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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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85/112

第85話「虎が、最上階に立つ」


階段を上りきると光に包まれた。


目を開けるとそこは今までの階層とは全く違う静けさに満ちていた。


円形の広間で天井は高く、

中央に一本の柱が立っていた。


ステラ「……これが」

虎「元の姿の、アショカの柱か」


石でできたその柱には、

今まで見てきたどの紋様よりも古く深い彫刻が刻まれていた。


クリスがその柱に近づいた。


クリス「……間違いない。これが、本体だ」


柱の表面にクリスが手を触れた瞬間、

石の色が淡く光り始めた。


虎「何か、起きるぞ」


光が柱全体を包み込み、

表面に縦の亀裂が走った。


……………………………………………………………………………………………


亀裂が広がっていくと、

柱そのものがまるで扉のように左右に開いていった。


ステラ「……中に、何か」


内側は空洞になっていて、

そこに何かが横たわっていた。


虎(人型、か)


虎は身構えながら中を確認した。


横たわっていたのは少女の姿をしたミイラだった。


褐色の肌に長く伸びた銀色の髪。


包帯のようなものが体の各所に巻かれているが、

顔立ちははっきりと確認できた。


クリス「……」


クリスが息を呑んだ。


ミイラの目がゆっくりと開いた。


虚ろだった瞳に少しずつ光が戻っていく。


ミイラ「……誰、だ」


かすれた声だった。


虎「虎だ」

ミイラ「……侵入者、か」


……………………………………………………………………………………………


ミイラの体がゆっくりと起き上がった。


包帯の隙間から何か鋭い光が一瞬見えた。


ステラ「虎様、警戒を」

虎「わかっている」


ミイラの手に古びた短剣が握られていた。


ミイラ「この柱を、開けた者は、皆、敵だ」


虎(面白い状況になってきたな)


虎(だが、いきなり戦う必要はない)


虎「待て。俺たちは、財宝が目的じゃない」

ミイラ「……戯言を」


ミイラが短剣を構えたまま一歩前に出た。


クリスが一歩前に出て言った。


クリス「……待て、その姿」


ミイラの目がクリスに向いた。


ミイラ「お前、その気配」

クリス「私も、月に、関わりのある者だ」


……………………………………………………………………………………………


ミイラの動きが一瞬止まった。


ミイラ「……月、だと」

クリス「三千年、私は、別の場所で、眠っていた」


ミイラは警戒したまま、

だが剣を下ろすことはしなかった。


ミイラ「……私は、この柱と共に、封じられていた」

虎「どれくらい、経った」

ミイラ「……わからない。数え切れないほど、長い」


虎(この少女も、時を止めていた存在なのか)


虎(クリスと、似た境遇なのかもしれない)


ミイラが剣を握る手に力を込めた。


ミイラ「……お前たちが、敵でないという、保証はない」

虎「保証はできない。だが、危害を加える気は、ない」


しばらく沈黙が流れた。


……………………………………………………………………………………………


ステラが静かに一歩前に出た。


ステラ「私たちは、月文明の記録を、探して、ここまで来ました」

ミイラ「……記録」


ミイラの目が少し揺れた。


ミイラ「その記録が、何のために、必要だ」

虎「知るためだ。それ以上でも、それ以下でもない」


ミイラは虎の顔をじっと見つめた。


その視線の中に値踏みするような用心深さがあった。


ミイラ「……嘘は、ついていないようだな」

虎「ついていない」


ミイラが少しだけ剣を下ろした。


だが完全に警戒を解いた様子ではなかった。


ミイラ「話は、聞いてやる。だが、まだ、信用したわけではない」

虎「それで十分だ」


虎(少しずつ、進めばいい)


虎(急いで拒絶されるより、ずっといい)


……………………………………………………………………………………………


ステラが荷物から残っていた食料を取り出した。


ステラ「……腹は、減っていますか」

ミイラ「……」


ミイラはしばらく黙っていたが、

やがて小さくうなずいた。


ステラが干し肉を一切れ差し出した。


ミイラは警戒しながらも、

それを受け取り一口かじった。


ミイラ「……」


長い沈黙の後、

かすかに表情が動いた。


ミイラ「……なんだ、これは」

ステラ「食べ物です」

ミイラ「……こんな味、初めてだ」


虎(味覚は、生きているんだな)


虎がその様子を見ながら少し口の端を上げた。


……………………………………………………………………………………………


虎「気に入ったなら、もっと食え」

ミイラ「……」


ミイラがもう一口かじった。


その表情に先ほどまでの鋭さが少しだけ薄れていた。


クリスが静かにミイラに近づいた。


クリス「……名前は、あるのか」

ミイラ「……忘れた。長すぎて」


虎(面白い状況だな)


虎(名前がわからないミイラ、か)


外の広間に静かな時間が流れていた。


虎はミイラの様子を見ながら、

これからのことを考えた。


虎(すぐに、味方になるとは、思わない)


虎(だが、話す時間は、まだある)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「柱の中に、ミイラの方がいましたね」

虎「予想外の展開だった」

ステラ「まだ、警戒されていますが」

虎「少しずつ、距離を縮めるしかない」

クリス「……私と似た境遇のようだ」

虎「そうだな」

ステラ「……おおむね、これから、が本番かもしれません」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、ミイラと語り合う』」

虎「もっと、話を聞きたい」

ステラ「はい。楽しみですね」

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