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虎無双、虎無双。  作者: BB
6章

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73/112

第73話「虎が、街を満喫する」

翌朝、

虎たちは久しぶりに、

予定のない一日を過ごすことにした。


ステラ「調査許可が下りるまで、しばらく時間があります」

虎「それなら、この街を、もう少し見て回るか」

クリス「賛成だ」


……………………………………………………………………………………………


宿を出ると、

昨日とは違う、

朝の街の顔があった。


市場が立ち始めていて、

商人たちが、

威勢のいい声を上げている。


商人A「新鮮な野菜だぞ、でかいのから小さいのまで揃ってる!」

商人B「うちの魚は、ビッグシー産の一級品だ!」


虎「相変わらず、賑やかだな」

ステラ「この街らしいですね」


……………………………………………………………………………………………


大通りを歩いていると、

案内係の姿を見かけた。


案内係「おお、あんたたちか! 図書館は、順調そうだな」

虎「ああ、少し進展があった」

案内係「そりゃよかった。今日は、休みか」

虎「そうだ」


案内係が、

にやりと笑った。


案内係「なら、いい店を教えてやる。この街の甘味処だ。ここに来たら、外せない」


……………………………………………………………………………………………


案内された先は、

路地の奥にある、

小さな菓子屋だった。


看板には、

『栗入りヨウカン』

と書かれている。


店主が、

奥から出てきた。


店主「いらっしゃい。うちの看板商品、食べていくかい」


……………………………………………………………………………………………


店主が、

切り分けたヨウカンを、

皿に載せて出してきた。


つややかな黒い断面に、

大きな栗が、

いくつも埋まっている。


虎は一口食べた。


虎「……」


甘さが、

ずっしりと来た。

だが、

くどくない甘さで、

噛むたびに、

豆の風味が、

奥から広がってくる。

中の栗は、

ほくほくとした食感で、

その素朴な甘みが、

ヨウカンの濃厚さと、

うまく釣り合っていた。


虎「……うまい。この街の食べ物は、どれも、力強いな」

店主「だろう。うちは、栗を、大きめのまま、丸ごと入れるのが、こだわりでね」


ステラも一口食べた。


ステラ「……栗の食感が、しっかり残っていますね」


クリスが、

ヨウカンを見つめながら言った。


クリス「……この街に来てから、甘いものを、色々食べたが、これは、また違った良さがある」


……………………………………………………………………………………………


甘味処を出ると、

案内係が、

さらに、

街を案内してくれた。


大通りを外れて、

職人街と呼ばれる区画に、

足を踏み入れた。


そこには、

様々な工房が、

軒を連ねていた。


……………………………………………………………………………………………


一軒の鍛冶屋から、

金属を打つ音が、

響いていた。


案内係「ここは、腕のいい職人が、揃ってる場所だ。ビッグ人向けの道具も、ノーマル向けの道具も、両方作ってる」


鍛冶屋の店主が、

虎に気づいて、

声をかけてきた。


鍛冶屋「おっ、でかい客だな。何か、打ってほしいものでもあるか」

虎「特にないが、興味はある」

鍛冶屋「見ていくといい」


……………………………………………………………………………………………


鍛冶屋の中では、

巨大な炉と、

小さな炉が、

並んで設置されていた。


ビッグ人の職人と、

ノーマルサイズの職人が、

それぞれの炉で、

作業をしていた。


ステラ「……両方の道具を、同じ場所で、作っているんですね」

鍛冶屋「そうだ。技術を、教え合ってな。お互いのやり方から、学ぶことも多いんだよ」


……………………………………………………………………………………………


虎は、

その様子を、

興味深く見た。


虎(一万年前には、こういう技術の共有は、なかった)


虎(種族が違えば、争うことの方が、多かった)


虎(この街は、それとは、違う道を、選んでいるんだな)


クリスが、

炉の火を、

見つめながら言った。


クリス「……この街の在り方は、面白い。効率だけでなく、共存そのものを、楽しんでいる」


……………………………………………………………………………………………


昼過ぎ、

職人街の広場で、

屋台が集まる一角に、

出た。


案内係が、

一つの屋台を、

指差した。


案内係「ここの串焼き、名物なんだ。試してみな」


虎は、

一本受け取って、

食べた。


……………………………………………………………………………………………


虎「……」


炭火の香ばしさが、

まず来て、

噛むと、

肉の旨みが、

じゅわりと、

広がった。

タレの甘辛さが、

その旨みを、

さらに、

引き立てている。


虎「……うまい。この街に来て、まずいものに、当たったことがないな」

案内係「そりゃそうさ、うちの店は、みんな、腕がいいからな!」


……………………………………………………………………………………………


夕方近く、

街の中心にある、

噴水広場に、

戻ってきた。


水しぶきが、

夕日を受けて、

きらきらと、

輝いていた。


ステラが、

その光景を、

眺めながら言った。


ステラ「……いい街ですね」

虎「ああ」


……………………………………………………………………………………………


案内係が、

虎たちに、

別れを告げた。


案内係「今日は、案内できて、楽しかったぜ。図書館の方も、頑張れよ」

虎「世話になった」


案内係が、

大股で、

去っていった。


その後ろ姿を、

三人で見送った。


……………………………………………………………………………………………


宿への帰り道、

ステラが、

虎に言った。


ステラ「虎様、明日は、どうしますか」

虎「調査許可が下りるまで、まだ、時間があるらしい」

ステラ「もう少し、この街を、見て回りますか」

虎「そうだな」


クリスが、

静かに言った。


クリス「……街を歩くだけでも、月文明の手がかりが、他に、見つかるかもしれない」

虎「その可能性もある」


……………………………………………………………………………………………


夜、

宿の窓から、

図書館の灯りが、

遠くに、

見えていた。


虎(この街には、まだ、知らないことが、たくさんありそうだ)


虎(急ぐ必要はない。今は、この街を、じっくり味わおう)


ステラが、

虎の隣に来た。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「今日一日、楽しかったですね」

虎「ああ」


夜風が、

静かに、

街を包んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「栗入りヨウカン、絶品でしたね」

虎「あの甘さは、印象に残る」

ステラ「職人街も、興味深い場所でした」

虎「共存の在り方が、面白かった」

クリス「……まだ、この街には、色々、あるだろう」

虎「そうだな」

ステラ「明日も、この街を、探索する予定ですね」

虎「調査許可が下りるまでは、そうなる」

ステラ「……おおむね、まだまだ、楽しめそうです」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、街を歩き回る』」

虎「明日は、どんな発見があるか」

ステラ「はい。楽しみですね」

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