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虎無双、虎無双。  作者: BB
6章

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70/112

第70話「虎が、記録の中に入る」

夜、

禁書蔵書室の一角に、

特別な結界が、

張られていた。


司書が、

慎重な手つきで、

本を、

台座の上に置いた。


司書「準備が、整いました。これより、記録の中へ、入っていただきます」


……………………………………………………………………………………………


館長らしき、

初老の男が、

立ち会っていた。


館長「古い記録に入るのは、危険が伴う。何かあれば、すぐに、この呪符を、握りしめなさい。強制的に、外に引き戻される」


虎は、

渡された呪符を、

懐に、

しまった。


虎「わかった」


ステラとクリスも、

それぞれ、

呪符を、

受け取った。


……………………………………………………………………………………………


館長「では、始める」


館長が、

本に、

手をかざした。


紋様が、

光り始めた。


光は、

次第に、

強くなっていき、

台座を囲むように、

渦を巻いた。


ステラ「……来ますね」

虎「ああ」


三人の体が、

その光に、

包まれた。


……………………………………………………………………………………………


気がつくと、

虎は、

草原に立っていた。


夜だった。


だが、

昼のように、

明るかった。


空の一角に、

巨大な、

光る球体が、

浮かんでいた。


……これが


虎(記録に書かれていた、光る球体か)


……………………………………………………………………………………………


近くに、

ステラとクリスの姿が、

見えた。


ステラ「虎様、無事ですか」

虎「ああ、そっちは」

クリス「……問題ない」


三人の周りには、

古い時代の、

村の風景が、

広がっていた。


木造の小屋が、

点々と並び、

畑には、

見慣れない作物が、

育っていた。


……………………………………………………………………………………………


村人らしき人々が、

恐怖に慄きながら、

空の光を、

見上げていた。


村人A「な、なんだ、あれは……!」

村人B「神様の、お怒りか……!」


虎(音は聞こえるが、俺たちの姿は、見えていないようだな)


虎(あくまで、記録を、追体験しているだけか)


クリスが、

静かに言った。


クリス「……幻影のようなものだ。私たちは、この世界の、傍観者に過ぎない」


……………………………………………………………………………………………


光る球体が、

ゆっくりと、

降下してきた。


地面が、

かすかに、

揺れ始めた。


村人たちが、

一斉に、

逃げ惑った。


村人C「逃げろ! あれが、落ちてくるぞ!」


虎は、

その光景を、

じっと、

見つめていた。


虎(月から来た、何かが、降りてくる瞬間)


虎(クリスの記憶にも、繋がる場面だ)


……………………………………………………………………………………………


だが、

光が、

地面に触れる、

その瞬間。


視界が、

真っ白に、

染まった。


しばらくして、

気がつくと、

場面が、

変わっていた。


昼の、

穏やかな村の風景だった。


……………………………………………………………………………………………


ステラが、

辺りを見回した。


ステラ「……時間が、飛びましたね」

虎「そうだな」


村人たちが、

畑仕事をしながら、

何やら、

話していた。


村人D「あの夜のこと、まだ、信じられねえよな」

村人E「ああ。でも、あれから、しばらく経つが、何も、悪いことは、起きてねえ」


虎(あの夜から、時間が経った後の場面のようだ)


……………………………………………………………………………………………


少し離れた場所に、

一人の老人が、

座って、

何かを、

書き記していた。


虎は、

そっと、

近づいた。


虎(この老人が、記録を、書いた本人か)


老人の手元には、

羊皮紙と、

筆があった。


老人がつぶやいた。


老人「……あの夜のことは、忘れちゃならん。誰かが、記録を、残しておかねば」


……………………………………………………………………………………………


クリスが、

老人の様子を、

じっと、

観察していた。


クリス「……この人物が、記録の、原本を書いた人間だ」

虎「そうらしいな」


村の広場で、

夕方の支度が、

始まっていた。


大きな鍋を、

何人かの女性が、

囲んでいる。


ステラ「……何か、料理を、しているようですね」


……………………………………………………………………………………………


虎たちは、

その場に、

近づいてみた。


村の女性が、

鍋から、

湯気の立つ、

何かを、

よそっていた。


村人たちが、

それを、

食べながら、

談笑していた。


虎(幻影とはいえ、この世界にも、食べ物があるのか)


虎は、

記録の本の話を、

思い出した。


……………………………………………………………………………………………


虎(そういえば、司書が、こういう記録の本からも、味を、持ち帰れるかもしれないと、言っていたな)


虎は、

試しに、

鍋の近くに、

手を伸ばしてみた。


不思議なことに、

指先が、

その料理に、

触れる感触があった。


虎は、

少しだけ、

それを、

すくい取ってみた。


……………………………………………………………………………………………


とろりとした、

穀物の粥のようなものだった。


虎は、

一口、

含んだ。


虎「……」


素朴な、

麦の甘みが、

広がった。

村の暮らしそのものを、

表すような、

質素だが、

温かい味だった。

古い時代の、

生活の匂いが、

そのまま、

口の中に、

残っているようだった。


虎「……うまい。この時代の、飾らない味だ」


ステラも、

同じように、

少しだけ、

味わってみた。


ステラ「……本当に、味がありますね。不思議です」


クリスが、

興味深そうに言った。


クリス「……これも、持ち帰れば、街の名物に、なるかもしれないな」

虎「そうだな」


……………………………………………………………………………………………


だが、

その時。


急に、

視界が、

揺らぎ始めた。


老人の姿が、

遠ざかっていく。


ステラ「……虎様、これは」

虎「何かが、変わってきている」


クリスが、

辺りを、

見回した。


クリス「……場面が、切り替わろうとしているのかもしれない」


……………………………………………………………………………………………


虎(次の場面に、繋がる兆しか)


虎(それとも、俺たちが、はぐれる前触れか)


視界が、

さらに、

激しく、

揺れ動いた。


ステラの姿が、

一瞬、

遠くに、

離れて見えた。


ステラ「虎様……!」

虎「ステラ!」


光が、

三人の間を、

引き裂くように、

差し込んだ。


……………………………………………………………………………………………


……はぐれたか


虎(落ち着け。焦る必要はない。ここは、ただの記録の世界だ)


気がつくと、

虎は、

一人、

見知らぬ、

道の途中に、

立っていた。


遠くに、

村の灯りが、

見えていた。


虎は、

その方向を、

見つめた。


虎「……探すか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラ「次回予告です」

虎「ああ」

ステラ「記録の中、不思議な世界でしたね」

虎「あの夜の光景も、見られた」

ステラ「村の食べ物も、味わえました」

虎「素朴な味だった」

クリス「……はぐれてしまったな」

虎「合流を、探さないといけない」

ステラ「……おおむね、無事に、集まれるといいのですが」

虎「おおむね、か」

ステラ「おおむね、です」

虎「次の予告をしてくれ」

ステラ「次回、『虎が、目撃者の跡を追う』」

虎「あの老人を、追うことになりそうだ」

ステラ「はい。楽しみですね」

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