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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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88/112

第88話「虎が、次の目的地を選ぶ」


翌朝、

宿の食堂で朝食をとりながら、

虎は地図を広げていた。


ステラ「今日は、決めるのですか」

虎「そろそろな」


虎はしばらく地図を眺めた。


虎(月文明の手がかりは、一つ見つかった)


虎(だが、まだ全部ではない)


……………………………………………………………………………………………


ステラが、

地図の端を指差した。


ステラ「アショカの柱の記録には、他の拠点についての言及も、あるかもしれません」

虎「クリスが、整理し終わるまで、わからないな」

ステラ「気長に、待ちましょう」


虎はうなずいた。


虎「それなら、その間、別の目的で動くか」


……………………………………………………………………………………………


朝食に出てきたのは、

この街らしい、

具沢山のスープと、

分厚いパンだった。


虎は一口飲んだ。


虎「……」


久しぶりに口にする、

街の味だった。

香辛料の効いたスープが、

荒野で食べていたものとは、

比べ物にならないほど、

複雑な旨みを持っていた。

パンも、

柔らかくて、

噛むほどに小麦の甘みが広がる。


虎「……うまい。街の飯は、やっぱり違うな」

ステラも一口飲んだ。


ステラ「……確かに、体に染み渡ります」


……………………………………………………………………………………………


朝食を終えると、

ギルドに顔を出すことにした。


受付が、

虎を見て、

少し驚いた顔をした。


受付「お帰りなさい。未開拓地帯からの、生還者は珍しいですよ」

虎「大した苦労じゃなかった」


受付が、

書類を確認しながら言った。


受付「ちょうど、新しい依頼が、いくつか出ています。しばらく、この街に滞在されますか」

虎「そのつもりだ」


……………………………………………………………………………………………


掲示板には、

色々な依頼が貼られていた。


ステラが、

それを一枚ずつ確認していった。


ステラ「魔物討伐、護衛依頼、それから……」


ステラが、

一枚の紙で、

手を止めた。


ステラ「これは」


……………………………………………………………………………………………


紙には、

『南方の島々、未確認遺跡調査』

と書かれていた。


虎「遺跡、か」

ステラ「月文明の痕跡かもしれません」


虎はその依頼票を、

じっと見つめた。


虎(面白そうだ)


虎(だが、確証はない)


……………………………………………………………………………………………


受付に、

詳しい話を聞いた。


受付「南の島々で、最近、見慣れない構造物が、いくつか、発見されているんです。詳細は不明ですが」

虎「行く価値はありそうだな」

受付「危険度は、中程度です。Bランク以上を、推奨しています」


……………………………………………………………………………………………


虎は少し考えてから言った。


虎「他に、候補はあるか」

ステラ「北にも、気になる噂があります。古い神殿の話ですが」


ステラが、

別の掲示物を、

指差した。


ステラ「こちらは、もう少し、危険度が低いようです」


……………………………………………………………………………………………


虎はしばらく、

二つの依頼票を、

見比べた。


虎(南は、海を渡る。北は、また山道か)


虎(どちらも、面白そうだが)


虎「南にしよう」

ステラ「理由は」

虎「海が、いい気分転換になる」


……………………………………………………………………………………………


ステラが、

少し笑った。


ステラ「……単純な理由ですね」

虎「それが、一番わかりやすい」


受付が、

依頼書を渡しながら言った。


受付「南方の島々には、船で向かうことになります。港まで、数日かかりますが」

虎「構わない」


……………………………………………………………………………………………


ギルドを出て、

街を歩きながら、

虎はふと立ち止まった。


以前、

ワルたちと戦った、

屋上庭園の入り口が見えた。


ステラ「懐かしいですね」

虎「そうだな」


案内係が、

ちょうど近くを通りかかった。


案内係「おっ、また来たのか」

虎「南の島に向かう」


……………………………………………………………………………………………


案内係が、

興味深そうに言った。


案内係「南の島か。あそこは、この街の連中でも、あまり行かない場所だぞ」

虎「だから、面白そうなんだ」

案内係「相変わらずだな、あんた」


案内係が笑いながら、

虎の肩を、

軽く叩こうとして、

届かずに終わった。


……………………………………………………………………………………………


案内係「気をつけてな。また、戻ってきたら、教えてくれ」

虎「そうする」


案内係が、

去っていく背中を、

虎はしばらく見送った。


虎(この街には、何度も、世話になったな)


……………………………………………………………………………………………


昼過ぎ、

出発前の腹ごしらえに、

市場の屋台に寄った。


でこぼこ饅頭の店主が、

虎に気づいて声をかけてきた。


店主「おお、また旅立つのか」

虎「南の島だ」

店主「また、うまいもん、探しに行くんだな」


……………………………………………………………………………………………


店主が、

新作らしい串焼きを、

差し出してきた。


虎は一口食べた。


虎「……」


海鮮の出汁が、

香ばしく焼き上げられた表面に、

染み込んでいた。

噛むと、

魚介の旨みと、

炭の香りが、

一緒に広がってくる。

これから向かう海への、

前触れのような味だった。


虎「……うまい。南の島の準備に、ちょうどいい味だ」

店主「だろ。旅立ちには、こういう味がいいんだよ」


……………………………………………………………………………………………


ステラも一口食べた。


ステラ「……確かに、海の予感がします」


店主が、

包みを追加で渡してきた。


店主「これも、持っていけ。日持ちするやつだ」

虎「ありがとう」


……………………………………………………………………………………………


夕方、

港へ向かう準備を終えて、

宿に戻った。


ステラが、

荷物を整理しながら言った。


ステラ「南の島、初めての場所ですね」

虎「新しい景色は、いつも面白い」


虎は窓の外を見た。


虎(クリスがいないのは、少し寂しいが)


虎(あいつも、あいつの旅を、始めている)


……………………………………………………………………………………………


夜、

虎は寝る前に、

もう一度、

南方の島々の地図を、

確認した。


ステラが隣で言った。


ステラ「虎様、楽しみですか」

虎「ああ」

ステラ「私も、楽しみです」


虎は地図を畳んだ。


虎(月文明の痕跡が、また一つ、見つかるかもしれない)


虎(それとも、全く別の、面白いものに、出会うかもしれない)


……………………………………………………………………………………………


窓の外に、

星が瞬いていた。


ステラが、

静かに言った。


ステラ「おやすみなさい、虎様」

虎「ああ、おやすみ」


明日からの、

新しい旅の始まりを、

夜が静かに、

包んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「南の島、決まりましたね」

虎「海が、いい気分転換になる」

ステラ「北の神殿も、気になりましたが」

虎「また今度、行けばいい」

ステラ「案内係の方も、見送ってくれましたね」

虎「あの人、変わらないな」

ステラ「……おおむね、次の旅も、楽しみです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、南の海へ出る』」

虎「久しぶりの、船旅だな」

ステラ「はい。楽しみですね」

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