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虎無双、虎無双。  作者: BB
6章

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72/112

第72話「虎が、印を見つける」

石塚を最後まで観察し終えた頃、

視界が再び揺らぎ始めた。


ステラ「……時間、来たようですね」

虎「ああ」


三人の体が、

淡い光に包まれていく。


クリスが静かにつぶやいた。


クリス「……忘れないうちに、記憶をしっかり固定しておく」


……………………………………………………………………………………………


光が強くなり、

視界が真っ白に染まった。


気がつくと、

虎は禁書蔵書室の台座の前に立っていた。


館長が心配そうな顔で見守っていた。


館長「……戻ってきたか。無事のようだな」


……………………………………………………………………………………………


ステラとクリスも同じように、

現実の空間に戻ってきていた。


司書が安堵の表情を浮かべた。


司書「よかった……三時間ほど、経っていました」

虎「そんなに経っていたのか」


体感では、

もっと長い時間が過ぎていたように感じていた。


……………………………………………………………………………………………


クリスがすぐに杖を取り出して、

何かを書き留め始めた。


クリス「……忘れないうちに、石の配置を記録しておく」


虎はその様子を見守った。


虎(あの世界での経験が、現実に繋がるかどうか)


……………………………………………………………………………………………


しばらくして、

クリスが図を描き上げた。


クリス「……このような配置だった」


司書がそれを興味深そうに覗き込んだ。


司書「……これは」


司書の表情が急に変わった。


……………………………………………………………………………………………


司書「……お待ちください、この配置、見覚えがあります」


司書が慌てて棚の奥から、

別の資料を持ち出してきた。


古い時代の記念碑を記録した、

図鑑のような本だった。


司書「これです。……『アショカの柱』と呼ばれる、遺跡の記録です」


……………………………………………………………………………………………


虎「アショカの柱」

司書「はい。石を円形に積んで、中央に細長い柱状の石を立てる。この配置と酷似しています」


クリスがその図を見つめた。


クリス「……間違いない。石の並び方が、私が見た、あの場所と一致する」


虎(ついに繋がったか)


虎(あの記録の世界の、あの場所が、現実の、この遺跡と同じものだったとは)


……………………………………………………………………………………………


司書が本のページをめくった。


司書「アショカの柱は、現在も、いくつか実物が残っているとされています。ただ……正確な所在地は、長らく謎とされてきました」


虎「場所は、わからないのか」

司書「はい。伝承だけが残っていて。実際に見た者は、ほとんどいません」


……………………………………………………………………………………………


クリスが先ほど描いた図を、

もう一度見つめた。


クリス「……いや、待て。あの記録の中で、老人が村の外れから、どのくらい歩いたか、覚えている」

虎「そうか、方角と距離がわかれば」


クリスが慎重に、

古地図に線を引き始めた。


……………………………………………………………………………………………


しばらく計算を続けた後、

クリスが顔を上げた。


クリス「……おそらく、ここだ」


地図上の一点を指差していた。


司書がその場所を確認して、

息を呑んだ。


司書「……ここは、現在の地図では、辺境の未開拓地帯です。長らく、誰も足を踏み入れていない場所かと」


……………………………………………………………………………………………


虎(未開の地、か)


虎(面白そうだ)


虎「次は、そこに行くことになりそうだな」

ステラ「はい。……アショカの柱、実際に見つけられれば、大きな発見です」


館長が感心したように言った。


館長「……見事なものだ。長年の謎が、少しずつ解けていく」


……………………………………………………………………………………………


一連の作業が一段落した頃、

夜も更けていた。


司書が気を利かせて、

軽い夜食を用意してくれた。


湯気の立つ温かい料理が、

テーブルに並んだ。


……………………………………………………………………………………………


虎はそれを一口食べた。


虎「……」


先ほど記録の世界で味わった、

素朴な粥や炙った実とは、

また違う、

現代の丁寧な味付けだった。

出汁の旨みがはっきりと感じられて、

古い時代の簡素な味との違いが、

かえってはっきりとわかった。


虎「……うまい。あちらの世界の味も悪くなかったが、こちらは、こちらで、また違う良さがある」


ステラも一口味わった。


ステラ「……確かに、比べると面白いですね」


クリスが静かに言った。


クリス「……時代が進むほど、味も洗練されていくんだろうな」


……………………………………………………………………………………………


食事をしながら、

虎は今日一日を振り返った。


虎(記録の世界に入り、目撃者を追い、印を見つけた)


虎(そして、それが、アショカの柱と繋がった)


虎(一万年前の、俺の知らないところで、こういう歴史が積み重なっていたんだな)


……………………………………………………………………………………………


司書が改めて頭を下げた。


司書「本当にありがとうございました。長年の謎の一端が、解けそうです」

虎「こちらこそ、助かった」


館長が続けて言った。


館長「未開拓地帯への調査許可も、こちらで手配しておこう。しばらく時間がかかるだろうが」

虎「頼む」


……………………………………………………………………………………………


夜がさらに更けていく中、

三人は図書館を後にした。


外に出ると、

夜空に星が瞬いていた。


虎はその空を見上げた。


虎(あの記録の世界で見た、光る球体)


虎(それが、月から来たものだとしたら)


虎(この星の空を見上げていた、あの時代の人々の気持ちが、少しわかる気がする)


……………………………………………………………………………………………


ステラが虎の隣に並んだ。


ステラ「虎様」

虎「何だ」

ステラ「次は、未開拓地帯ですね」

虎「ああ」

ステラ「……アショカの柱、見つかるでしょうか」

虎「見つける」


クリスが静かに夜空を見上げていた。


クリス「……あの柱の先に、また新しい手がかりがあるといいが」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「アショカの柱、正体がわかりましたね」

虎「未開拓地帯にあるらしい」

ステラ「記録の世界の味も、印象的でした」

虎「あちらは、あちらで、いい味だった」

クリス「……調査許可が下りるまで、少し時間がかかりそうだ」

虎「気長に待つとするか」

ステラ「……おおむね、この街での目的は達成できましたね」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です。次の目的地が決まるまで、少しこの街を楽しみましょうか」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、街を満喫する』」

虎「久しぶりに、のんびりできそうだ」

ステラ「はい。楽しみですね」

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