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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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80/112

第80話「虎が、鉄塔を見上げる」


翌朝早く出発すると、

昼過ぎには鉄塔の麓に到着した。


近くで見ると、

その大きさは想像以上だった。


金属質の表面には、

苔のような植物が絡みつき、

長い年月を物語っていた。


ステラ「……見上げても、頂上が見えません」

虎「かなりの高さだな」


……………………………………………………………………………………………


麓の少し離れた場所に、

小さな集落があった。


粗末な木造の家が数軒、

寄り添うように建っている。


住民の一人が、

虎たちに気づいて、

警戒した様子で近づいてきた。


住民「……旅人か。まさか、あの塔に用があるのか」

虎「そうだ」


住民が、

少し表情を曇らせた。


……………………………………………………………………………………………


住民「やめておいた方がいい。あそこに入って、無事に戻ってきた者は、いないんだ」

ステラ「そんなに、危険なのですか」

住民「危険というより……跳ね返される、という方が近いかもしれん」


虎「跳ね返される」

住民「財宝があると噂を聞いて、何人もの冒険者が挑んだ。だが、みんな、途中で追い出されたように、外に放り出されて戻ってきた」


……………………………………………………………………………………………


クリスが興味深そうに聞いた。


クリス「怪我をした者は」

住民「不思議と、大怪我はしない。ただ、二度と、挑もうとはしなくなる」


虎(面白い話だ)


虎(力ずくの脅威ではなく、何か別の仕組みがあるのかもしれない)


……………………………………………………………………………………………


住民が続けた。


住民「あの塔は、昔は、ただの石柱だったと、爺さんから聞いたことがある。それが、いつの間にか、あんな姿になったんだと」

虎「石柱が、成長した、ということか」

住民「そう言われている。何百年、何千年とかけて、少しずつな」


クリスが小さくつぶやいた。


クリス「……三千年、か」


……………………………………………………………………………………………


集落の広場で、

話を聞きながら、

一軒の食堂に案内された。


店主が、

干し肉を使ったスープを、

出してくれた。


……………………………………………………………………………………………


虎は一口飲んだ。


虎「……」


塩気の強いスープで、

干し肉の旨みが、

じっくり溶け出していた。

荒野の粗末な暮らしの中で作られた味らしく、

派手さはなかったが、

体の奥にしっかり染み込むような、

実直な味だった。


虎「……うまい。飾らないが、いい味だ」

店主「この辺りでは、これしか作れないんでね」


ステラも一口飲んだ。


ステラ「……素朴ですが、温まります」


……………………………………………………………………………………………


食事をしながら、

店主がさらに話してくれた。


店主「塔に挑んだ連中は、みんな、口を揃えて言うんだ。中に、いくつも、試練がある、と」

虎「試練」

店主「森みたいな階層があったり、柱がたくさん並んだ階層があったり。詳しくは、誰も、最後まで語れないがね」


虎(階層ごとに、違う環境か)


虎(面白い作りだ)


……………………………………………………………………………………………


クリスが、

考え込むように言った。


クリス「……単純な防衛機構ではなさそうだ。何かの意図があって、こういう構造になっている」

虎「意図とは」

クリス「わからない。だが、資格のある者だけを、上に通す仕組み、というのは、あり得る」


……………………………………………………………………………………………


食後、

店主に礼を言って、

再び塔の前に立った。


近くで見上げると、

入り口らしき裂け目が、

根元に見えた。


ステラ「……あそこから、入れそうですね」

虎「ああ」


……………………………………………………………………………………………


虎は入り口の前で、

一度、

中の気配を探ってみた。


虎(静かだ。だが、確かに、何かが、うごめいている)


虎(力任せに突破するより、慎重に進んだ方がいいだろう)


クリスが杖を構えながら言った。


クリス「準備は、いいか」

虎「ああ」

ステラ「私も」


……………………………………………………………………………………………


だが、

日が傾き始めていたので、

今日はここまでにして、

麓で野営することにした。


集落の外れに、

テントを張った。


ステラが、

荷物から最後の携帯食を取り出した。


……………………………………………………………………………………………


虎は一口食べた。


虎「……」


もう何度も食べてきた保存食の味だったが、

明日への準備の時間だと思うと、

不思議と、

落ち着く味に感じられた。

噛むほどに出てくる旨みが、

これからの探索への、

静かな覚悟を促してくるようだった。


虎「……この味も、悪くない。慣れてきたな」

ステラ「もう、旅の相棒のような味ですね」


……………………………………………………………………………………………


クリスが、

塔の方角を見ながら言った。


クリス「……明日、あの中に入る」

虎「ああ」

クリス「何が待っているにせよ、行くしかない」


虎(月文明の手がかりが、あの中にある)


虎(アショカの柱に、封じられていたものが)


……………………………………………………………………………………………


夜、

焚き火の前で、

ステラが虎に言った。


ステラ「虎様、緊張していますか」

虎「していない」

ステラ「……そうですか」

虎「だが、楽しみにはしている」


ステラが少し笑った。


ステラ「その言い方、虎様らしいです」


……………………………………………………………………………………………


星が、

鉄塔の輪郭を、

静かに照らしていた。


三人は焚き火を囲みながら、

明日からの探索に備えて、

早めに休むことにした。


虎(さて、どんな試練が、待っているか)


夜が、

荒野を、

静かに包んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「塔の噂、興味深いものでしたね」

虎「跳ね返される、というのが気になる」

ステラ「階層ごとに、違う環境があるようです」

虎「森や、柱の階層、と言っていたな」

クリス「……いよいよ、明日、中に入る」

虎「そうだ」

ステラ「……おおむね、準備は整いました」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、森林階層に挑む』」

虎「最初の試練だな」

ステラ「はい。楽しみですね」

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