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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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79/112

第79話「虎が、荒野を進む」

街道の終点を過ぎると、

景色が一変した。


緑がほとんどなく、

乾いた岩と土だけが、

どこまでも続いている。


ステラ「……ここからは、地図にない道ですね」

虎「ああ」


クリスが杖を軽くかざして、

周囲の魔力を確認した。


クリス「……独特な気配がする。街とは、違う種類の静けさだ」


風が、

砂埃を巻き上げながら吹いていた。


虎は目を細めて、

遠くを見渡した。


虎(生き物の気配が、少ない)


虎(一万年前にも、こういう場所はあった)


ステラが荷物を確認しながら言った。


ステラ「保存食は、十分にあります。水も、街で補充してきました」

虎「頼りにしている」


……………………………………………………………………………………………


一日目の道のりは、

特に何事もなく進んだ。


岩場を越え、

乾いた川底のような場所を通り、

夕方には野営することになった。


クリスが焚き火の準備をしながら言った。


クリス「……この辺りの土、少し変わっている。魔力が、うっすら残っている感じがする」

虎「何かの痕跡か」

クリス「はっきりとは、わからない。だが、無視できない」


夜、

携帯食を分け合った。


ステラが乾燥させた肉と、

硬いパンを取り出した。


虎は一口食べた。


虎「……」


塩気が強く、

噛むほどに、

凝縮された肉の旨みが出てきた。

パンは硬かったが、

水分を含んだ肉と一緒に食べると、

ちょうどいい食べ応えになる。

街の食事に比べれば地味だったが、

体を支えるには十分な味だった。


虎「……悪くない。長旅向きの味だ」

ステラ「街で選んでもらった、保存性の高いものです」


クリスも一口食べながら言った。


クリス「……派手さはないが、力が入る味だな」


……………………………………………………………………………………………


二日目、

三日目と、

荒野を進んだ。


道のりは単調だったが、

時折、

奇妙な岩の形や、

古い建造物の跡らしきものが、

見つかった。


ステラが一つの岩を見て言った。


ステラ「……この模様、人工的な気がします」

虎「見せてくれ」


近づいて確認すると、

かすかに文字のようなものが、

刻まれていた。


虎「……読めない。摩耗しすぎている」


クリスが岩に手を触れた。


クリス「……古い。相当、古いものだ」

虎「関係あるものか」

クリス「わからない。だが、この辺り一帯、何かの痕跡が、散らばっている気がする」


虎(アショカの柱に、近づいている証拠かもしれない)


……………………………………………………………………………………………


五日目の昼、

食事の時間になった。


今日は少し趣向を変えて、

ステラが道中で見つけた、

食べられる根菜を、

火であぶることにした。


ステラ「街の司書さんに教わった食材です。この辺りに自生していると聞いていました」


虎は一口食べた。


虎「……」


素朴な甘みがあり、

噛むとほくほくとした食感が広がった。

保存食の塩気とは違う、

自然な味わいが、

荒野の中で妙に新鮮に感じられた。


虎「……うまい。荒野にも、うまいものがあるんだな」

ステラ「見つけられて、よかったです」


クリスも一口かじった。


クリス「……素朴だが、悪くない」


食後、

再び歩き始めた。


虎が、

ふと足を止めた。


虎「……あれか」


遠くの地平線に、

何か巨大なものが、

そびえ立っているのが見えた。


ステラも、

その方向を見た。


ステラ「……あれは」


……………………………………………………………………………………………


輪郭は、

まだはっきりしなかったが、

それは明らかに、

自然物ではなかった。


金属質の光沢を放ち、

天に向かって、

まっすぐに伸びている。


クリスが、

杖を強く握った。


クリス「……あれだ」

虎「間違いないか」

クリス「魔力の反応が、あそこから、はっきり感じられる。今までの、どの痕跡よりも、強い」


虎(あれが、アショカの柱の、なれの果てか)


虎(想像していたより、大きい)


ステラが、

その巨大な塔を見つめながら言った。


ステラ「……あの大きさ、街の建物とは、比べ物になりませんね」

虎「そうだな」


風が、

三人の間を、

吹き抜けていった。


クリスが、

静かにつぶやいた。


クリス「……三千年前、私が眠っていた頃の記憶に、あんな景色は、なかった」

虎「変化したんだろう。長い年月をかけて」


虎は、

遠くの塔を、

じっと見つめた。


虎(あそこに、次の手がかりがある)


虎(もう少しだ)


……………………………………………………………………………………………


日が傾き始めていた。


三人は、

その日の野営地を選びながら、

塔の方向を、

何度も確認した。


ステラ「明日には、麓に着けそうですね」

虎「急ぐ必要はない。着実に進もう」


クリスが、

塔を見上げながら言った。


クリス「……あの塔の中に、何が待っているのか」


夜が来て、

遠くの塔の輪郭が、

星明かりの中に、

静かに浮かび上がっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ついに、塔が見えましたね」

虎「思ったより、大きかった」

ステラ「クリスさんも、強い反応を感じたようです」

クリス「……間違いなく、あれだ」

虎「明日には、麓に着く」

ステラ「……おおむね、予定通りの旅路です」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、鉄塔を見上げる』」

虎「いよいよ、近づくな」

ステラ「はい。楽しみですね」

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