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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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87/112

第87話「虎が、荒野を戻る」


塔を離れて数時間、

荒野の景色は変わらず続いていた。


ステラ「三人だった旅が、また二人になりましたね」

虎「そうだな」


風が砂を巻き上げながら吹いていた。


虎(クリスがいない分、荷物の配分を変えないといけないな)


虎(少し寂しいが、それだけだ)


ステラが地図を確認しながら言った。


ステラ「街までは、来た時と同じ道のりです。五日ほどかかるかと」

虎「わかった」


……………………………………………………………………………………………


歩きながら、

ステラが虎の隣で言った。


ステラ「虎様、クリスさんのこと、あっさり送り出しましたね」

虎「あいつが決めたことだ」

ステラ「寂しくは、ないのですか」


虎はしばらく黙ってから答えた。


虎「寂しくないと言えば、嘘になる」

ステラ「……」

虎「だが、あいつは、ようやく自分の時間を、取り戻す場所を見つけた」


ステラがその言葉を、

噛みしめるように聞いていた。


ステラ「……そうですね」


……………………………………………………………………………………………


昼になり、

岩陰で休憩を取ることにした。


ステラが荷物を広げると、

街から持ってきた饅頭が、

まだ少し残っていた。


虎は一口食べた。


虎「……」


行きに食べた時よりも、

少し味が変わっていた。

甘みは薄れていたが、

その分、

生地の香ばしさがはっきりと感じられた。

時間が経った分だけ、

また違う顔を見せる味だった。


虎「……うまい。日が経つと、味も変わるものだな」

ステラ「保存食は、そういうものかもしれません」


二人で分け合いながら、

残りの饅頭を食べきった。


……………………………………………………………………………………………


夕方、

野営地を選んで、

火を起こした。


ステラが焚き火の前で、

静かに言った。


ステラ「三人分の食事を作る癖が、まだ抜けません」

虎「そのうち、慣れるだろう」


虎(クリスがいた時間は、それほど長くなかったが、確かに、癖になっていたな)


夜空を見上げると、

星が今夜も多かった。


……………………………………………………………………………………………


二日目、

道中で、

行きに立ち寄った岩の遺構を、

再び通りかかった。


ステラが足を止めた。


ステラ「あの、文字が刻まれていた岩ですね」

虎「クリスが、興味を持っていた場所だ」


虎はその岩を、

もう一度確認した。


虎(あの時は、ただの摩耗した文字だと思っていたが)


虎(今なら、クリスの記憶と、繋げて読めるものが、あるかもしれないな)


だが、

文字は依然として、

読み取れなかった。


……………………………………………………………………………………………


三日目、

水場を見つけて、

体を清めることにした。


小さな泉が、

岩の間から湧き出していた。


ステラ「久しぶりの、まともな水浴びですね」

虎「ああ」


ステラが虎の毛並みを、

丁寧に洗っていった。


ステラ「……前より、少し落ち着いた顔をしていますね」

虎「そうか」

ステラ「はい。塔での試練が、何か、答えを出させたのかもしれません」


虎は何も言わなかったが、

否定もしなかった。


……………………………………………………………………………………………


四日目の夜、

携帯食が底をついてきた。


ステラが残っていた分を数えて言った。


ステラ「明日一日分なら、足りそうです」

虎「街まで、あと一日か」


虎は空を見上げた。


虎(この旅も、色々あったな)


虎(サンドポートから始まって、ホロウベル、ナイトポップシティー、ビッグビッグシティー、そしてこの塔)


……………………………………………………………………………………………


五日目、

街道の終点が、

遠くに見えてきた。


ステラ「見えました。あそこから、また馬車が使えます」

虎「ようやくか」


街道に足を踏み入れると、

砂と岩ばかりだった景色に、

少しずつ緑が戻ってきた。


……………………………………………………………………………………………


馬車が通る道まで来ると、

一台の荷馬車が、

ちょうど通りかかった。


御者「おや、旅の方かい。街まで乗せていこうか」

虎「助かる」


馬車に乗り込むと、

御者が話しかけてきた。


御者「未開拓地帯に、行ってきたのかい」

虎「そうだ」

御者「そりゃすごい。無事に戻ってきただけでも、大したもんだ」


……………………………………………………………………………………………


御者が、

荷物の中から、

干した果物を分けてくれた。


虎は一口食べた。


虎「……」


甘みが凝縮されていて、

噛むたびに、

じんわりとした満足感が広がった。

街の匂いが、

少しずつ近づいてくる中で食べると、

帰ってきた実感が、

その甘さと一緒に染み込んでくる気がした。


虎「……うまい。街が近いと思うと、味も違って感じるな」

ステラも一口食べた。


ステラ「……確かに、ほっとする味です」


……………………………………………………………………………………………


夕暮れ時、

ビッグビッグシティーの門が、

見えてきた。


案内係の姿が、

遠くに見えた。


ステラ「あ、案内係の方が」

虎「元気そうだな」


御者が馬車を止めて言った。


御者「ここまでだ。気をつけてな」

虎「世話になった」


……………………………………………………………………………………………


門をくぐると、

案内係が虎たちに気づいて、

大きく手を振った。


案内係「おお、戻ってきたか! 塔はどうだった!」

虎「面白い場所だった」


案内係が、

虎の後ろを見て、

首を傾げた。


案内係「あれ、骨のお嬢ちゃんは」

虎「あいつは、あそこに残った」


……………………………………………………………………………………………


案内係が、

少し意外そうな顔をしたが、

すぐに笑った。


案内係「まあ、そういうこともあるさ。器の大きい街の連中は、そういう選択も、応援するもんだ」

虎「そうか」


虎(この街らしい言い方だな)


……………………………………………………………………………………………


司書に報告するため、

図書館に向かった。


館長と司書が、

虎たちを迎えた。


司書「お帰りなさい。塔の様子は」

虎「アショカの柱、見つけた。管理者もいた」


館長が身を乗り出した。


館長「管理者だと……!」

虎「詳しい記録は、まだ、あちらで整理中だ」


……………………………………………………………………………………………


司書が、

興奮した様子で言った。


司書「では、また連絡が取れるということですね」

虎「クリスが、そこに残っている。連絡役になるだろう」


館長が、

深く頭を下げた。


館長「本当に、大きな成果だ。感謝する」


……………………………………………………………………………………………


図書館を出ると、

夜の街が、

灯りに包まれていた。


ステラが虎の隣で言った。


ステラ「虎様、今夜はどうしますか」

虎「宿を取って、ゆっくりする」


虎は夜空を見上げた。


虎(次は、どこへ行こうか)


虎(急ぐ必要は、ない)


……………………………………………………………………………………………


宿の窓から、

街の灯りが見えた。


ステラが荷物を整理しながら言った。


ステラ「クリスさんの分の荷物、まだ手元にありますね」

虎「いつか、届けに行くか」

ステラ「はい、そうしましょう」


夜風が、

静かに部屋の中を通り抜けていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「街に戻ってきましたね」

虎「久しぶりの、まともな宿だ」

ステラ「案内係の方も、喜んでいました」

虎「相変わらず、大声だったな」

ステラ「クリスさんの報告、館長さんも喜んでいましたね」

虎「大きな成果だと言っていた」

ステラ「これから、どこへ向かいましょうか」

虎「まだ決めていない」

ステラ「……おおむね、ゆっくり決めることになりそうです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、次の目的地を選ぶ』」

虎「久しぶりに、自由な選択だな」

ステラ「はい。楽しみですね」

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