第82話「虎が、柱の影を追う」
階段を上りきると、
景色が一変した。
無数の石柱が、
規則正しく並ぶ、
広大な空間だった。
天井は高く、
柱の合間から差し込む光が、
複雑な影を床に落としている。
ステラ「……柱だらけですね」
虎「見通しが、悪いな」
クリスが杖をかざして、
周囲を確認した。
クリス「……魔力の反応が、あちこちにある。だが、姿は見えない」
虎(森とは、違う種類の厄介さだ)
虎(潜む場所が、多すぎる)
三人が慎重に進むと、
床の影の一つが、
不自然に伸びた。
ステラ「……あの影」
伸びた影が、
急に人型に近い形を作って、
床から浮き上がった。
クリス「敵だ」
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影の生物が、
虎に向かって、
腕を伸ばしてきた。
虎はそれを避けようとしたが、
影は柱の影に紛れて、
一瞬で消えた。
虎「……逃げたか」
クリス「いや、違う。別の影に、移動しただけだ」
離れた場所の影が、
再び動き出した。
ステラが、
その動きを観察しながら言った。
ステラ「光の当たっていない場所を、渡り歩いているようです」
虎「影から影へ、瞬間移動しているのか」
クリス「おそらく、そうだ。光の届く場所には、出てこられない」
虎
虎(それなら、対処法はある)
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虎「クリス、光を集められるか」
クリス「できる。だが、範囲は限られる」
虎「十分だ」
クリスが杖を掲げて、
光の玉を、
いくつも生み出した。
光の玉が、
柱の合間の暗がりを、
次々と照らしていった。
影の逃げ場が、
少しずつ狭まっていく。
影の生物が、
慌てたように、
残った暗がりを求めて動いた。
ステラ「あちらです」
虎「見えた」
虎は光の届かない、
最後の影に向かって、
一気に距離を詰めた。
影が、
逃げ切れずに、
実体を伴って現れた。
黒い霧のような体に、
赤い目だけが浮かんでいる。
虎はその体を、
正面から掴んだ。
虎「捕まえた」
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クリスが、
さらに光を強めた。
光に包まれると、
影の体が、
少しずつ薄くなっていき、
やがて完全に消えた。
ステラ「……倒せましたね」
虎「光で、追い詰めるのが、正解だったな」
だが、
すぐに、
別の影が動き出した。
一体だけではなく、
複数の影が、
同時に活動を始めていた。
クリス「……数が、多い。一度に、全部の影を、照らすのは難しい」
虎「分担しよう」
ステラが、
自分の周囲に、
細い光の糸を、
張り巡らせた。
ステラ「私の周りには、寄せ付けません」
虎は、
クリスの光を頼りに、
影を一体ずつ、
確実に仕留めていった。
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しばらく戦い続けて、
ようやく、
影の気配が静まった。
ステラ「……終わったでしょうか」
虎「気配は、感じない」
クリス「一区切り、ついたようだ」
三人は、
その場に座り込んで、
一息ついた。
ステラが荷物から、
森で採った木の実を、
取り出した。
ステラ「戦いの後は、これを」
虎は一口食べた。
虎「……」
爽やかな酸味が、
戦いで乾いた喉に、
心地よく染み渡った。
森で食べた時よりも、
今この瞬間の方が、
その味わいが、
はっきりと感じられる気がした。
虎「……うまい。緊張の後の一口は、いつもより、味が濃く感じるな」
ステラ「持ってきて、正解でした」
クリスも一口かじりながら言った。
クリス「……こういう時の食事は、疲れが、抜けていく感じがする」
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休憩を終えて、
柱の間を、
さらに奥へと進んだ。
ステラが、
床の一角を指差した。
ステラ「……あそこ、様子が違います」
柱の並びが途切れた場所に、
古い紋様の刻まれた、
石の台座があった。
虎「祭壇のようなものか」
クリスが近づいて、
紋様を確認した。
クリス「……これは、古い言語だ。読める部分がある」
クリス「『影を統べる者、光を恐れず、進むべし』」
虎「今の試練の、答えみたいなものだな」
クリス「後から、種明かしをされている感じだ」
台座の奥に、
さらに上へと続く、
通路が見えた。
虎「次だな」
ステラ「はい」
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通路を進みながら、
クリスが静かに言った。
クリス「……この塔、階層ごとに、明確な意図がある。試す力が、それぞれ違う」
虎「森は、気配を読む力。ここは、光と影を、使い分ける力」
虎(次は、何が試されるんだろうな)
虎(面白くなってきた)
三人は、
新しい通路の先に、
まだ見ぬ光景が待っていることを感じながら、
足を進めていった。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「柱の階層、突破しましたね」
虎「光を使うのが、鍵だった」
ステラ「クリスさんの光魔法が、活躍しました」
クリス「……役に立てて、よかった」
虎「次は、また違う試練だろうな」
ステラ「……おおむね、まだまだ先は長そうです」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、次の試練を越える』」
虎「今度は、何が待っているか」
ステラ「はい。楽しみですね」




