第77話「虎が、祭りを見守る」
当日の朝、
広場はすでに賑わい始めていた。
屋台が並び、
色とりどりの旗が風に揺れている。
中央に大きな看板が立っていた。
『でこボコまつり』
ノラがその下で、
最終確認をしていた。
ノラ「準備、整いました。あとはお客さんを待つだけです」
虎「賑やかになりそうだな」
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開始時刻になると、
人々が続々と集まってきた。
ビッグ人とノーマルサイズの人が入り混じって、
広場に広がっていく。
司会役のボランティアが声を張り上げた。
司会「さあ、でこボコまつり、開幕です! ペアを組んでスタンプを集めよう!」
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虎とステラ、
クリスは広場の隅からその様子を見守っていた。
ステラ「……たくさんの人が来ましたね」
虎「思った以上だ」
近くで親子連れが受付に並んでいた。
母親「ほら、あの大きいお兄さんと組んでみたら」
子供「うん!」
子供がビッグ人の若者に駆け寄っていった。
若者「よし、俺と組もうか」
子供「よろしくお願いします!」
二人で自己紹介をして写真を撮っている。
その姿をノラが遠くから嬉しそうに眺めていた。
ノラ「……あちこちで、あんな光景が」
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スタンプラリーの列にも人が並んでいた。
一組のペアが最初のスタンプを押してもらって、
歓声をあげている。
ペアの片方「やった、一つ目!」
もう片方「次はどこ行く?」
虎がその様子を見ながらつぶやいた。
虎「単純な仕組みだが、うまく回っているな」
クリス「参加すること自体が目的になっている」
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昼過ぎ、
広場の中心で写真撮影のミッションに挑戦する人々が増えていた。
出身地を紹介し合っている一組が目に入った。
ビッグ人「俺は北の山岳地帯の出身だ」
ノーマルの相手「へえ、私はこの街の生まれです」
ビッグ人「じゃあ、あんたの方が街に詳しいな」
二人が笑い合いながら写真に収まっていた。
ステラがその様子を見て静かに言った。
ステラ「……出身地を話すだけで、こんなに打ち解けるんですね」
虎「共通点を探す作業だからな」
虎(一万年前の人間は違いを見つけて争っていた)
虎(今のこの街は違いを面白がっている)
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屋台の一角で、
ノラが虎たちを手招きした。
ノラ「少し休憩しませんか。あの店、開店したばかりなんです」
案内された屋台に、
でこぼこ饅頭の店主が立っていた。
店主「よう、来たか。今日は特別メニューを用意したぞ」
出てきたのは、
大小の具材を組み合わせた串焼きだった。
大きな肉と小さな野菜が交互に刺さっている。
虎は一本受け取って食べた。
虎「……」
大きな肉はしっかりとした噛み応えで、
噛むたびに濃厚な旨みが出た。
小さな野菜はその合間に、
さっぱりとした甘みを差し込んでくる。
交互に食べることで、
飽きのこない味わいが続いていった。
虎「……面白い串だ。大小の食材が、いいバランスになっている」
店主「祭りのテーマに合わせてみたんだ」
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ステラも一本食べた。
ステラ「……確かに、大きさが違うと味の感じ方も変わりますね」
ノラ「祭りの空気にぴったりです」
クリスが静かに言った。
クリス「……この街の食べ物は、いつも意味を持たせてくる」
食べながら広場を見渡すと、
さらに人が増えていた。
子供たちが動物の絵合わせスタンプを、
夢中で集めている。
子供D「あと一個でコンプリートだ!」
子供E「僕も頑張る!」
その隣で親たちが、
微笑ましそうに見守っていた。
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夕方近く、
広場の中央で抽選会が始まった。
司会「本日のペアミッション、達成した皆さん、抽選にご参加ください!」
多くのペアが列を作っていた。
一組が当たりを引いて歓声をあげた。
ペア「やった、大当たりだ!」
ノラが虎の隣で感慨深そうに言った。
ノラ「……本当に、こんなに人が来るなんて」
虎「街には、もともと下地があった」
ノラ「虎さんたちが来てくれたおかげです」
虎「俺は少し口を出しただけだ」
ノラ「それでも十分です」
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日が沈む頃、
広場に灯りがともり始めた。
祭りはまだ続いていたが、
少しずつ落ち着いた雰囲気に変わっていった。
親子連れが帰り支度をしながら話していた。
子供「今日、楽しかった! また来年も来る!」
母親「そうね、来年もあるといいわね」
虎はその光景を静かに眺めていた。
虎(また来年、か)
虎(この祭りが続いていくなら、それでいい)
ステラが虎の隣に立った。
ステラ「虎様」
虎「何だ」
ステラ「いい祭りになりましたね」
虎「ああ」
クリスが夜空を見上げながらつぶやいた。
クリス「……こういう場所を、旅の途中で作れるとは思っていなかった」
虎「悪くない経験だった」
灯りに照らされた広場で、
まだ笑い声が響いていた。
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その夜、
案内所で最後の片付けをしていると、
司書からの伝言が届いた。
未開拓地帯への調査許可が、
正式に下りたという知らせだった。
虎「……来たか」
ステラ「いよいよ、アショカの柱ですね」
ノラが虎たちを見て、
少し寂しそうに笑った。
ノラ「もう、出発するんですね」
虎「ああ。だが、いい滞在だった」
ノラ「デカ……いえ、でこボコまつり、これからも続けていきます」
虎「頼む」
外に出ると星がきれいに見えていた。
虎(この街での経験も、次の旅に繋がっていくんだろう)
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「祭り、大成功でしたね」
虎「たくさんのいい光景が見られた」
ステラ「調査許可も下りましたね」
虎「いよいよ未開拓地帯だ」
クリス「……アショカの柱、見つかるといいが」
虎「見つける」
ステラ「……おおむね、次の旅へのいい区切りになりました」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、未開の地へ向かう』」
虎「新しい旅の始まりだな」
ステラ「はい。楽しみですね」




