出る」
港に着くと、
南方行きの船が、
すでに停泊していた。
ステラが、
チケットを確認しながら言った。
ステラ「ケモンガ島まで、三日ほどの船旅だそうです」
虎「ケモンガ島」
ステラ「島の名前です。詳しい情報は、まだ、あまり出回っていません」
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船乗りが、
荷物を積み込みながら、
話しかけてきた。
船乗り「ケモンガ島に、行くのかい」
虎「そうだ」
船乗り「珍しいな。あそこは、独特な文化がある島だから、驚くと思うぞ」
虎「独特、とは」
船乗り「行けば、わかるさ」
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船が出航すると、
海風が心地よく、
甲板を吹き抜けた。
ステラが、
遠くの水平線を見ながら言った。
ステラ「久しぶりの、海の旅ですね」
虎「そうだな」
虎(クラーケンの時以来か)
虎(今回は、平和な航海だといいが)
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一日目は、
特に何事もなく過ぎた。
夕食に、
船の食堂で、
魚介のスープが出された。
虎は一口飲んだ。
虎「……」
出汁が濃く、
魚の旨みが、
しっかりと溶け込んでいた。
潮の香りが、
そのまま食欲に変わるような味で、
これから向かう場所への期待を、
高めてくれるようだった。
虎「……うまい。海の旅は、飯もいいな」
ステラも一口飲んだ。
ステラ「……確かに、体が温まります」
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二日目、
甲板で、
船員の一人が、
不思議な生き物を、
連れているのが見えた。
小さな、
丸い形をした生き物が、
その船員の肩に乗っている。
ステラ「……あれは」
虎「見たことのない姿だな」
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その船員が、
虎たちの視線に気づいて、
笑いながら言った。
船員「ああ、これか。ケモンガだよ。俺の相棒だ」
虎「ケモンガ」
船員「島の外じゃ、あまり見ないだろうな。この子は、島から連れ出しちゃいけない決まりがあるんだ」
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虎(連れ出せない、とは)
虎「なぜだ」
船員が、
少し考えるように言った。
船員「詳しい理由は、俺も知らないが……ケモンガは、あの島の力そのものだって、言われてる。だから、勝手に外には出せない」
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ステラが、
興味深そうに、
その生き物を見つめた。
ステラ「……可愛らしいですね」
船員「島に着けば、みんなが、自分のケモンガを持ってる。お前さんたちも、きっと、一匹選ぶことになる」
虎「選ぶ」
船員「そういう習わしなんだ」
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夜、
甲板で、
虎はケモンガという生き物について、
考えを巡らせた。
虎(デバイスであり、ペットであり、戦闘にも使えると聞いた)
虎(面白そうな仕組みだ)
ステラが、
虎の隣に来て言った。
ステラ「虎様、楽しみですか」
虎「ああ」
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三日目、
遠くに、
島の輪郭が見えてきた。
緑豊かな山と、
広がる田畑、
そして海沿いの賑やかな街並みが、
一望できた。
ステラ「……あれが、ケモンガ島ですね」
虎「大きい島だな」
船が近づくにつれて、
街の音や、
人々の声が、
聞こえてくるようになった。
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港に降り立つと、
すぐに、
虎たちは、
その光景に驚かされた。
誰もが、
何らかのケモンガを、
連れていた。
犬のようなもの、
鳥のようなもの、
形の定まらない、
不思議なものまで、
様々だった。
ステラ「……本当に、みんな、連れていますね」
虎「賑やかな島だ」
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港の案内所で、
係員が、
虎たちに説明した。
係員「初めてのお客さんですね。この島に滞在する間は、みなさん、ケモンガを、相棒にしていただきます」
虎「島を出る時は」
係員「ケモンガは、島に返していただく決まりです。連れ出すことは、できません」
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虎(船員の言っていた通りだな)
虎(何か、理由があるんだろう)
ステラが、
係員に聞いた。
ステラ「相棒は、どうやって選ぶのですか」
係員「明日、選定の儀式があります。それまでは、街を見て回るといいですよ」
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案内所を出ると、
街には、
ケモンガ同士が、
仲良く並んで歩く光景が、
あちこちに見られた。
虎は、
その一つを、
興味深く眺めた。
虎(人と、ケモンガの距離が、近いな)
虎(一万年前には、こういう関係性の生き物は、いなかった)
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街の中心部に、
大きな看板があった。
『本日、ケモンガバトル開催中!』
ステラが、
その文字を見て言った。
ステラ「バトル、ですか」
虎「面白そうだ」
看板の先に、
大きな闘技場のような建物が、
見えていた。
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昼食に、
屋台で、
串焼きを買った。
見た目は普通の肉だったが、
店主が、
少し違う説明をしてきた。
店主「これは、島で採れる、特殊な魔力を含んだ肉だよ。ケモンガの、力の源にもなる食材だ」
虎は一口食べた。
虎「……」
普通の肉よりも、
噛むほどに、
じんわりとした力強さが、
体に染み込んでくるような味だった。
香辛料の効いた味付けが、
その独特な旨みを、
うまく引き立てている。
虎「……うまい。力が湧いてくる感じがするな」
ステラも一口食べた。
ステラ「……確かに、不思議な満足感があります」
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夕方、
宿を取って、
島の一日目を、
終えることにした。
窓から、
闘技場の灯りが、
遠くに見えた。
ステラ「虎様、明日は、いよいよ、選定ですね」
虎「どんなケモンガが、来るか」
虎(一万年前には、想像もしなかった旅の形だ)
虎(それも、面白い)
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夜風が、
街を、
静かに包んでいた。
ステラが、
虎の隣で言った。
ステラ「新しい相棒、楽しみです」
虎「ああ」
明日からの、
新しい体験を、
夜が静かに、
待っていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「ケモンガ島、賑やかな場所でしたね」
虎「みんな、相棒を連れていた」
ステラ「明日は、私たちの番ですね」
虎「どんな子が来るか、楽しみだ」
ステラ「ケモンガバトルも、気になります」
虎「見てみたいな」
ステラ「……おおむね、盛りだくさんな滞在になりそうです」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、ケモンガの相棒を選ぶ』」
虎「どんな出会いになるか」
ステラ「はい。楽しみですね」




