第76話「虎が、街に触れ回る」
翌朝、
案内所に、
大量のポスターが、
積み上がっていた。
ノラが、
それを見て、
少し圧倒された顔をした。
ノラ「……こんなに、刷ってしまいました」
虎「配れば、問題ない」
ステラが、
ポスターを一枚、
手に取った。
でこぼこした文字で、
『でこボコまつり』
と、
大きく書かれている。
ステラ「……いい仕上がりですね」
ノラ「印刷屋さんが、頑張ってくれて」
……………………………………………………………………………………………
四人で、
ポスターを、
街の各所に、
貼って回ることになった。
虎は、
ビッグ人向けの、
高い場所を、
担当した。
虎「ここでいいか」
ノラ「はい、その辺りが、目線の高さです」
虎が、
軽々と、
高い壁に、
ポスターを、
貼っていく。
ノラ「……脚立、要らないんですね」
虎「その通りだ」
……………………………………………………………………………………………
大通りを歩いていると、
昨日の屋台の店主が、
虎たちに気づいた。
店主「おっ、また来たな。今度は何してるんだ」
虎「祭りの宣伝だ」
虎が、
ポスターを見せた。
店主「でこボコまつり……いいじゃねえか、それ!」
虎「気に入ったか」
店主「うちの店にも、貼らせてくれ!」
……………………………………………………………………………………………
店主が、
店先の目立つ場所に、
ポスターを、
貼ってくれた。
通りかかった客が、
それを見て、
声をあげた。
客「あ、これ、あの活動か。前より、面白そうだな」
店主「だろ! 行ってみろよ!」
ノラが、
その様子を、
嬉しそうに見ていた。
ノラ「……反応が、全然、違います」
……………………………………………………………………………………………
職人街にも、
足を伸ばした。
鍛冶屋の店主が、
ポスターを見て、
にやりと笑った。
鍛冶屋「でこボコまつり、か。俺とうちの弟子で、参加してみるかな」
鍛冶屋の店には、
ビッグ人の店主と、
ノーマルサイズの弟子が、
一緒に働いていた。
鍛冶屋「俺たち、まさに、でこぼこコンビだからな」
……………………………………………………………………………………………
クリスが、
杖を軽く振りながら、
静かに言った。
クリス「……この街には、そもそも、こういうペアが、たくさんいる」
虎「そうだな」
クリス「祭りは、それを、目に見える形にするだけで、いい」
虎(クリスの言う通りだ)
虎(この街には、もともと、素材が、揃っている)
……………………………………………………………………………………………
昼過ぎ、
広場の噴水近くで、
子供たちの一団に、
出くわした。
子供A「なにそれ、でこボコまつり!?」
子供B「面白そう! 行きたい!」
ノラが、
しゃがんで、
子供たちに、
説明した。
ノラ「ビッグ人のお兄さんと、ノーマルの子で、ペアを組んで、色々な、ゲームをするお祭りなの」
子供C「じゃあ、僕、あそこにいる、大きいお兄さんと、組めるかな!」
……………………………………………………………………………………………
子供が指差した先に、
ビッグ人の若者が、
立っていた。
その若者が、
子供の視線に気づいて、
手を振った。
ビッグ人の若者「おう、坊主、来るか」
子供C「行く!」
ノラが、
その様子を見て、
目を細めた。
ノラ「……こういう光景が、当日、たくさん見られたら、いいですね」
……………………………………………………………………………………………
夕方近く、
一通りの宣伝を、
終えた。
疲れた体を、
休めるため、
案内所近くの、
軽食屋に、
寄ることになった。
店の看板に、
『でこぼこ饅頭』
という、
新しいメニューが、
出ていた。
……………………………………………………………………………………………
店主が、
説明してくれた。
店主「祭りの噂を聞いてね、あやかって、作ってみたんだ。大きい饅頭と、小さい饅頭を、一緒に、蒸してある」
虎は、
大小の饅頭を、
それぞれ食べた。
虎「……」
大きい方は、
しっかりとした、
食べ応えのある、
甘さで、
小さい方は、
それよりも、
繊細で、
上品な、
甘みだった。
二つを、
交互に食べると、
不思議と、
味の対比が、
面白く感じられた。
虎「……面白い食べ方だな。大小で、違う甘さになっている」
店主「そうなんだよ。同じ生地なのに、蒸し時間で、味わいが、変わってくる」
……………………………………………………………………………………………
ノラも、
両方食べて、
うなずいた。
ノラ「……これ、当日、屋台で、出してもらえたら、盛り上がりそうです」
店主「もちろんだ、任せておけ」
ステラが、
小さい方の饅頭を、
食べながら言った。
ステラ「……この対比、祭りのテーマにも、合っていますね」
……………………………………………………………………………………………
宣伝の一日を、
振り返りながら、
四人は、
案内所に、
戻った。
ノラが、
虎に言った。
ノラ「今日だけで、こんなに、反応があるとは、思っていませんでした」
虎「名前が、伝わりやすくなったからだろう」
……………………………………………………………………………………………
夜、
案内所の灯りの下で、
最後の確認を、
した。
ノラ「あと二週間ちょっとです。準備、進めていきましょう」
虎「ああ」
クリスが、
静かに言った。
クリス「……子供たちの反応が、特にいいのが、印象的だった」
虎「そうだな」
虎(この調子なら、いい祭りに、なりそうだ)
……………………………………………………………………………………………
外に出ると、
街の灯りが、
賑やかに、
輝いていた。
ステラが、
虎に言った。
ステラ「虎様、明日も、宣伝を、続けますか」
虎「ああ。まだ、伝えていない場所が、あるだろう」
ステラ「はい」
夜風が、
案内所の、
ポスターを、
そっと、
揺らしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「街の反応、上々でしたね」
虎「名前を、変えた甲斐があった」
ステラ「でこぼこ饅頭、面白い食べ物でした」
虎「大小で、味が変わるのが、面白かった」
クリス「……子供たちの、期待も、大きいようだ」
虎「祭り当日が、楽しみになってきた」
ステラ「あと少しで、当日ですね」
虎「準備を、進めよう」
ステラ「……おおむね、順調な滑り出しです」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、祭りを見守る』」
虎「いよいよ、本番だな」
ステラ「はい。楽しみですね」




