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虎無双、虎無双。  作者: BB
6章

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74/112

第74話「虎が、街を歩き回る」

翌朝、

虎たちは特に予定もなく、

街を歩いていた。


大通りを外れた静かな区画に、

差し掛かった。


そこに古びた掲示板が立っていた。


ステラが足を止めて、

掲示板を見た。


ステラ「……何か貼ってありますね」


『ビッグ・ノーマル相互理解促進地域交流委員会、参加者募集』


長い名前がびっしりと書かれていた。


虎「……長いな」

クリス「読むのに少し時間がかかる名前だ」


……………………………………………………………………………………………


掲示板の下に、

小さな案内所が併設されていた。


中から一人の女性が顔を出した。


疲れた様子だったが、

明るく声をかけてきた。


女性「あら、興味ありますか」

ステラ「その、名前が目に留まりまして」


女性が苦笑いした。


女性「ノラといいます。この活動を担当しているんです」

虎「虎だ」

ノラ「ビッグ人とノーマルサイズの人たちが、もっと自然に交流できるようにって、活動を続けているんですけど」


ノラが少し肩を落とした。


ノラ「正直なところ、あまり人が集まらなくて」

ステラ「そうなのですか」

ノラ「街としては共存してますし、日常的に接する機会は多いんです。でも、こういう意識的な交流の場となると、なかなか」


虎(面白そうな課題だな)


虎「詳しく聞かせてくれ」


……………………………………………………………………………………………


案内所の中に招かれた。


小さなテーブルに、

これまでの活動記録が積まれていた。


ノラ「毎月、集まりを開いているんですけど、来る人はいつも同じ顔ぶれで」

虎「新しい人が増えないのか」

ノラ「はい。掲示板を見ても、ピンと来ないみたいで」


ステラが記録を確認しながら言った。


ステラ「……確かに、活動内容が少しわかりにくいですね」

ノラ「そうなんです。真面目に、きちんと伝えようとすると、どうしても堅い言い方になってしまって」


クリスが静かに言った。


クリス「……悪くない目的だと思う。手伝わせてもらってもいいだろうか」


ノラが驚いた顔をした。


ノラ「本当ですか。助かります……!」

虎「せっかくなら、少し見学させてくれ。今日の活動は何をする」


ノラ「今日は配布用のチラシ作りです。ビッグ人向けと、ノーマル向け、両方印刷しないといけなくて」


……………………………………………………………………………………………


案内所の奥で、

数人のボランティアがチラシを折り畳んでいた。


みな真面目な顔で、

黙々と作業をしている。


虎(活気が、あまりないな)


虎(悪い雰囲気ではないが、楽しそうにも見えない)


虎とステラ、

クリスも作業に加わった。


ステラが手際よくチラシを折っていく。


ステラ「……この作業、単調ですが、確かに必要ですね」

ノラ「地道な部分ですけどね」


……………………………………………………………………………………………


しばらく作業を続けた後、

昼休憩の時間になった。


ノラが近くの食堂を案内してくれた。


食堂はビッグ人向けと、

ノーマル向けの両方の座席が用意されていた。


ノラ「ここの定食がおすすめです」


運ばれてきたのは、

魚の煮付けと炊き込みご飯の定食だった。


虎は一口食べた。


虎「……」


魚は出汁がしっかり染みていて、

噛むほどに旨みが広がった。

炊き込みご飯は具材の味が、

米粒の一つ一つに行き渡っている。

どこか、

ほっとするような家庭的な味だった。


虎「……うまい。落ち着く味だ」

ノラ「ありがとうございます。……ここも、この街の共存を象徴するお店なんです。夫婦で経営していて。一人はビッグ人、一人はノーマルサイズなんですよ」


ステラも一口食べた。


ステラ「……確かに、優しい味です」

クリス「……この街には、こういう店が多いな」


虎(この街には共存の下地は、しっかりある)


虎(だが意識的な交流となると、話は別なんだな)


……………………………………………………………………………………………


食事をしながら、

ノラが話を続けた。


ノラ「実は来月、大きな集まりを開こうと思っているんです。でも今のままだと、また参加者が少ないんじゃないかって」


虎「今の名前だと、確かに興味を持ちにくいな」

ノラ「……そう思いますか」


虎「『ビッグ・ノーマル相互理解促進地域交流委員会』、長すぎる。何をする集まりか、名前を見ただけじゃわからない」


ノラが苦笑いした。


ノラ「……正直、私もそう思ってました。でも正式な名前だから、変えられないって思い込んでいて」


ステラが興味深そうに言った。


ステラ「虎様、何かいい案がありますか」

虎「まだ、これといったものはないが」


虎(もう少し考えてみる価値はある)


虎「もう少し、この活動を手伝わせてくれ」


ノラが目を輝かせた。


ノラ「本当ですか……!」

虎「面白そうだからな」


クリスが静かに言った。


クリス「……月文明の調査は、まだ少し時間がかかる。ちょうどいい」


……………………………………………………………………………………………


午後、

再び案内所に戻った。


作業を続けながら、

ノラが虎に聞いた。


ノラ「虎さんたちは、どうしてこの街に来られたんですか」

虎「図書館で調べ物をしている」

ノラ「そうなんですね」


夕方になり、

今日の作業が一段落した。


ノラが虎たちに頭を下げた。


ノラ「今日は本当にありがとうございました。また明日も来ていただけますか」

虎「もちろんだ」


外に出ると、

夕日が街をオレンジ色に染めていた。


ステラが虎に言った。


ステラ「虎様、この活動、うまくいくといいですね」

虎「ああ。まだ考えることがありそうだが」


虎(名前だけじゃない。もっと根本的に変えられる部分があるはずだ)


虎(明日、じっくり考えてみよう)


……………………………………………………………………………………………


夜、

宿に戻る道すがら、

クリスが静かに言った。


クリス「……こういう地道な取り組み、悪くないな」

虎「そうだな」


夜風が街を静かに包んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「ノラさんの活動、手伝うことになりましたね」

虎「面白そうな課題だ」

ステラ「名前が長すぎるのが、問題の一つでしたね」

虎「他にも改善できる部分があるはずだ」

クリス「……明日は企画を練ることになりそうだな」

虎「そうだ」

ステラ「……おおむね、いい方向に進みそうです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、企画を練る』」

虎「どんな案が出るか」

ステラ「はい。楽しみですね」

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