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虎無双、虎無双。  作者: BB
7章

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78/112

第78話「虎が、未開の地へ向かう」

翌朝、

図書館に立ち寄ると、

司書が正式な書類を用意して待っていた。


司書「調査許可証です。未開拓地帯への立ち入りが、正式に認められました」


虎は書類を受け取った。


虎「ありがたい」

司書「館長からも、くれぐれもよろしくと」


館長も見送りに来ていた。


館長「アショカの柱が本当にあるなら、これは歴史的な発見になる。無事に戻ってきてくれ」

虎「必ず戻る」


クリスが地図を広げながら言った。


クリス「未開拓地帯までは、街道の終点から、さらに歩くことになる」

ステラ「どのくらいかかりますか」

司書「馬車が使える範囲を過ぎると、あとは徒歩です。二週間ほどを見込んでください」


……………………………………………………………………………………………


準備のため、

一旦街に戻って買い出しをすることにした。


市場では、

すでに旅立ちの噂が広まっていたらしく、

何人もの住民が声をかけてきた。


商人A「未開拓地帯に行くんだって? 保存食、うちのが一番だぞ」

商人B「うちの防寒具も見ていってくれ、あの辺りは夜が冷えるからな」


虎(この街は、噂の回るのが早いな)


でこぼこ饅頭の店主も、

店先から声をかけてきた。


店主「祭りの後、すぐ旅立ちか。寂しくなるな」

虎「また来る」

店主「約束だぞ。土産に、日持ちする饅頭、持っていけ」


店主が包みを差し出してきた。


ノラも、

案内所から駆けつけてきた。


ノラ「間に合ってよかった。これ、街のみんなから」


寄せ書きの入った布と、

小さな飾りが手渡された。


ステラ「……ありがとうございます」

ノラ「でこボコまつり、また開催したら、必ず報告しますね」

虎「楽しみにしている」


……………………………………………………………………………………………


昼、

最後の食事に、

ゴリアスたちと出会ったあの庭園近くの食堂に立ち寄った。


店主が、

虎たちを見て笑った。


店主「旅立つ前の腹ごしらえか。今日は特別に、腹に溜まるやつを出してやる」


運ばれてきたのは、

干し肉と穀物を煮込んだ、

濃厚なシチューだった。


虎は一口食べた。


虎「……」


干し肉の旨みが濃く煮出されていて、

穀物がそれを吸い込んで、

ずっしりとした満足感になっていた。

長旅を前提にした味付けなのか、

塩気がしっかりしていて、

体に力が入るような感覚があった。


虎「……うまい。これなら、道中も、腹が持ちそうだ」

店主「未開の地は、うまいものにありつけないだろうからな。今のうちに食っておけ」


ステラも一口飲んだ。


ステラ「……確かに、力の出る味です」

クリス「街を離れる前に、こういう味を覚えておくのも悪くない」


虎(この街には、本当に世話になった)


虎(また、いつか戻ってくる)


……………………………………………………………………………………………


食後、

街の門まで歩いた。


案内係が、

そこで待っていた。


案内係「聞いたぞ、未開拓地帯に行くんだってな」

虎「ああ」

案内係「気をつけてな。あそこは、この街の連中でも、めったに足を踏み入れない場所だ」


虎「面白そうな場所だ」

案内係「相変わらずだな、あんた」


案内係が笑って、

最後に大きな声で言った。


案内係「街の器が大きいのは、また来た時にも、変わらないからな! いつでも戻ってこい!」


虎「そうする」


門をくぐると、

街道の先に、

緑の少ない、

荒涼とした地形が見え始めていた。


……………………………………………………………………………………………


しばらく歩いて、

街が遠くなった頃、

ステラが振り返った。


ステラ「……いい街でしたね」

虎「ああ」


クリスが地図を確認しながら言った。


クリス「ここから先、道が細くなる。街道の終点まで、あと三日ほどだ」

虎「わかった」


夕方、

街道の途中で野営することになった。


ステラが荷物から、

店主にもらった饅頭を取り出した。


ステラ「今夜は、これを」


火を起こして、

軽く温めてから、

三人で分けた。


……………………………………………………………………………………………


虎は一口食べた。


虎「……」


祭りの日に食べたものより、

少し甘みが控えめになっていた。

保存を考えた配合なのか、

生地がしっかりしていて、

噛むほどに、

じんわりとした甘さが出てきた。

温めたことで、

香りが立って、

街の記憶が、

そのまま口の中に戻ってくるようだった。


虎「……うまい。あの街の味を、持ってきたみたいだ」

ステラ「保存食にしても、丁寧な味ですね」


クリスも一口食べながら言った。


クリス「……この味も、覚えておく」


……………………………………………………………………………………………


夜が更けて、

焚き火の周りで、

虎は空を見上げた。


星がいつもより多く見えた。


虎(未開拓地帯には、何が待っているのか)


虎(アショカの柱が見つかれば、月文明の手がかりに、また近づける)


ステラが虎の隣に座った。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「新しい旅、楽しみですね」

虎「ああ」


クリスが焚き火に、

薪をくべながら言った。


クリス「……月文明の記憶が、少しずつ繋がっていく感覚がある」

虎「そうか」

クリス「三千年前の私には、わからなかったことが、この旅で見えてくる」


虎(面白い旅になっている)


虎(一万年前の俺には、想像もできなかった道のりだ)


……………………………………………………………………………………………


焚き火が、

夜の闇の中で静かに揺れていた。


三人の影が、

地面に長く伸びている。


虎は目を閉じて、

明日からの道のりを思った。


ステラ「おやすみなさい、虎様」

虎「ああ、おやすみ」


夜の未開拓地帯への道が、

静かに三人を待っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「街のみんな、温かく見送ってくれましたね」

虎「世話になった」

ステラ「饅頭の味、街の記憶そのものでした」

虎「うまかった」

クリス「……未開拓地帯まで、あと少しだな」

虎「そうだ」

ステラ「……おおむね、順調な旅立ちです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、荒野を進む』」

虎「どんな地形が待っているか」

ステラ「はい。楽しみですね」

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