第75話「虎が、企画を練る」
翌朝、
虎たちは案内所に、
また顔を出した。
ノラが、
すでに机に向かって、
何やら書き物をしていた。
ノラ「おはようございます。昨日のお話、少し考えてみたんです」
虎「どうだった」
ノラ「……名前、変えてみようかと」
テーブルの上に、
紙が何枚も広げられていた。
ノラ「候補を、いくつか考えてみたんですけど」
紙には、
『ビッグ・ノーマル親善デー』
『みんなで仲良し交流会』
などと書かれていた。
虎「……まだ、長い」
ノラ「……そうですか」
ステラが紙を眺めながら言った。
ステラ「短くて、印象に残る言葉がいいと思います」
クリス「音の響きも大事だ」
虎はしばらく考え込んだ。
虎「……大小が、混ざり合う感じの言葉が、いいんじゃないか」
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ノラが、
少し考えてから、
つぶやいた。
ノラ「……『でこボコ』、なんて、どうでしょう」
虎「でこボコ」
ノラ「大きい人と、小さい人が、並ぶと、でこぼこして見えるじゃないですか。それを、逆に、いい意味で、使えたらって」
虎(悪くない響きだな)
虎「『でこボコまつり』、それでいいんじゃないか」
ノラが、
その言葉を、
何度か口にしてみた。
ノラ「……でこボコまつり。……いいですね、これ」
案内所の奥から、
ボランティアの一人が、
顔を出した。
ボランティア「なんか、盛り上がってますね」
ノラ「新しい名前、決まったんです。でこボコまつり」
ボランティア「あ、いいですね、それ。子供でも覚えられそうです」
虎(悪くない反応だな)
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名前が決まったところで、
次は内容の話に移った。
ノラ「名前はいいとして、実際の内容も変えた方がいいでしょうか」
虎「今までは、どんなことをしていた」
ノラが過去の資料をめくった。
ノラ「講演を聞いて、意見交換をする、という形式でした」
虎「地味だな」
ノラ「……はい、正直」
クリスが静かに言った。
クリス「……人が集まるには、参加すること自体が楽しくなければいけない」
虎「そうだな」
虎は昨日見た街の様子を思い出していた。
虎(この街の連中は、豪快で、賑やかなのが好きなはずだ)
虎(それなら、堅苦しい形式より、遊びの要素があった方がいい)
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虎「ペアを組んで、何かをこなす形式は、どうだ」
ノラ「ペア、ですか」
虎「ビッグ人と、ノーマルサイズの人を組ませる。ミッションをこなすたびに、何かもらえるようにする」
ステラが興味を持って続けた。
ステラ「……例えば、ペアで屋台に行くと、ドリンクサービスがある、とか」
ノラ「あ、いいですね……!」
案が次々と出始めた。
ボランティア「抽選券を配るのも、いいかもしれません」
ノラ「お互いの名前と出身地を紹介して、写真を撮ったら、ミッション達成、とか」
虎「スタンプラリーもいいな」
ステラ「スタンプを集めると、食券がもらえるとか」
ノラが紙にメモを取りながら、
興奮気味に言った。
ノラ「……こんなに案が出るとは、思っていませんでした」
虎「一人で考えるより、何人かで話した方が、案は出やすい」
クリスが静かに付け加えた。
クリス「……子供の参加も増やしたいのなら、簡単なミッションと、目立つ景品があった方がいいだろう」
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ノラ「子供、確かに、もっと増やしたいです。今の活動、大人ばかりで」
虎「子供が楽しめる仕掛けを作れば、親も一緒に来る」
ノラ「……なるほど」
ノラが新しい紙に、
子供向けの案を書き始めた。
ノラ「動物の絵合わせスタンプ、とか、どうでしょう」
ステラ「可愛らしいですね」
昼になり、
議論が一段落したところで、
みんなで昼食をとることにした。
案内所の近くにある、
軽食屋台に向かった。
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屋台の店主が、
串に刺した肉と野菜を、
炭火で焼いていた。
虎は一本受け取って、
かじった。
虎「……」
塩とスパイスがシンプルに効いていて、
炭火の香りが食欲をそそった。
噛むほどに、
肉の旨みと野菜の甘みが、
交互に口の中を満たしていく。
虎「……うまい。企画会議の後の飯は、格別だな」
ノラも一本食べた。
ノラ「……本当に、おいしいです。それに、なんだか、今日は、いつもより食事がおいしく感じます」
ステラ「アイデアが出ると、気持ちも明るくなりますよね」
クリスが串を食べながら、
静かに言った。
クリス「……こういう、みんなで作り上げる時間は、悪くない」
虎(一万年前には、こういう場に加わることはなかった)
虎(一人で、強さだけを求めていた頃には、こういう楽しさは知らなかったな)
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食後、
案内所に戻って、
企画の詳細を詰めていった。
ノラ「開催まで、あと三週間ほどあります。準備、間に合いそうでしょうか」
虎「街に、触れ回る必要がある」
ノラ「宣伝、ですね」
ステラが言った。
ステラ「ポスター作りと、街の人への声かけ、両方進めましょう」
ノラ「はい、お願いします」
夕方になり、
今日の話し合いはそこで終わりとなった。
ノラが虎たちに、
深く頭を下げた。
ノラ「本当に、今日はありがとうございました。でこボコまつり、きっと成功させます」
虎「明日から宣伝だな」
ノラ「はい……!」
外に出ると、
夕日が街を染めていた。
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ステラが虎に言った。
ステラ「虎様、いい企画になりそうですね」
虎「あとは、街に、どれだけ伝わるかだ」
ステラ「……おおむね、期待できそうです」
虎「おおむね、か」
虎(子供が、たくさん集まって、笑顔になれる祭りになるといいな)
夜風が、
案内所の看板を揺らしていた。
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ステラ「次回予告です」
虎「ああ」
ステラ「でこボコまつり、いい名前が決まりましたね」
虎「ノラも気に入ってくれた」
ステラ「ペアミッションの案も、盛り上がりました」
虎「あとは、宣伝が鍵になる」
クリス「……子供向けの仕掛けも、忘れずに」
虎「わかっている」
ステラ「明日から、街に触れ回るんですね」
虎「そうだ」
ステラ「……おおむね、賑やかな展開になりそうです」
虎「おおむね、か」
ステラ「おおむね、です」
虎「次の予告をしてくれ」
ステラ「次回、『虎が、街に触れ回る』」
虎「どれだけ人が集まるか」
ステラ「はい。楽しみですね」




